C F N Newsletter ●■■■■■●■■■■■● 未来人集まれ!! ●■■■■■●■■■■■● ■■ Vol.1-10 ■■  8月号  ------ Future Index ---------------------[世界未来学会特集号]------  ●世界未来学会に参加して (和田 雄志)  ●WFS雑感         (ウダ レイ)  ●WFS追想記        (鏑木孝昭・久保 陽)  ●僕らはアニメで未来を学んだ(4)首都の2001年(その2)                          (上野 彰)  ●Future Gadgets (3) ●C F N News Network  ●C F N 会員募集 ●編集夜話  ------------------------------------------- ■■■---------------------------------------------■■■ 世界未来学会に参加して 和田 雄志 ■■■---------------------------------------------■■■ ホームページ連動企画 ◆新世紀へのカウントダウン  世界未来学会(World Future Society ,略称WFS)の第9回大会が、7月  29日から8月1日にかけて米国のワシントンD.C.で開催され、CNF  メンバーも4人が参加し発表してきました。連日の猛暑が続く中、会場とな  ったヒルトン・ワシントン&タワーズには世界40カ国から1200人が参  加。前年のシカゴ大会の1000人を大きく上まわりました。WFSは19  66年に設立された世界最大規模のフューチャリストの組織で、会員数は世  界80カ国で3万人といわれています。   ▼エピソードI(その1)       ▼WFS      新世紀へのカウントダウンを目前にして、今大会のテーマは「21世紀のフ  ロンティア」。発表されたテーマは150以上。分野は、未来予測、情報技  術、バイオテクノロジー、教育、国際関係、企業戦略、高齢社会、宗教・倫  理、女性、家族、Y2K対応…と多岐にわたりますが、なかでも「ミレニア  ム(千年紀)」あるいは「次の1000年」といったタイトルが目立ちまし  た。  初日の基調講演では、講演者のうちの一人がアスキー創設者の西和彦さんで  した。テーマは「インターネットとクオリティ・オブ・ライフ」。20世紀  の二大発明はジェットエンジンとインターネットだということで、インター  ネットを活用した新しいライフスタイルを提案し、聴衆からは好意をもって  うけいれられたようです。   ▼エピソードI(その2)     ◆日本の未来人たち  名前は世界未来学会ですが、実際に参加メンバーの顔ぶれを見ると、9割が  たがアメリカ人という状況です。昨年のシカゴ大会では日本人の参加者はウ  ダさんひとりだけでしたが、それでも今年は10人ほど日本人を見かけまし  た。日本人による唯一の一般セッションとして、30日金曜日の夕方、我々  CFNメンバーが、日本の未来人たちの活動について発表を行いました。題  目は、 "Japanese Futurists Perspectives"。  発表者は、鏑木孝昭、ウダレイ、和田雄志、久保陽の4人。持ち時間は1時  間30分。20近く用意されたセッション会場の中で、我々の発表に割り当  てられたEdison Roomは、定員が30人ほどの小さい部屋でした。はるばる  日本から4人も来たのに、という失望感もありましたが、大きな部屋でがら  んとしているよりは、小さいながらも活気にあふれた会場にしようというこ  とで、ささやかなPR作戦が始まりました。当初から、アメリカでのプレゼ  ンテーションはインパクトのある形で日本文化の一端を紹介したいという思  いがありました。大島在住の志賀さんが参加していればお茶をたててもらい  たかったのですが、今回は謡曲を趣味としている和田がメンバーだったので、  それじゃいっそ和服姿で謡曲のパフォーマンスをしようということで、自分  が勝手に盛り上がって決めてしまいました(新橋のアイリッシュ・パブでの  話)。   ▼エピソードI(その3)      予定では、発表の冒頭に謡を謡って、ガーンと一発いきましょうということ  でしたが、いっそ和服姿で「客引き」をしたらとウダさんが提案(ウダさん  は浴衣を用意してくるんじゃなかったっけ?)。そこで和田は急遽、はかま  にゆかた、そして扇子という出で立ちに着替え、多少の躊躇はありましたが、  毒食らわば皿まで、「ええい、ままよ」で、WFS会場に繰り出したのでし  た。発表前日にいった中華レストランで私のフォーチュンクッキーには  "Relax, Enjoy Yourself"とあったので、お告げの通りに行動しようと覚悟  を決めたわけです。