環境保全法第6回 「都市計画(1) − 総論 − 」
正木宏長
※断りのない条文の指定は都市計画法より
1. 都市計画とは(須田p210〜214)
・都市地域の法の根幹 : 都市計画
・「多様化している都市活動が一体として十全に機能し得るように都市の構成に統一を与え、街路その他の公共施設を整備するとともに、土地の利用を合理化することを目的とする総合的な計画を指すもの」(田中二郎『土地法』p115)
・「都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとする。 」(2条)
・都市計画法は都市計画区域・準都市計画区域に適用される
・都道府県が都市計画区域を定める(5条)
※政令で定める要件は教科書p212
・都市計画区域に指定されると、区域内での@開発行為の制限、A建築確認制度の適用、B建築基準法の集団規定の適用、C国土利用計画法の土地取引の制限が課せられる
2 都市計画(須田p214〜221)
2.1 都市計画の類型
◎都市計画法に基づく都市計画の内容
@ 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(マスタープラン、6条の2)
A 区域区分(7条) ex. 都市計画法の市街化区域
B 都市再開発方針(7条の2)
C 地域地区(8条) ex. 都市緑地保全法の緑地保全地区
D 促進区域(10条の2) ex. 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法の住宅街区整備促進区域
E 遊休土地転換利用促進地区(10条の3)
F 被災市街地復興推進地域(10条の4)
G 都市施設(11条) ex. 道路、下水道
H 市街地開発事業(12条) ex. 土地区画整理
I 市街地開発事業等予定区域(12条の2)
J 地区計画等(12条の4) ex. 幹線道路の沿道の整備に関する法律の沿道地区計画
・@〜F、IJは土地利用計画であり、GHは都市計画事業である
2.2 都市計画の決定主体
・都市計画は、「土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない」(都市計画法13条)
・都市計画で市街化区域と市街化調整区域の線引きや、用途地域指定のようなゾーニング、下水道のような都市施設の規模や配置が定められる
・広域的な都市計画は都道府県が、その他のものは市町村が定める(15条)
※都道府県が定める都市計画
→ 都道府県マスタープラン、市街化区域と市街化調整区域の区域区分、都市再開発方針、臨海地区・歴史的風土特別保全地区・都市再生特別地区などの地域地区、大規模な(施行区域3ha以上の市街地再開発事業等)市街地開発事業、高速自動車国道・一般国道・都道府県道・空港などの都市施設etc.
※市町村が定める都市計画
→ 用途地域・高度地区・生産緑地地区・景観地区・伝統的建造物群保存地区のような地域地区、小規模な市街地開発事業、公園・公共下水道・市町村道・ゴミ処理場のような都市施設、地区計画
2.3 都市計画の決定手続
・都道府県や市町村が都市計画案を作成する際には、必要があると認めるときは、公聴会等の必要な措置を講ずる(16条)
・都市計画案は2週間公告縦覧に供して住民の意見書の提出を求める(17条)
・「都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県都市計画審議会の議を経て、都市計画を決定するものとする」(18条、市町村の場合は19条)
・都市計画への住民の提案の制度がある(都市計画法21条の2〜5)。土地所有者やNPO法人が都市計画の案を提出することができる
→ 区域内の土地所有者等の3分の2以上の同意が必要
※都市計画に対しての行政訴訟は処分性が認められにくいが、判例は第2種市街地再開発事業には処分性を認めた(最高裁平成4年11月26日第1小法廷判決、民集46巻8号2658頁)
3 マスタープラン
3.1 計画間調整
・都市計画は上位計画に適合していなければならない
ex. 国土形成計画、首都圏開発整備計画、公害防止計画等
3.2 都道府県都市計画区域マスタープラン
「都市計画区域については、都市計画に、当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を定めるものとする。 」(都市計画法6条の2第1項)
都道府県土地利用基本計画は5地域の区分や土地利用の基本方針を示して、各計画の上位計画となるものである。範囲は県全域に及ぶ。
これに対し、都市計画区域マスタープランは都市計画(土地利用基本計画の下位に立つ)の基本方針を示すものであり、都市計画区域内での土地利用規制や市街地開発、都市施設整備の方針を定める。
