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販促記事 : 正木宏長=板垣勝彦=横田明美=海道俊明『入門行政法』(有斐閣、2023年)ってどんな本?


               正木宏長
              2023/11/02(初出、小修正は随時)



 このところ忙しかったり、年齢のせいか疲れ気味でアメリカ環境法の文献紹介のフォローもし損ねていてところですが、少しだけ話題になっているようなので、販売が迫った『入門行政法』に関する今のところの感想を箇条書きで書き出して、宣伝してみることにしました。2年超の行程を経て発売が迫っているので、私も興奮気味なのはご容赦ください。



◎PRポイント


・わかりやすい記述
・四六版290ページで行政法の全範囲をカバー
・板垣先生と横田先生を二大看板に据えて最新の理論も示す
・窓見出しを多用にした読みやすい構成
・読みやすい美しい組版
・これぞ有斐閣の行政法の教科書と思わせる全てが高い次元でまとまった入門書
・2単位や4単位の行政法の授業のテキストにおすすめ



◎書いてみての感想(販促)


・いいものが書けたという確信はあります。出来を聞かれると、迷わず「いいですよ」って答えています。共著ものなのですが、著者の組み合わせが偶然的に良い方向に作用して、全てが高い次元でまとまった入門書ができてしまったという印象があります。企画した私の当初の想定をはるかに上回る完成度となりました。

・基本的に、最初に有斐閣から正木に話が来たのがきっかけで、正木がプロデューサーという感じでグループを運営しています。要するに共著者の人選の多くの部分を含めて(これは私の意向だけで決まるわけではないのですが)編者みたいな仕事はだいたい私がしていて、本のスタイルは正木の影響が強いです。共著者には忙しい人が多いから出版に伴う雑用みたいなものは私がやるというので良かったのじゃないかな。でも、本の名前を考えたのは横田先生。

・「わかりやすさ」を重視した行政法の新しい入門テキスト、というあおりは有斐閣が作成した紹介で、実際、全員脱稿した際の編集会議の時には、編集からわかりやすいと言われました。

・校正ゲラに精興社の印が押されて送られてきます。全体的に読みやすい紙面構成になっていますよ。

・プロデューサーの狙いははしがきに書いたとおり(意味深長)。

・とても字数制限が厳しかったのですが、テキストに徹することで、四六版300ページ弱で行政法の全範囲は一通り抑えています。

・各著者の個性を出すが執筆方針だったので、 板垣先生や横田先生のテキストを求める人にも満足できるかと思います。両先生を中心として最新の研究を成果を反映したテキストをというのが個人的な狙いであったのですが、十二分に達成できたと思っています。
 各著者の個性は出ているわりに本全体では、共著のバラバラさみたいなものはあまり感じないし、一通りの行政法の講学範囲は抑えています。でも、とても厳しい字数制限が課されていたので舌足らずな箇所があることはご勘弁ください。

・こう書くと理論書みたいですが、本全体でみると、確かにわかりやすい入門書です。著者の個性が偶然的に良いほうにかみ合って、このようなものが完成してしまったという感があります。一言で言えば、有斐閣の案内にあるように、「行政法の新しい入門テキスト」。

・自分が関わったものなので甘くなっているのかもしれませんが、すごく出来がいいです。
 どれくらいいかというと、アイテムの合成で10%の確率で大成功があるゲームで大成功を引き当てたとか、10連ガチャ1回でいきなり確定演出が出て3%のSSRを引いたという感じがしています。「共著ものはなぁ」と言う感覚は私にもあったのですが、完成して現物を見て気が変わりました。

・『入門行政法』の良さを語るエピソード1 :全部できた原稿を見たとき正木は編集会議で思わず共著者に向かって「君たちやはりすごく優秀だね」。「何十年ぶりかに有斐閣の行政法の教科書を読んだ気がした」と発言した。

・執筆方針としてはアルマみたいにと言うのがあって、初期の編集会議で範として挙がったのは、山下淳ほか『行政法』(有斐閣アルマ)でした。旧アルマと呼んでいました。できあがったのは、どうだろう?旧アルマの雰囲気もありますが、どちらかというと今村成和『行政法入門』(有斐閣双書)、成田頼明ほか『現代行政法』(有斐閣双書)の雰囲気があると思います。それで何十年ぶりかに有斐閣の教科書を見た気がしたのではないか。あまり今村入門は意識していなかったのですが。ちなみに文の表現はこれらの本よりやわらかいです。

・『入門行政法』の良さを語るエピソード2 : 有斐閣の近くの和食屋での完成祝い?の食事会の席で酔った正木は、「こういう本は東大出身者を集めないと書けないのではないか...」と発言した

・最終的に少し調整をしたので東大系風にしたというのはあるのですが、不思議と体系性があって、おおまかに塩野教科書から、櫻井=橋本、大橋、宇賀(これは体系は小早川先生の影響が強いけど)、さらに興津も加わるかな、というような分岐で体系が進化しているなら、この本はまた別の進化の分岐を示しているという感じでしょうか。これらの本に行く前に、あるいは読んだ後のまとめ本にいいと思います。

・当初の指示は形式に関するもので、内容については編集会議でそれなりに調整はしたのですが、そんなにみっちり編集会議を開いたわけではないので、なぜこれほどまとまっているのかプロデューサーにもよくわかりません。板垣先生と横田先生が東大出身でバックボーンが同じだとか、4人中3人は法科大学院出身だとかで、各著者の原稿を書くときの完成品のイメージや行政法の教科書で求められる知識等の行政法観が高い次元で一致しているからじゃないかと考えています。

・私自身、授業準備の時に「板垣先生や横田先生や海道先生はここどういう風に書いていたっけ」という具合で参照することがあって、他の共著者の執筆部分は一読者として楽しんで読んでいます。ほぼ完成しているのでゲラを読者視点で読んでいるのですが、私が一読者として読んで残る感想が、「字数制限があったのだろうが、この著者達については、入門書よりももっと分量が多めの本格的なものも見てみたい」なので、本当にいいですよ。

・私が、仮に他社から同種の入門書の執筆依頼を受けている時に『入門行政法』が発売されたら衝撃を受けただろうと思うし、仮に他社から「『入門行政法』を超えるものを作ってください」と言われても、「簡単にはいかないです」と答えると思います。企画担当の私の今の感想は、「なぜかわからないが、すごくいいものができた」なので、再現性が保証できないのですよね。



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