人々の好奇な視線を感じながらも、和製サンドイッチマ  ン的な感覚で、セッション案内の張り紙などをしました。 ◆ビジュアル・プレゼンテーション  そしていよいよ時間です。狭い会場でしたが、それでも30人近くの人が集  まってくれました。今村さんもふくめ日本人聴衆も4、5人みかけました。  皆さんかなりリラックスした感じで席についています。オープニングは、和  田が、まずは日本の文化を会場のみんなと共有しましょうということで、謡  曲「高砂」のさわりを披露。会場が狭いためもあって声がよく響きました。  あとで鏑木さんから「あの時は、隣の部屋からうるさいというクレームがき  てたんですよ」といわれても、あとの祭でした。そして、パート1、ウダさ  んがいよいよ本題に入ります。CFNが発足にするにいたった経緯を紹介し、  メンバーは科学者、心理学者、教師からオルガニスト、農民、庭師、写真家、  など実に多彩なプロフィールをもっていますとにこやかにPR。   ▼エピソードI(その4)      パート2は、CFN形成の文化的背景を説明。ここが実はいちばん苦労した  部分でした。発表前日の夜まで、ホテルの部屋に集まったものの、論理展開  をどうするかでお互いの見解が食い違い、なかなか結論がでないまま、時間  切れ。あとは見切り発車でした。まず、久保さんが、日本人の宗教および精  神構造を説明。これは自家薬篭中のテーマです。神道、仏教、キリスト教な  どの信者数を単純に加算すると日本の人口の2倍になります、というところ  で会場からは笑い(やった!)。日本の八百万の神々に代表される多神教的  世界と、ユダヤ・キリスト教の一神教の世界の価値観・人間関係を自然風土  の違いなどを比較して紹介。   ▼エピソードI(その5)      和田がこれをうけて、日本におけるコミュニティ形成過程や人間関係につい  て、「人間」という言葉の意味、伝統的な相互扶助システムとしての「結」  (ゆい)などをまじえながら紹介しました。また、CFNは、独立した未来  人たちが相互に活性化する「培養基」としての役割を果そうとしていると説  明。石塚さんが作成してくれたカラープレゼンテーションの美しい映像が参  加者に強いインパクトを与えたようです。今回のWFS大会での「ビジュア  ル大賞」ものと思います(これで英語力で劣る部分を多少カバーできたかも)。  培養基がないと細胞が消滅するという簡易アニメデモには会場からオーとい  う声がありました。  そしてパート3では、鏑木さんがCFN活動の概況を紹介しました。未来が  象のようなものだとして、我々は一頭の巨大な象を捉えようとしているので  はなく、大きさも形も色も異なるたくさんの象(未来)を描こうとしている  としていること、そして2001年の「未来人ノート」作成に向けて、世界  中の未来人たちとの連携を呼びかけました。   ▼エピソードI(その6)     ◆世界に広がれCFNの輪  残り30分は質疑応答の時間です。日本には他にも似たようなグループがあ  るのか、インターネットに参加していないメンバーはどうコミットするのか、  21世紀の高齢化社会にたいしてどう対処しようとしているのか、シンポジ  ウムやセミナーをやればもっと活発化する、などいろんな質問や意見が矢継  ぎ早に出ました。ともかく参加してくれた人達はこのひとときをエンジョイ  した様子でなによりでした。   ▼エピソードI(その7)      もっとも、反省すべき点もいくつかありました。  その1、プレゼンテーション内容について前夜までディスカッションしてい  たような状況なので、ストーリーの一貫性、説得性に欠けていました。「と  ても素晴らしいコラージュ(寄せ集め)だったよ」といってくれた方がいた  ようですが、全体の統一性はともかく、オーディオ・ビジュアル面での評価  は高かったようです(石塚さんに再度、感謝)。  その2、何といっても英語力が弱かった。ネイティブに比べるまでもなく、  やはりもう少しスキルアップが望まれます(これはアメリカ在住の今村さん  からハッキリ指摘されました)。  とまあいくつか課題はのこったものの、発足1年たらずのCFNが、世界の  未来人が集まる場で発表の場をもてたことは、おおいに評価しましょう、今  後のさらなる人的広がりを期待して。   ▼エピソードI(その8)     ◆世界の未来研究の今  今回、初めてWFSに参加して、世界の未来研究の一端にじかにふれること  ができたわけですが、そのとき感じた印象あるいはコメントを述べたいと思  います。  ●1●   WFSが設立された1960年代は、第一次未来学ブームの頃で、ハーマ   ン・カーン、ガルブレイス、アルビン・トフラー、ダニエル・ベルといっ   た未来学の巨星達の時代でしたが、四半世紀以上をへた現在は、世界各国   で個別に展開されている未来研究を連携させようという動きが出ています。   