★ ベクショー 〜化石燃料ゼロを宣言した街〜 今日はローカルアジェンダの実例としてスウェーデンのベクショーという街を とりあげます。人口7万3千人、森林産業が盛んな美しい街です。 スウェーデンでは1992の地球サミットが終了してすぐ、すべての自治体に アジェンダ21を配布し、それぞれの自治体にローカルアジェンダに取り組む よう要請しました。資金的な援助にも積極的です。 多くの自治体が特色ある活動をしていますが、ベクショーは特におもしろく、 日本からの見学も頻繁です。彼らはローカルアジェンダに取り組むにあたって 長期的な目標を掲げました。どの国・地域でもうまく使えそうな目標です。 (1)再生可能な資源・エネルギーを利用すること (2)天然資源を可能なかぎり効率的に利用すること (3)さまざまな行政活動から発生する服資材は、再利用・再資源化すること (4)生物多様性と生態系保全に努めること (5)環境的に、あるいは健康に有害な物質は使用禁止とすること (6)社会的な環境の創造を含めて、生活環境を改善すること 具体的には、環境についての「13回連続セミナー」を行ない、そこで提案 された30あまりの実験的なプロジェクトに市のそれぞれの部局が取り組む ことから始めました。このやり方はとてもいいと思います。市民も行政も 知恵を得て、協力して課題に取り組むことを前提にセミナーができれば、 最初の段階はまず成功です。(横浜北部で、やりませんかあ?) たとえば交通部門では、自転車交通を10%に引き上げる目標をたて、 学校や自転車店を巻き込んでいきました。デポジットや課徴金の強化など 「よくある」対策もすぐ実験が始まりました。これは市民と行政の ベクトルがそろっているから、すぐに実験ができるのです。 実際、ベクトルはあっていたようです。ローカルアジェンダを作る 部局が行政に作られましたが、その部局に採用されたのはNGOの 人だったのです。こういうことは、ヨーロッパでは珍しくありません。 おもしろいのは、「環境カフェ」という市内の企業人が定期的に集まって コーヒーを飲みながら環境について議論するというものです。「対話」こそ 環境問題の解決に必要なことなのです。実は、表題の「化石燃料ゼロ」 もこの「環境カフェ」から生まれたのです。 この対話に参加していた「ベクショー・エネルギー社」が、バイオマス 燃料への転換に踏み出したことにより、「ゼロ宣言」が可能になったのです。 この会社が、森林資源からのバイオマス燃料を用いた、熱と電気をいっしょに 供給するシステム(コ・ジェネレーション)を推進し、同時に地域への 熱供給を進めることにより、エネルギー効率の向上と脱化石燃料を 同時に達成しようとしているのです。 もちろん、すぐに完全にゼロにはできません。当面の目標は2010年に CO2排出量を半減させるというものです。決して低い目標では ありません。エネルギー政策がかなり進んだので、現在は交通政策に力点 を置いているとのことです。 ここで、大事なことを述べます。地域が主体でローカルアジェンダを作るのは 当然ですが、地域だけで作るのは困難です。ベクショーでも、炭素税や、 バイオマスを優遇するスウェーデンの国家レベルの政策があってこそ、 改革ができたのです。実はスウェーデンでは、自治体によるローカルアジェンダ の策定がほぼ終わる時期、それを実行団体に移すために800億円もの 基金を設置しました。国家レベルの施策・支援は絶対に必要なのです。 さて、次回、もう一例だすか、話題を変えるか悩んでいます。なにか講座に ご希望がある方はお気軽に鏑木(kabu@ops.dti.ne.jp)まで連絡ください。 ご意見・ご感想・ご質問も歓迎です。