今日は「EUモデル」についてです。 突然ですが、「自治体」って何でしょうか? 読んで字のごとく、「自ら治め る」ものです。日本のように、ほとんどの仕事が国の出先機関のごとくである ような状態では、「自治体」とはとても言えません。 (最近は少しずつ変わってくる気配がありますが、まだまだですね) 他の国はどうでしょう? ちょっと前までは「欧米」とかいう言葉で日本では ヨーロッパとアメリカを安易にいっしょにする風潮が目立ちました。最近は環 境問題への対応などでかなり違いが見えてきました。 「欧米」という社会は個人をベースにした社会で、その点で日本とすでにちょ っと異なります。しかし、あえていえば、個人をどこまでも優先する米国と、 個人を大事にするがゆえに、社会モデルも積極的に整備するヨーロッパとの違 いがあると言えるでしょう。 自治体について言えば、米国では住民が複数集まり、「自治体を設立する」と 言えば、自治体になることができます。ヨーロッパではちょっと違います。 自治体のすべきことを定義し、そのためにもっともよい形を社会全体が選択す るようなやり方をします。 北欧が先駆者であったこの形(=社会モデル)はEU全体に広がりつつありま す。これはEUモデルと呼ばれています。 このモデルは、個人を軸に、その個人にとって最も基礎的な支援、すなわち基 礎教育と福祉などは最小単位の自治体が責任を持つ体制を作ります。 北欧では、この最小単位は8000人くらいが適当と考えています。「おーい」 と助けを呼べば声が届く範囲です。自治体は大きい方がいいと考える日本とは 距離があります。そう、日本は社会の細かい制度まで国が決めるので、大きい 自治体のほうが国への発言権が増してGOODなのです。 最近日本でも「地方分権」と言われていますが、EUモデルではそんな言葉は ありません。「地方主権」なのです。 もっとも大事なところをもっとも身近な自治体が行うということは、社会の制 度設計にも人々が参加しやすくなることを意味します。 この最小単位の自治体の上に、県レベルの自治体は薄く重なり、より専門的な ことを担当します。たとえば高等教育です。その上にまた国が薄くかぶさり、 外交などを担当します。そのうえにEUが薄くかぶさります。かぶさるのであ って、下を侵食はしないのです。これがこのモデルのすぐれたところです。 「地方主権」の意味するところはここなのです。 この「侵食しない」という原則は、マーストリヒト条約によってEUの組織原 理となった、「補完性原理」に基づいています。 そのひとつは「より大きな集団は、より小さな集団(最終的には個人)が自ら 目的を達成できるときには、介入してはならない。」というものです。EUモ デルとのつながりがわかるでしょう。実はもうひとつあり、「大きな集団は、 小さな集団が自らの目的を達成できないときは、介入しなければならない。」 というものです。これが国や地方の独自性を生かしつつ、連携していくための 原理なのです。 この原理を日本でどう考えるか? という議論をしたい誘惑をこらえ、次回は また世界レベルの話です。「アジェンダ21」です。