具体的には、国連大学米国評議会が世界10カ国で展開している未来シナ   リオ作成のための「ミレニアム・プロジェクト」、オーストラリアのスロ   ーター教授などが推進している世界中の未来研究組織(IOFs;   Institutions of  Foresight)の連携呼びかけなどがあります。   ◆WFS で出会った人々    ▼University of Science and Philosophy)         ▼The Creative Education Foundation, Inc.         ▼Millennium Project         ▼United Religions Intiative, 72 Hours network         ▼University of Houston, Futures Study         ▼Blue prints for Communication, Inc.         ▼Global Futures, Peace, & Synergy         ▼(財)未来工学研究所       ●2●   技術革新、なかでもインターネットやコンピュータを活用した新しい社会   システム構築あるいはその諸影響についての報告がいくつかありましたが、   会場でのプレゼンテーションツールとしてはOHPがせいぜいで、WFS   の古い体質が現れているようです。  ●3●   宗教や倫理といった問題もかなりのウェイトでとりあげられ高い関心を集   めていました。21世紀の宗教分布の予測などもありました。日本の未来   研究ではあまり顧みられることがない領域ですが、世界レベルでは不可欠   のテーマのようです。  ●4●   参加メンバーの高齢化が目立ちました(これは日本未来学会も同様)。未   来を論じるのには、もっと若い人がはいってこないとWFSの未来はない   ように思います。また、米国・欧米系以外の参加も少ないようです(過去   の大会はすべて米国内で開催されています)。一方、元気な女性の参加者   は多く、21世紀にはメンバー構成もかなり様変わりするのではないでし   ょうか。 ---  ともかく、暑いワシントンの夏の陣は、なんとか終わりました。  さて次のステップは?    ●●●    ●    ●         WFS雑感    ●                           ウダレイ ●見る阿呆から踊る阿呆への転換 世界未来学会(WFS)の総会に出席するのは、これが3度目。毎年、少しずつ雰 囲気は違うけれど、「未来人」が行き交い、未来についてのいろいろな話が飛 び交うのは変わらない。一昨年はサンフランシスコ、昨年はシカゴで行われ、 それぞれに、得るところが少なからずあったのだが、今年は、CFNがプレゼン をするということで、「見る阿呆」から「踊る阿呆」への大転換をすることに あいなった。盆踊りと同じで、見ているよりは、踊ったほうが、ずっと楽しい。 下手でも踊れば、多くの発見や学びがあるようだ。個人的には、英語のブラッ シュアップをしなければ、と真剣に考えはじめたのも、ひとつの収穫である。 日ごろは、適当にしゃべって通じているので、高めようという努力をつい怠っ ていたが、相手を理解し、こちらを理解してもらうためには、「適当」でなく 「的確」な表現力と理解力が必要だと痛感した。 ●未来人ネットワークの広がり 参加の度合いが深まるほどに、出会うFUTURISTSも増え、関わり方も深くなっ て行くようだ。「未来」のフィールドに足をつっこんで数年たつので、前に出 会った人たちとの「再会」もあり、なかなかに楽しい経験であった。シカゴで の会議で知り合った人が、CFNのセッションに来てくれて、「1年前に言って いたグループがこんなになったんだね。すごいじゃない。」などと励ましの言 葉をくれるのがなんとも嬉しい。そうして、そういった人たちの暖かさにも支 えられているのを感じるとき、肩の力がぬけていく。 CFNのセッションでは、「日本」を強調したので、日本にゆかりのある未来人 に出会うことができた。よいご縁ができていくとよいと思う。CFNに入会して くださる方も現れ、いよいよ、CFNの活動が、世界へ向かって開かれていくよ うに感じている。「日本」ということに縛られず、自由な発想ができるような 場をつくっていきたいものだ。 ●脅威のインターネットワールド CFNは、インターネットによって生まれ育ってきたといえるのだが、私自身は インターネットやコンピューターは、あまり得意なほうではない。しかし、今 回は、その恩恵を存分に享受したといえる。ワシントンへ行く前に、ウイーン に滞在していたので、CFNプレゼン準備などはすべてネットを通して行った。 すばらしいプレゼン資料を、日本で作ってもらって、ホームページから異国の 地でダウンロード。