オフ会レポート

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2004年新年会&『二百年の子供』読書会

日時:2004年1月31日(土)

 第一部:夕方まで東京都現代美術館「二百年の子供 挿画展」鑑賞(自由行動)

 第二部:午後6時から喜山飯店(新橋)にて新年会兼読書会

参加者:白石、加藤、ちゃまん、yoshimi、HAL、つる、いとう

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 大江さんの69歳の誕生日であるこの日、第一部の「二百年の子供 挿絵展」に行くべく半蔵門線に乗り、清澄白河駅で下車。かわいい子供たちが描かれた壁画に遭遇。

清澄白河駅構内の壁画

 

 駅を出るとすぐ、電柱に美術館の方向を示す標識があった。「舟越 桂 200年の子供 挿絵展」の文字も見える。これがこの先、ところどころに貼ってあり、導いてくれた。

 

この標識が美術館まで案内

 

 大田区を思い出させる下町風の通りを抜けると、茫洋とした景色の大きい通りに出て、ほどなくして美術館に到着。駅から10分くらい。

東京都現代美術館

 

 館内は閑散としていた。チケット売り場の近くに、大江さんと舟越さんのスチール写真を貼ったボードが立ててあった。今日は両氏の対談が行われることになっているからか。私が到着した時間にはもう終わっていたようだった。

舟越氏と大江氏が写っているスチール(チケット売り場のそばに置いてあった)

 

  舟越作品は常設展エリアに入ってすぐのところに展示してあった。区切られた一室の四周の壁すべてに舟越氏の絵がかけられ(ほぼストーリーの順番)、部屋の中央には大江さんの手書き原稿が展示してあった。

 舟越氏の絵はすばらしく、入ってすぐ目を奪われた。印刷された『二百年の子供』のページ上で見るのとずいぶん違う。とりわけ、カラー作品の色の美しいこと。本の表紙もカラー印刷ではあるが、オリジナルの色はもっと鮮明なものだった。本の11ページにある真木とベーコンが向き合っている絵(題名は「真木とベーコン」という)も、オリジナルは背景全体が緑色になっており、たいへん美しいものだった。

 本の紙面では気付かなかった細部も目に入ってくる。たとえば、ラストシーンで出てくる家族写真。右上にベーコンが走っているのだが、本では気づかなかった。

 いくつかの作品については舟越氏のコメントも掲示されていた。氏が登場人物のイメージを作り上げていくのに相当苦労したということがそこから伝わってくる。

 大江さんの生原稿のほうは、直したあとがほとんど各行にあった。エラボレーションの履歴。

 館内で、つるさん、加藤さん、白石さん、ちゃまんさんに会う。残りの二人は第二部の喜山飯店で落ち合う予定。

 私たちが玄関を出るとき、ちょうど大江さんも帰るところだったようで、美術館のスタッフが並んで大江さんを送り出していた。

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 第二部の会場は、新橋駅近くのチャイニーズレストラン喜山飯店。ぐるなびだかで探した店で、実際に行くのは今日がはじめて。落ち着けないところだったりしたらどうしようかとちょっと心配だったのだが、杞憂だった。雰囲気よし、味よしで、気持ちのよいひとときがすごせた。おいしいものを十分に食べ、ビールや紹興酒なども飲み、料金は一人5000円いかなかったので、リーズナブルではなかろうか。

 話のほうは、舟越氏の作品の感想から始まった。オリジナルを見ることで、より多くのものが伝わってくるという感想を述べられる方が多かった。それぞれ、本を読んだときには気付かなかった発見があり、それを教えあったりもした。

 その後、小説のほうの話になり、いろいろな話が出たのだが、酔いのせいもありあまり覚えていない…。いくつか断片的に覚えている話題のみ列挙しておきます。

・この子供を対象とした作品だが、大江さんのイメージする子供像はレベルが高いから、本当の子供よりは青年に近い年齢の人たちぐらいのほうがちゃんと受け止められるのではないか。

・子供に読ませてみたら、好きな言葉を言う場面などは面白く感じていたようだが、大人が説教くさいことを言うシーンはつまらないようだった。

・誰のセリフなのかが、慣れないとわかりにくいかもしれない。

・現実の世の中の問題と関係するようなエピソードがたくさん盛り込まれており、大江さんのメッセージがそこに込められている。

・『芽むしり仔撃ち』の世界とリンクする部分が印象的だった。

・暗い未来世界のエピソードにショックを受けたが、そういう世界にならないように今を変えていかなければならないということを大江さんは言いたかったのだろう。

 

喜山飯店にて(おいしい揚州料理と文学談義に満足して)

 

 喜山飯店ののち、駅そばの居酒屋の看板に誘われるように私たちは吸い込まれ、読書会というよりは新年会のほうの続きを行った。そのなかで、評論家の黒古氏に話を聞く集まりを開こうという企画が持ち上がりもした。これについては実現に向けて努力していこうと思っています。(2004/2/1記す)


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