★ ローカルアジェンダ作成に当たって〜「ニーズ分析」が重要〜 今回は、地域がローカルアジェンダを作成するときに最も重要なことについて 述べます。それは、「ニーズの分析」です。 地域が発展することを目指すとき、その地域の人々のニーズが何であるかを、 分析することが出発点でなければなりません。ニーズに沿ったものでなければ 人々は参加もしないし、ニーズが不明では計画は作れません。 ニーズというと一般には広い概念です。たとえば、排気量の大きな車で、高速 道路をぶっとばすのが大好きだ、という人がいるとしましょう。 この環境に悪い行動を「やりたい!」と欲するのはニーズでしょうか? いいえ、そうではありません。 スウェーデンの著名なコンサルタント、トリビューン・ラーティの力作「アジ ェンダ21−地域発展のガイド」ではこの「ニーズ」についてチリの経済学者、 マンフレッド・マックス=リーフのニーズ分析を用います。リーフによると、 人間の基本的なニーズは以下のようなものです。 「生命維持・生計」「アイデンティティ・意義」「理解・把握」「参加」「休 養・休息」「評価・親愛」「自由」「安全・保障」「創造性・創造」 では、「高速道路をぶっとばす」のは何でしょうか? これをリーフは「サテ ィスファイアー」と呼びニーズと厳格に区別します。"satisfiers"、すなわち 「ニーズを満たそうとするもの」です。 住居も、食べ物も、それ自身はニーズではなくサティスファイアーです。食べ ることは生命維持というニーズを満たしますが、愛する人が作ってくれたもの を食べることは「親愛」というニーズも満たし、料理をすれば「創造」という ニーズを満たすでしょう。ここに気づくのが大事なのです! 「高速道路をぶっとばす」のはどのニーズを満たすでしょうか? 「アイデンティティ」でしょうか? 「理解」でしょうか? だとしたら、他のサティスファイアでそのニーズを満たすことはできないでし ょうか? もっと環境負荷がかからない方法で・・ このような分析を地域の人が自ら行なうことにより、地域の人々は自分たちの 欲するものは、実はそんなに物質的でないものなのだということに気付いてい くのです。それを深く理解することが、環境をこわさない、本当の意味での発 展につながるのです。 ヨーロッパにはアジェンダ21のガイドブックが多数あります。今日ご紹介し たトリビューン・ラーティのガイドは1冊の理論書と8冊の実践ガイドで構成 される膨大なものです。このうち、理論書は鏑木の所属するナチュラル・ステ ップ・ジャパンが翻訳し、2000円で販売しています。 ご希望の方は鏑木(kabu@ops.dti.ne.jp)まで。 講座についてのご意見・ご感想・ご希望もお待ちしております。 次回は、ローカルアジェンダの実例についてお話しします。