もちろん、念の為、OHPも作り、日本から持参してもらい もしたが、遠く離れたところで、こんな芸当ができるインターネットはすごい と思った。こんなことに感心するなんて、と笑う人がいるかもしれないが、1 0年前なら不可能だったことが、今は、私のようなコンピューターオクテにも やすやすとできてしまう不思議。しかも、通信費は、ローカルの電話代のみ。 よい意味で、距離感覚がずれてきたように思うのは、私だけだろうか。 ●印象に残ったワークショップ いろいろおもしろいワークショップはあったのだが、一番印象に残っているの は、「Crossing Boundaries: Spiritual Journeys in Search of the Sacred」というセッション。これは、参加型で、たいそうおもしろかった。自 分の宗教観を隣の人とシェアする時間があって、そこが一番の盛り上がりを見 せていた。やはり、みんな、自分で話したいらしい。私の相手は、オーストラ リア人の男性。「八百万の神」など、プレゼンで話したようなことを話したら、 たいそう新鮮だったらしく、全体でシェアする時間には、真っ先に手を上げて、 「Reiがこういっていた」と言ってくれた。 その後、そのセッションのスピーカーであったLinda Groff氏に頼まれて、イ ンタビューを受けた。研究中のテーマについて、日本人のインプットも必要だ そうで、宗教やら、スピリチュアルな経験やらについて、1時間半くらい、た ずねられるままに答えた。こういうのも、会議のオマケとして、楽しい。会議 は、会議自体よりも、こういうオマケのほうが、後になって意味があることが 多いように思う。参加した我々はもちろん、日本で応援してくださった方々に も、「オマケ」がたくさんあることを願っている。 ●2000年はヒューストンで 来年の会議はヒューストンで行われる。7月23-25日と、日にちも決まっている。 来年は、何をしようか。どんなことが起こるだろうか。CFNは、WFSの東京チャ プターとしての機能も持っているので、海外のチャプターとの交流も可能だし、 既存のネットワークを使うこともできる。そういったチャンスをどう生かして いけるだろう。 考えると、ワクワクしてくる。やっぱり、未来は創るもの。。。と考えたほう が楽しい。想像力と創造力をフルに使って、楽しい未来を創りたいものである。 ■■■--------- ■ ■              WFS追想記 ■------- ●やはりWFSはNFS(全米未来学会)だった!  ワシントンでの「WFS参加はなかなか刺激に満ちたものでした。  しかし、ここは一発不平不満を述べたいと思います。  ワシントンでは英語力の不足を痛感したものの、「ワールド」未来学会であ  るからには、英語のネイティヴスピーカでない我々のようなものには多少の  配慮があってもよいのではないかと感じました。脅威のスピードでレジメも  なくOHPもなくベラベラベラっと話す人が多く、大変にいらだちました。  そういえば、宇宙ステーションの開発をやっていたとき、フランスやドイツ  のパートナーと英語で調整をすると順調なのに、そこにアメリカ人がはいる  とボロボロになる、とい経験を何度かしましたねえ。同じ英語圏でも英国で  はそんないらだちと感じたことはありません。  えーい、アメリカよ! 「World」という言葉をしっとるんかい!!!  大統領が「プレインイングリッシュを使え!」  と主張しているのが耳にはいらんかい!!!。  …とまあ不平を言ってもはじまらず、「プレイン・イングリッシュを使え!」  とことあるごとに主張しようと誓った鏑木でした。                              (鏑木孝昭) ◆  参加者のうち、アメリカ人の割合が多すぎて、偏りがあったと思う。  日本人ももっと参加したらよいと思う。ただし、会議に行くからには、他の  参加者と話せるような何かを持っていたほうがよい。  宗教学関係のセッションに出席して感じたのは、未来に向かって実際に  行動を起こしている人たちが多いということ。一般の人でも、  積極的に発言し、真剣に考え、行動しているように思う。(文責:ウダ)                              (久保 陽) ■■■■■ ■ ■ 僕らはアニメで未来を学んだ(4)首都の2001年(その2) ■                            上野 彰 ■ ■■■  押井守が『機動警察パトレイバー』で描いたリニアな東京の未来は、東京湾 の大規模埋め立て工事のため、大型土木作業ロボットが右往左往し、この作業 ロボット「レイバー」の本体およびOSのシェアを巡って大手メーカーが虚々実 々の駆け引きを行い、過激派(テロリスト)が暗躍する、そんな姿でした。  そして『パトレイバー』のエンディングには、「この物語はフィクションで ある。但し、10年後においては定かでない」というテロップが流れていまし た。  