★ カルマル 〜ローカルアジェンダ4つの切り口〜 今回は、もうひとつ実例を挙げます。スウェーデンのカルマル市です。 日本でいえば、単純比較はできませんが、岡山のようなところです。 スウェーデン880万人のうち、6万人が住んでいます。 ここの中心人物はボー・リンドホルムさんという方で3月に日本に いらして、法政大などですばらしいレクチャーを行ないました。 ローカルアジェンダの作り方は一定ではありませんが、スウェーデンでは どうも原則らしきものがあります。以下の4つの切り口で検討することが 多いようです。 (1)エネルギー利用 (2)建築 (3)交通 (4)産官学の協力 これらについて、カルマルがどうなっているのか見てみましょう。 まず、エネルギーですが、なんと75%がバイオ燃料になっています。 化石燃料はたったの5%です。 バイオ燃料とは、たとえば木や家畜の糞尿などです。1980年代に比べ、 CO2の排出は激減しました。10分の1くらいになったのです。 こういうことは、地域に支えられた、卓越したエネルギー供給会社が なければ成り立ちません。実質的には地域別に電力供給が独占されている 日本では不可能です。エネルギーをどう使うかを、地域の問題に 引き戻さなければなりません。 建築については、エネルギーに特に配慮した建替えを積極的に行なって います。断熱構造にする、太陽電池をつける、廃棄物が少なくなるように する・・・ などの措置がとられました。このリフォームにより、 エネルギー利用は15分の1、ゴミは12分の1になるのだそうです。 エネルギー利用の28%を占める交通への配慮も重要です。交通管理 には行政の適切な関与が必須ですが、カルマルでは市長をはじめ 大変積極的です。おもしろいのは、環境にやさしい運転技術の普及に 努めていることです。「ギアは早めに上げる」などの原則が紹介されて います。さらにおもしろいのは、バスの運転手が、少ない燃料で走れば その分、給料に反映される仕組みになっているのです。 産官学の協力については Sustainable Sweden Southeast という会社 が担当しています。職員は一人ですが、数は問題ではありません。 いかに産官学がコミュニケーションするかが重要なのです。 カルマルには、「環境モーニングコーヒー」というものがあります。 ビジネスセクター、カルマル大学、自治体とのインフォーマルな ミーティングです。こういうものが活発にならないと、 産官学が協力して、地域を支える気運が生まれないのです。 最後に、ボーさんから聞いた言葉で印象深いものを拾ってみます。 「文化が大事だ」 「教えるな、見せればわかる」 「全体的(ホリスティック)な見方が必要だ」 ローカルアジェンダについてはいろいろ参考文献がありますが、 一番いいのは、前回ご紹介したベクショーの例も詳しいこの本でしょう。 一押しの一冊です。 「北欧のエネルギーデモクラシー」 飯田哲也著 新評論 講座について何かご希望がある方はお気軽に鏑木(kabu@ops.dti.ne.jp) まで連絡ください。ご意見・ご感想・ご質問ももちろん歓迎です。