吉祥寺北裏鉄道 平成15年7月13日 第6回運転会

 事の始まりは今年の始めに映画製作会社「ROBOT」のプロデューサー氏から頂いたメールからはじまりました。その内容は、西岸良平氏原作の「三丁目の夕日」を映画化した「ALWAYS 三丁目の夕日」を撮影しておりその劇中に主人公の女の子が集団就職で東北から汽車に乗って上京し上野駅に降り立つまでのシーンにC62を予定しているとのこと。そして実機は梅小路のC62で撮影し、ミニチュア撮影において精巧なC62を探している。そこで私のC62を借用出来ないかとのご相談を頂きました。映画の撮影?!、C62の走行シーンをライブスティームで!!。にわかに降ってわいたような話に驚きと同時に若干の警戒もありましたが、メールを幾度かやりとりする内にどうも本当らしいとわかると今度は嬉しいやら驚きやら・・・。  なぜなら私は大の西岸良平氏のファンで「三丁目の夕日」もしっかり読んでおりました。また劇中の昭和30年代(設定は昭和33年)は、私も大好きな時代設定で日本が敗戦から立ち直りつつ夢に希望に向かって進み始めた時期でもあります。ただ丁度、長期の研修中でもあり早々には打ち合わせも出来ず3月に帰京してからというお約束をしてじりじりと研修終了を待ちました。アスターのC62は実機の1/30の縮尺故、HOゲージなどとは比べるべくもないぐらい大きく迫力は有りますが、ライブスティームという特性もあり細部までの作り込みでは天賞堂のC62には敵いません。そこで帰京早々の3月13日の吉祥寺北裏鉄道に見学に来て頂いて1番ゲージライブスティームをじっくり見て頂いた上でご検討頂くようにお願いしました。  見学当日は本作品の監督であり既に「ジュブナイル」、「リターナー」の監督作品を持つ山崎貴氏を始めプロディーサーの竹内氏、助監督の川村氏、VFX担当の渋谷氏が見学に来られました。こちらとしてはプロの方々の目に納得して頂けるか不安でしたが、皆さん普通目にする鉄道模型とは比べ物にならない大きさと蒸気で走る事に驚かれるとともに非常に楽しげでした。こちらが気にしていたディテールについても特殊効果や美術でカバー出来そうとの事でしたので一安心でした。幾つかの打ち合わせ等を経た後、ゴールデンウィークも終わるとある日に世田谷区の成城にある東宝成城スタジオで撮影となりました。
 23区内でも緑が多い世田谷区ですが、ここ東宝成城スタジオ内は広くまた緑が多くちょっと都内にいることを忘れそうです。  成城スタジオ内で一番の大きさを誇る第1スタジオは、戦前からの上屋であり見た目も重厚です。
 撮影当日は、アスターホビーの玉田氏とレールの設置から始めましたが、プロの大道具さん達が作った道床は水平がバッチリ出ており客車を押すだけで何処までも走ります。  広いスタジオ内にあれよあれよというまに器材が組立てられて行く様は流石プロの仕事。滅多に出来ない経験にただただ驚くばかりです。
 なにやら監督、助監督及びVFX担当がのぞき込んでいるのは・・・。  今日の(今日だけは)主役、C62(アスターホビーニセコVer)と8両のスハ43の堂々たる編成です。
 C62はこの日の為に美術担当の方により念入りなウェザリングが施され如何にも晩年の急行仕業のC62と言ったところですね。特製ナンバープレートとスワローマークの隠蔽によりC622は見事にC6222になっているでしょ!。22号機は名作「ある機関助手」で急行「みちのく」をけん引しており絶妙な選定でした。  8両のスハ43はアスターホビーと横浜ライブスチームクラブから集められこちらも念入りなウェザリングが施されています。また一部、もとから破損していた小物部品まで修理取り付けされており流石にプロの美術さんの仕事と唸らされます。それにしても1番ゲージで8両もの客車の編成となると長大ですね〜。
 レールの設置と機関車及び客車の配置が完了してしばしみんなで見入ってます。見事なウェザリングと堂々たる急行編成。  監督氏と美術担当氏が苦労話で盛り上がってます。聞けば聞くほどお二方ともかなりの拘りの持ち主・・・。
 山崎監督、カメラを持ち出しUPでC62を撮影中。  準備が出来たスタジオ内にプレス関係者等が入りにわかに活気付いてきました。当然、何から何まで初めての私はドキドキもの。
 中央の方がエグゼクティブプロデューサーの阿部秀司氏です。この方、相当の鉄道ファンでこのたびの「ALWAYS 三丁目の夕日」に於いても絶対C62でないとダメ!といって監督・助監督・プロデューサーを困らせたご本人・・・。  撮影前のプレス関係者による取材が始まり今回の撮影に使用するC62及び1番ゲージライブスティームについて細部にわたり説明する玉田氏。う〜ん、実に解りやすく説明してます。これが商談会ならね〜。
 細部にわたりカメラアングルを調整を行うカメラマン氏と山崎監督。さあいよいよ撮影開始です。  撮影は、数十メートルにわたり設置した単線レールを出発点で私が走らせ終点側で玉田氏が止める連携プレーでした。ブルーバックで撮影し、これに実写映像を合成するのです。
 どんな具合ですか?。助監督氏の「ハイ、お願いします!」のかけ声で撮影開始です。何が一番難しいといったらやはり速度調整でした。エンドレスならば徐々に調整も出来るのですが、数十メートルの一本線なので加減弁の最初の開け具合で決まります。このため納得頂けるまでに何回となく走らせました。ラジコン化してればもっと柔軟に対応できたのですが。  ようやく撮影も終了してプレス関係者の求めに応じてC62とのツーショットの山崎監督。実はC62も燃料切れ寸前でボイラー内の残圧で粛々と走ったシーンでOKが出ました・・・。ふ〜(^^;)
 無事撮影も終了して笑みが出る山崎監督ともうひと方・・・。撮影の始めから見学に来ていたのはなんと「新世紀エバンゲリオン」や「ナディア」で有名な庵野秀明監督でした。お二方とも親交厚いとのことでビックリでした。しかし2人とも上背があってかっこ良いなあ〜。  無事、撮影も終了して山崎監督を間に玉田氏と私でスタジオをバックに記念撮影をして頂きました。いや〜それにしても無事に終わって良かった〜。
 撮影中は、私も玉田氏もC62の発車と停止にやっきになっており実際の撮影シーンは有りません。もっとも映画撮影という特殊性からも公開は出来ませんが。それにしても大変貴重な経験ができ本当に良かったです。もっとも私だけではどうにもならないのでアスターホビーの玉田氏に援助をお願いしレールの貸出、敷設及び撮影と助けて頂き本当にありがとうございました。それにしても山崎監督を始めスタッフ皆さんのプロフェッショナルな仕事に感心させられると同時に非常に丁寧できめ細やかな気遣いは感心させられました。それにしても今回は映画製作の舞台裏をかいま見られ如何に時間と費用と人員が必要なのかを実感しました。今後、日本でも良い映画が作られるためにも映画館に足を運ぼうとつくづく感じた次第です。最後になりましたが、山崎監督を始め制作関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。またこのような貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。11月5日の公開、成功を心から祈っております。