『パトレイバー』の最初の発表から10年がすぎた今、現在の東京の姿は、 押井が描いた東京の近未来とどれくらい異なっているでしょうか。  まず、表の主役たる大型土木作業ロボット、あるいは多目的歩行機械である 「レイバー」的な機器は現在のところ実現していません。「レイバー」を作る ことは、現在、技術的には決して不可能ではないでしょう。人間が搭乗する場 合の安全性や乗り心地には問題があるでしょうが、人型に(そして開発コスト に)こだわらなければ十分作れるはずです。  しかしながら現実の東京には、現在のところ、東京湾埋め立て工事のように 大型土木機器の需要を一気に押し上げるプロジェクトがありません。需要のな いところに開発無し、ということで、「レイバー」のような機械は実現してい ないわけです。  その他の物語の設定や背景はどうでしょうか。  劇場アニメ第1作では、1999年、コンピュータのOSがある便利なソフト一 色に塗り替えられた結果、東京中の情報中枢がそのソフトに仕掛けられたウィ ルスの驚異にさらされる、という危機が語られていました。このストーリーは、 形はやや異なるものの、現在世界中で問題となっているY2K(2000年問題) のアナロジーとしてみると、なかなか示唆に富んでいます。  現代社会の政治、経済、その他ありとあらゆる分野で中枢にあるコンピュー タが、ある日突然暴走を始めるとしたら?10年前、押井によって犯罪として描 かれた脅威は、「年号の変わり目」というトリガーによって、現実のものとな ろうとしています。事実がフィクションより奇なる点は、想定されるコンピュ ータの暴走やトラブルが、誰の意図も、何の悪意も背景とせずに発生するとい う点です。  加えて、物語中では、80年代末の地価狂乱のあおりを受け、廃墟のような形 で残された建物の情景が描かれています。林立する超近代的高層ビルと、忘れ 去られた木造の古い廃屋。バブル崩壊後の東京都内各所で現実に見ることがで きる姿です(この風景を描くために、押井は都内各所でロケーションを行い、 これを基に10年後を描いたのです)。  劇場アニメ第2作は、東京でコンピュータ犯罪が進行しつつあった第1作と 同じ1999年、東南アジア某国でPKO活動に赴いた自衛隊が直面した悲劇から始 まります。唯一人生還した元自衛官が、2002年の東京を舞台に戦争を演出して みせる、というのが大まかな物語です。  TOKYO WARSとサブタイトルがつけられた物語の中では、重苦しい 雰囲気の中で、戦争がシミュレートされ、やがて現実化していく様が描かれま す。戦争を演出する側の最大の武器は、ミサイルでも戦闘ヘリでもなく、様々 な角度からの情報の惑乱でした。東京のような、高度に情報化が進んだ都市で は、その情報を惑乱すれば都市機能は自滅を始めるのです。  戦争やクーデターのような事態の可能性はともかく、「開かずの中央線」的 な機能麻痺が全東京的規模で意図されたとしたら?いや、そこまでいかなくと も、何らかの原因で携帯電話やPHS、無線網が一切使えない事態が発生しただ けでも、東京は大混乱に陥るでしょう。  では、押井は、リニアな未来の中に、なぜこうも繰り返し東京のディストピ ア的未来を描くのでしょうか?  次回はこの意味するところを探るとともに「僕らはアニメで未来を学んだ」 シリーズの総括を行います。なお、次回は10月号掲載予定です。 ■ ■ Future Gadgets (3) 時計はめぐる ■ ■  ネットワークのなかに生息する様々な時計のコレクション。もちろんすべて  フリーソフトウエア。 ●インターネット・タイム  ▼RHC  --------------------------------------------------------------------  ご存知インターネット・タイム"Beat"を刻むデジタル時計。フォントと背景  画像を変えられる。あまり「凝って」いないのがいい。かくいう私は、アイ  ンシュタインが舌を出した写真の上にサルバドール・ダリの文字でインター  ネット・タイムを刻ませている。 ●3D時計  ▼gclock  --------------------------------------------------------------------  OpenGLを利用してリアルタイムで3D表示するアナログ懐中時計。美しさは  一品。蓋を開けたり閉めたり、ぐるぐると回転させてみたり。 ●時刻あわせ  ▼桜時計  --------------------------------------------------------------------  コンピュータという代物は時刻を合わせる必要がある。それぞれの内部時刻  が狂っていると、過去からメールが来たり、修正したはずのファイルが消え  てしまったり、様々な事件が勃発する。この時計はネットワークのなかの時  計サーバから時刻を入手してコンピュータにセットするもの。