He70ブリッツ 高速郵便機
プロフィール機

ドイツ 無塗装


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実機について
1930年代に未来のイメージを象徴した美しい銀翼

黎明期の空に走る「稲妻」
1930年代、航空界は「より速く、より遠くへ」という過酷な挑戦のなかで、 複葉機から単葉機へと進化する大きな過渡期にありました。 当時のエンジンはまだ非力であり、運べるのは少量の郵便物や限られた旅客のみ。 だからこそ、黎明期の空では速達性を追求した「高速郵便機」という種類の航空機が最先端を走っていました。
この時代に誕生したドイツの高速郵便機 He70ブリッツ(稲妻)は、1932年に初飛行しました。 本機は「空力を極限まで磨くことで速度を得る」という、 その後の高速機開発の方向性を決定づけた歴史的な傑作機です。 当時の戦闘機すら上回る素晴らしい高速性能を示し、いくつもの世界速度記録を塗り替えていきました。

空気抵抗を削ぎ落とす最新技術
He70ブリッツがもたらした高速化のカギは、空気抵抗を徹底的に減らすことにありました。 そのために、当時の最先端技術が惜しみなく導入されています。

楕円翼と逆ガル翼:誘導抵抗(翼端渦)を減らすために、美しい「楕円翼」を採用。 さらに主翼の付け根を下方に曲げた「逆ガル翼」にすることで、 胴体との間で発生する干渉抵抗も抑えました。

片持ち式の主桁:主翼の主桁を頑丈な金属製にし、内部で強度を持たせる「片持ち式」としました。 これにより、従来の機体にあった外部の支柱や張線をすべて取り払うことができました。

平滑な機体表面と引込み脚:金属製の胴体や機体表面には「沈頭鋲(皿リベット)」を用い、 凹凸のない滑らかな表面へと仕上げました。 さらに、主脚を油圧による「引込み式」としたことで、飛行時の空気抵抗を劇的に減らしました。

本機が提示した「全金属製、低翼単葉、引込み脚」という方向性は、近代航空機のお手本として、 世界各国の航空機開発に決定的な影響を与えることになります。

世界へ広がった影響の連鎖
He70ブリッツが蒔いた技術の種は、瞬く間に世界中へと広がり、数々の名機として実を結びました。 自国ドイツでは、本機を双発化・大型化したHe111爆撃機が生まれ、 後にドイツ空軍の主力爆撃機となりました。
また、本機を輸入して研究を重ねた日本海軍は九九艦爆、 イギリス空軍はスピットファイア戦闘機の開発において、 その洗練された楕円翼や流線型の空力設計を参考にしたといわれています。
さらに、アメリカ陸軍のP-35戦闘機とその後のP-47サンダーボルト戦闘機、 日本海軍の九試単戦(のちの九六艦戦)から零戦に至る艦上戦闘機の系譜、 日本陸軍の九七式司偵(神風号)なども、その源流をたどれば本機の影響を受けています。
本機の「油圧式引込み脚」は、当時の他国にとっては容易に真似できない先進技術でした。 しかし、世界初の低翼単葉で引込み脚の戦闘機として知られるソ連のI-16戦闘機は、 手動式ながらも本機によく似た構造の引込み脚を1933年に早くも実現させています。
特に日本海軍は、本機を開発したハインケル社に強い関心を示しました。 空力設計、全金属構造、高度な金属加工技術などを1930年代を通じて導入し続け、 その後の航空機開発を支える礎としたのです。

「ストリームライン・モダニズム」と銀翼の美学
デザイン史や文化史の観点からこの時代を振り返ると、 アール・デコから発展した「ストリームライン・モダニズム(流線型モダン)」が 全盛を迎えていたことがわかります。
世界恐慌後の暗く沈んだ社会において、大量生産・大量消費社会の到来を背景に、 人々に「スピード」「進歩」「明るい未来」を予感させる流線型デザインが大流行しました。 その波は自動車や鉄道、家電、建築などにあまねく及び、航空機はその流行の最先端に位置する、 いわば「未来の象徴」そのものでした。
美しく磨き上げられた無塗装銀色の金属製高速機は、人々の憧れを一身に集め、 「銀翼」という詩的な表現で讃えられました。 そのなかでもHe70ブリッツは、楕円翼、完璧な流線型の機体、 そして無塗装銀色の金属光沢といった機能美が高次元で融合しており、 「世界で最も美しい航空機のひとつ」と称されるほど際立つ輝きを放っていたのです。

