review : 未来少年コナン

・アレグザンダー・ケイ『残された人びと』(岩崎書店)
 “THE INCREDIBLE TIDE”by Alexander Key (1970)


いかにもアメリカらしいアンチ共産主義と教条主義がたまに鼻につくが、全体としてはまともな出来の児童書。アニメでは高潮直後のハイハーバー兵の扱い等位しか印象にないメイザル叔母さんが、こちらではかなりの活躍。

インダストリア側で名前が出て来るのはダイス、ドクター・マンスキー(≒モンスリー)、テリット、レプコ(レプカとはかなり毛色の違うキャラ)の4人位で、一番描写が多いマンスキーの“変心”がかなりあっさりと描かれているのが勿体ない気も。ブライアック・ロー(≒ラオ博士)がコナンに対して“インダストリアの人たちも助ける義務はある”と諭すシーンの説得力がかなり違ってくると思うのだが。ま、アニメでモンスリーがハイハーバーで子供の頃を思い出すシーンはさすがにあざとい気もする。

原作と比べてアニメのアレンジが上手い、と思うのはSF的な概念・用語を殆ど使わなかったところ。アンチ共産主義色と教条主義もアレンジで上手く薄めている。逆に失敗と思うのはジムシィとコナンのハイハーバーでの境遇が、ハックルベリィ・フィンで扱いかねた人種問題と同じ様な後味の悪さを残してしまった点。原作ではジムシィとコナンはラストシーンでしか会わないのでその様な問題は生じていない。