ところで、あ  なたの時計はいま何時? ●美少女時計  ▼Emi Clock    --------------------------------------------------------------------  美少女時計というと顔をしかめてしまう方もいるだろうが、この時計の歴史  は古い。ウインドウズなどが地上を席捲するはるか前、UNIXプログラマたち  に心の潤いを与えていた由緒ある時計。もちろん着替えのセットもある。近  頃ブラウザや音楽ソフトで流行の「スキン機能」の先駆け。 ●実用時計  ▼Hclock32    --------------------------------------------------------------------  アラーム時計に付箋紙をはっておく。いかにもコンピュータ環境での実用性。  自分の部屋の時計にメモを貼りつける御仁はいないだろうが、これはなかな  か便利。古くなった付箋紙はボロボロになって剥がれ落ちていったりして…。 ●世界時計  ▼ITCWIN95  --------------------------------------------------------------------  インターネットで生活していると相手の国の時刻が気になる。そんな時には  世界時計。あるとなかなか便利。 ●カウントダウン  ▼2000年時計    --------------------------------------------------------------------  巷では2000年グッズのカウントダウン時計が流行。もちろん2000年がデフォ  ルトなのだが、2001年や自分の誕生日をセットしてカウントダウンしてもよ  し。あと?秒と数えるときの快感。ところであなたは何をカウントダウン?  ■■         ■■ ■■  C F N News Network  ■■  ■■         ■■ ●7月29日から8月1日にかけて、ワシントンDCでの世界未来学会に参加。  7月30日には、「Japanese Futurists Perspectives」と題して、プレゼン  テーションを実施。多くの「未来人」とのコンタクトができて、ネットワー  クも広がった。   ▼Ninth General Assembly    http://www.wfs.org/9gafria.htm            ●●● 新会員紹介 ●●●  ▼CFNに新しく参加された方 ● 久保 陽 (くぼ よう)さん  文化女子大学で教鞭をとっておられます。専門は宗教学。もともとWFS会員  だった縁で、今回、欧州旅行の予定をキャンセルされて、ワシントンDCでの  CFNプレゼンにご参加頂きました。旅行が好きで、年に数回は海外へ行かれ  るそうです。趣味はクラシック音楽に囲碁。  ● Laara Lindo (ラーラ・リンド)さん   カナダ出身。「Chief Executive Officer and President of the  University of Science and Philosophy」といういかめしい肩書きとは裏腹  に、物腰はいたって柔らか。 ウォルター・ラッセル関連のセミナーやレク  チャーをカナダ、米国、英国で展開。フィクション、詩から哲学や教育関係  まで、幅広い著作があり、現在、大学のジャーナル「コズミックライト」の  編集に携わっておられます。 ● Yasuhiko Genku Kimura (きむら やすひこ)さん      石川県出身。米国在住。もと曹洞宗の僧侶というユニークな経歴の持ち主。  3年間インドに滞在して、精神的価値と物質的価値のバランスの重要性に気  づき、ビジネスと教育というフィールドに転身。現在、マネジメント及びス  トラテジーコンサルタント。趣味は、科学と哲学を学ぶことと著作に励むこ  と、クラシックを聞くこと。前者は、趣味の領域にとどまらず、トワイライ  トクラブ(Institute for Evolutionary Ethics, a division of The  University of Science & Philosophy)のディレクターとしても活躍中。ご  自宅では、ネコアレルギーにも関わらず、ネコ好きな夫人と、ネコと平和に  暮らしているそうです。 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 未来人集まれ!! 〜 C F N 会員募集 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲  ● C F N では、「ゆるやかにつながる未来人」を募集中です。  ● 申し込み資格:「よりよい未来を創ることに関心があること」  ● 申し込み方法:   ◇1)申し込みはこちら         ▲上記でうまくいかない場合は、住所、氏名、電話番号、ファックス、     Email、簡単なプロフィールを までメールでお送     りください。   ◇2)年会費 5000円 を指定口座にお振り込みください。      指定口座:東京三菱銀行深川支店 普通預金口座1291950       名義:シーエフエヌ共同代表宇田玲 なお、年会費は、4月から9月までの入会の場合、5000円、 10月から翌年3月までの入会の場合は、3000円です。  ● C F N に参加していただくと…   ◆CFN メーリング・リストに参加できる   ◆『未来人集まれ!!』(メールマガジン、月刊)を届けてもらえる   ◆たくさんの未来人に会える ■■ ■ 著者紹介 ■■ ●和田 雄志 (わだ ゆうじ)  ワシントンは暑かった。WFS会員で米国在住の今村さん宅のガーデンパーティ に、日本から「千年の眠り」という焼酎古酒を持参。英語だとミレニアム・ス リーピング? でも2999年にならないと目が醒めないのかしら、なんて冗談。 米国の乾いた風土には、ウェットな日本酒よりもドライな焼酎のほうが合うみ たい。敷地の中を走り回るリスたちを大きなわんちゃんが追いかけて遊ぶんだ そうですが、我が家は、家の中にこじんまりとリスを飼っています。日米の住 宅事情格差は大きいですな・・・・ ●ウダ レイ (うだ れい)  今年の7月は、恐ろしく忙しかった。ウイーンでの国連宇宙会議に続き、ワシ ントンDCでの世界未来学会。平均睡眠時間5時間。忙しいと、未来に飛んで現 在を見ることを忘れがち。判断の誤りはこういうときに起こるのかも。ゆった りと落ち着いて、心楽しく、よき未来をデザインしたいもの。     ▼Space Generation Forum       http://www.space-generation.org     ▼SGF Sister Conference in Japan       http://www.cfnode.com/sgf.jp/ ●上野 彰 (うえの あきら)  日本の夏の未来のために、提言を二つほど。  1.7月15日から9月15日までの間、ネクタイ全面着用禁止。  2.日中の最高気温が30度を超える予報がでたら午後は原則業務停止。  3.業務停止中は原則クーラー使用禁止。 注:2,3項について病院、警察等公共性の強い機関は一部適用外とする。 つまり、暑さに茹だりつつ、こんな事を夢想する今日この頃ですね。 ●鏑木孝昭 (かぶらぎ たかあき) この1年取組んできたコンセンサス会議、いよいよ報告会! 1999年9月4日午後1時から午後4時半まで埼玉は鳩山の 東京電機大学です。みなさま、ぜひいらっしゃいませ。 ■        ■ ■  編集夜話  ■ ■        ■ ■暑い日が続いている。日本の美しい四季のひとつというには、厳しすぎるこ の暑さ。でも、都会にいても、喜びを見出すことはできそう。たとえば、み ずみずしく、涼しげなよく冷えたスイカ。紫蘇の葉を細かく切ったのを添え て頂く、ツルツルおそうめん。酢醤油とごま油をちょっとたらして、おろし 生姜で頂く茄子の蒸し焼き。枝からむしりとったばかりの枝豆をさっとゆで たのと、完熟トマトを冷やしたのとの、緑と赤のコントラスト。それらを愛 でつつ飲み干す、ビールの泡。 ■今年はまた、絶好のロケーションにある友人宅での花火見物という幸運が舞 い込んだり、冷酒と肴の取り合わせが絶妙な小さな店でくつろぐ楽しみを教 えてもらったり。人とのつながりがくれる小さな幸せは、いつでもどこにで も。                            (ウダ) ●そろそろ日本も未来の仲間入りをしてはいかが。       (月輪子) *一般に会社名および製品名は各社の商標または登録商標です。 ■本メールマガジンは、まぐまぐ、パブジーンから同日発行しています。 ▼『未来人集まれ!!8月号』(まぐまぐ版)の登録・解除は ▼『未来人集まれ!! August』(パブジーン版)の登録・解除は でどうぞ。 いつでも自由に登録・解除ができます。 ====================================================================== ▼ C F N Newsletter 『未来人集まれ!!』Vol. 1-10 (8月号) ▼ 編集 ウダ レイ(rei@cfnode.com), 石塚  徹(lunatech@fin.ne.jp) ▼ 発行 C F N -- Creative Futurists Node       ▼ 配信 1999.8.15 (c) 1998,1999 C F N All Rights Reserved. ======================================================================