平和問題ゼミナール |
講演記録 |
高良鉄美先生(琉球大学法文学部教授)の紹介
朝日新聞(1996年3月22日付)「ひと」より
授業のときをはじめ、教授会の席や学外の集まり、教え子の結婚式などでも、帽子姿を通している。もう、1年。
それまでも、時に帽子をかぶっていた。「ある日、政治実習のつもりで、学生と県議会の傍聴にでかけたら、着帽を理由に入場を拒否された。聞くと、外とう、襟巻きも議長の許可がいるという」
国会でも、本会議場での女性議員の帽子姿が、規則違反でとがめられたことがある。
「旧憲法時代に議会に敬意を表すとしたことの名残。地方議会も依然、傍聴人まで規則で縛っているわけです。今は私たちが主権者。どんな議論で税金が使われるのかを知る権利がある。議場で騒いだりするのならともかく、着衣で傍聴を制限するとは」
そのおかしさを訴えたい、と始めた「帽子姿」である。
昨秋の米兵暴行事件後は、国を相手に基地問題で異議申し立てをしている大田昌秀沖縄県知事の知恵袋の一人として、各地の集会で、広大な米軍基地の存在から生じる人権侵害を告発し続けている。
実情を本土に知ってもらおうと、沖縄県が2月に東京、大阪、名古屋など全国八市で開き、大盛況だった「沖縄からのメッセージ」の最後の福岡会場で講師を務めた。
「地位協定の取り決めのいきさつも、日米合同委員会の協議内容も知らされてこなかった。知る権利が無視されてきた結果が、現在の沖縄の苦しみを生んだのです」
この日の帽子は、高校生の娘さんから「お父さんがんばって」と贈られたりしたベレー、ハンチングなど二十数個にもなった中から選んだ。
「失礼なやつと思われたでしょう」と、講演で「わけ」を語った。「難しい憲法論があの帽子でよくわかった」と女性の聴衆が話す。この日の姿はいつにもまして、パシッと決まっていたのである。
文:稲垣 忠
(C)1997,Kimura Peace Seminar (Katsuyoshi Kawano) |