★ 市民の「参加と合意」の手法 − フューチャーサーチ  合意形成の手法、第2回はフューチャーサーチです。これは、1991年に 米国で開発されたものです。日本まだ実践例が少ないですが、強力な手法です。 社会のさまざまなセクターにひとつの会議に参加してもらうことで、互いの セクターの利害を超えた未来への行動計画づくりを行おうというものです。 会議の構成は単純で、1.過去の共有 2.現状の分析 3.未来のシナリオづくり 4.行動計画づくりの4つのセッションからなります。意見の不一致は不一致と しておき、合意とそれに基く行動計画をたてようとするところが特徴です。  まず構成ですが、ある問題について、利害を有する8つのセクターから それぞれ8人ずつの人達合計64を集めます。6X6や4X4でもできます。 たとえば、1998年にデンマークで行なわれたコペンハーゲンの交通状況を 見直すための会議では以下のようなグループが設定されました。 ・産業界、運輸業、小売業 ・地方、地域の政治家 ・公務員、公共輸送機関 ・交通の専門家 ・車のロビー集団等のNPO ・環境利益を代表するNPO ・自家用車に乗る一般市民 ・自家用車に乗らない一般市民  どのセクターからどのようにグループを設定するかについての決まりは ありませんが、対象分野すべてのセクターから代表者が参加することが 求められています。会議で決められた行動計画が確実に行なわれるように するためです。  進行のほとんどはグループ作業で。8つのセクターからの8人がひとりずつ 入った構成で行なわれます。セッション1の「過去の共有」から、セッション2 の「現状分析」と進みますが、その次に「問題解決のための行動計画」を すぐには求めないことが大きな特徴です。困難な状態にある現在の状況分析 からいきなり解決を試みると違いが強化されてしまい、動けなくなるからです。 それでセッション3で一気に未来にとび、未来においてどうなっていたいか というビジョンを共有することで、あゆみを先に進めることが可能になるのです。 その後、セッション4でその「望ましい未来」に近づくために「未来から引っ ぱられるような行動計画」を考えるのです。これはバックキャスティングとい う手法で、多くの会議で採用されています。環境問題への対処に有力と考えら れているナチュラルステップでもこのバックキャスティングが計画作りの基本 です。  セッションのやり方もファシリテータの裁量にまかされる部分が多いのですが、 セッション1では、長い用紙を使い、そこに個人、地球、地域という3つの視 点で重要な出来事を書き出すし、セッション2ではやはり大きな紙を使い、扱 っているトピックについて重要と思われることを全員で書き込んで大きな思考 地図を作ることが多いです。これらの工夫は「情報」だけでなく「気持ち」を 共有することに役立ち、合意形成に寄与するのです。また、セッション4では 、実際の行動の可能性を高めるため、短期的な行動計画と長期的なものを区別 しなくてはなりません。  日本の風土で、このような手法が有効かどうか不明です。そもそも対立する セクターを同じテーブルについてもらうことが難しいのだという指摘があるで しょう。欧州でも実は程度は違いますが状況は同じです。フューチャーサーチ はコンセプトは実にすばらしいが実践するのは難しい、それで、欧州でフュー チャーサーチを発展させより使いやすい手法を作りました。それを次回ご説明 いたします。お楽しみに。    講座についてのご希望・ご意見・ご感想・ご質問はいつでも歓迎です。 kabu@ops.dti.ne.jpまでお気軽にどうぞ。