「銀色の未来」が遺したもの
この圧倒的な美しさと先進性は、政治やプロパガンダの舞台でも利用されました。 発足間もないナチス政権は、本機を「ドイツの優れた技術力の象徴」として 大々的に宣伝に活用したのです。
一方で、戦前のアメリカ軍機もまた、無塗装銀色の機体によって 自国の先進性を世界にアピールしていました。 第二次世界大戦の開戦後は戦況に応じて迷彩塗装が主流となりますが、 大戦後半になると、B-29スーパーフォートレスに代表されるように 無塗装銀色の機体が再び前線に登場します。 それはもはや先進性のアピールにとどまらず、 巨大な工業力そのものを誇示する存在になっていました。
今日の視点から眺めると、この1930年代に始まった「銀色の未来」への憧れは、 戦後のジェット旅客機や、米ソ宇宙開発競争における宇宙船のデザインへと 脈々と受け継がれていったことがわかります。 それはちょうど、かつての重厚長大産業が大衆に豊かさのイメージを与えた時代とも重なっています。
He70ブリッツが遺した影響の連鎖は、単なる航空工学の分野にとどまりませんでした。 それは工業デザイン、国家の宣伝戦略、マスメディア、 さらには人類が思い描いた「未来のイメージ」にまで及び、 1930年代という時代そのものを象徴する、歴史的な傑作機だったと言えるでしょう。


設計
このプロフィール機は先に手がけた九九艦爆をベースに、楕円翼など各部をHe70ブリッツ本来の形に合わせて作り直しました。
まず、正面から見て緩やかな「W」字を描く逆ガル翼は、内翼を「へ」の字に折り曲げて下反角を与え、 さらに外翼に上反角をつけることで、その特徴的なシルエットを表現しています。
He70と九九艦爆は全体的な外形がよく似ていますが、 He70の主翼は前後方向の幅がより広く、水平尾翼は細長い形をしています。
丸みを帯びた楕円翼は、細長いテーパー翼と比べて翼面積を広くとれるので、 翼面荷重が低く抑えるメリットがあります。そのため失速しにくい穏やかな飛行特性により、 紙飛行機としても優れた滞空性能を発揮します。
また、He70の三脚状の主脚は、細い支柱を何本も組み合わせる複葉機時代の名残を色濃く残したもので、 1930年代前半の初期の引込み脚に見られる特徴的な構造です。 その後、主脚は一本の太い支柱に集約され、1930年代中盤の固定脚と引込み脚が混在する過渡期を経て、 後半には引込み脚が世界の主流となりました。 このプロフィール機でも、その構造を簡略化して表現しています。ぜひ形にしてお楽しみください。

ドイツ 無塗装
He70Blitz_PDF_img
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作り方
零戦21型とほぼ同じです。詳細は零戦21型の「作り方」をご参照ください。 相違点のみ記します。

    (機体)
  1. 主翼
    内翼と左右外翼にそれぞれキャンバーをつける。
    点線に沿って内翼に下反角を、左右外翼に上反角をつける。 その際、主翼前縁と後縁を同じ角度に調整する。
  2. 胴体内側 主軸
  3. 機首内側 主軸補強
  4. 胴体内側 主翼取付け部
  5. 胴体左側面
  6. 胴体右側面
  7. 機首外側 主軸補強
  8. 機首おもり
  9. 水平尾翼
  10. 垂直尾翼
  11. 主翼上面/下面 補強
    点線に沿って上反角をつけ、内翼と左右外翼のすき間をつなぐように、上面/下面から貼り付ける。
    うち一つは、内翼下面の補強用であるため、点線に沿って下反角をつけ、 内翼中央のすき間をつなぐように、下面から貼り付ける。
    上反角や下反角は、主翼前縁と後縁を同じ角度に調整する。
  12. 機首おもり先端

  13. (ディスプレイスタンド)

    He70_landing_gear
    He70_landing_gear2

  14. 胴体下部
  15. 左右主脚 前側
  16. 左右タイヤ 内側/外側
  17. 左主脚 後ろ側/主脚カバー
  18. 右主脚 後ろ側/主脚カバー
    まず、後ろ側の支柱2本を点線に沿って印刷面が内側になるように折り、貼り合わせる。 さらに、主脚カバーと重なる支柱1本を、点線をガイドに貼り合わせる。
    次に、主脚カバー下部を点線に沿って印刷面が外側になるように直角に折る。
    その状態で、主脚カバーを(14)左右主脚 前側に内側から、印刷面の点線をガイドに貼り付ける。
    最後に(14)左右主脚 前側を内翼の下反角の角度に合わせて整え、 三脚状の支柱の残り1本を主脚カバーに貼り合わせて固定する。
  19. 胴体下部 支柱
    (13)胴体下部とののりしろを折る。
    点線で二つ折りにして貼り合わせる。
    (13)胴体下部に貼り付ける。

  20. (ディテールアップ)
  21. エンジン排気管 左
  22. エンジン排気管 右
    点線で折り、半円筒状に貼り合わせる。
    (5)(6)胴体左右側面の排気管の印刷に合わせて貼り付ける。
  23. 胴体 空気取入口
飛ばし方
零戦21型と同じです。詳細は零戦21型の「飛ばし方」をご参照ください。

このプロフィール機についての補足説明:

プロフィール機データ

He70_weight

重量計測には、吉田英一さんの「切り抜く科学工作シリーズ」より「 精密天秤 やじろべえ01(ゼロワン) 」を使わせて頂きました。

(完成 2026年6月5日)

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Hideyuki Kikuchi (gotha@ops.dti.ne.jp)