※青森県では、「都市計画区域マスタープラン」の他に「都市計画マスタープラン」として「青森県都市計画基本方針」 「青森県都市計画基本計画」を策定している。この場合は「都市計画区域マスタープラン」が県各区域毎のマスタープランであり(都市計画法によるもの)、「青森県都市計画基本方針」 「青森県都市計画基本計画」は、県全体での基本方針や基本計画を定めている(県が独自に定めている)。
3.3 市町村マスタープラン
・市町村は、当該市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)を定めることができる(都市計画法18条の2第1項)
・18条の2第1項の「市町村の都市計画に関する基本的な方針」が市町村マスタープランである
・「市町村は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 」(都市計画法18条の2第2項)
※交通網をどうするかとか、公共施設の整備とか、道路整備をどうするかといったことを定めている
4 区域区分(須田p222〜224)
・都市計画の主な手法は、ゾーニングをして土地利用規制をかけるというもの
・秩序ある市街化を図るために区域区分制度が導入された
都市計画区域(都市計画法5条)区域区分 → 市街化区域
→ 市街化調整区域
区域区分なし → 白地区域
準都市計画区域(都市計画法5条の2)
・市街化区域 → 既に市街地を形成している区域および概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(都市計画法7条2項)
・市街化調整区域 → 市街化を抑制すべき区域(都市計画法7条3項)
・白地区域 → 都市計画区域の中で市街化区域にも、市街化調整区域にも指定されなかった区域
※市街化することが不適当な区域や農地として保存すべき区域などは市街化区域に含めてはならない(須田p224参照)
都市計画区域内での開発には、区域区分に沿って都道府県知事の開発許可が必要となる(都市計画法29条、詳細は次回の講義)
※市街化区域以外での、大規模集客施設の建設には、2006年改正により厳しい制限が課せられることになった
◎準都市計画区域(5条の2)
・都市計画区域外でも、都市計画をする必要があるため、2000年の都市計画法改正で、設けられた。都道府県が指定する(従来は、市町村が指定するのが特徴であったが、2006年改正で都道府県が指定することとなった)
・準都市計画区域内では、3000平方メートル以上の開発行為には開発許可が必要となる(都市計画法29条1項、都市計画法施行令19条1項、300平方メートル以上までなら都道府県が裾切り条例を制定することができる)
・用途地域指定がなされる、建築確認が必要になる
5 用途地域(須田p222〜225)
・市街化区域のなかで次の用途地域を指定する(都市計画法8条1項2号)
→ 用途地域の他に、美観地区や風致地区といった地区も指定されるが、基本は用途地域指定
・市街化調整区域では用途地域指定は原則としてされない。
(開発が原則として禁止されるので、改めて指定する必要はないから)
※準都市計画区域でも用途地域指定はなされる(8条2項)
・色分けと呼ばれる
・土地利用や土地利用の全体計画を示すことによって、土地利用を規制、誘導するもの
・用途地域は市町村が定める。ただし首都圏整備法による既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法による既成都市区域・近郊整備区域 、中部圏開発整備法による都市整備区域では都道府県が定める(都市計画法15条)。
◎用途地域の種類(都市計画法9条1号〜12号)
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域
6 促進・推進地域(須田p225〜226)
・地域地区等の都市計画は土地利用規制をするものであったが、促進区は、土地利用者に一定の土地利用をすることを義務づけることで、土地利用計画に沿った使用を図ろうとする積極的制度
◎種類
@ 促進区域(10条の2)
(a) 土地区画整理促進区域(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法5条)
(b) 住宅街区整備促進区域 (大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法24条)
(c) 拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域(地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律19条)
→ 建築行為等に都道府県知事の許可が必要となる
→ 宅地の所有権者等は都市計画の目的を達成するよう努めなければならない
A 遊休土地転換利用促進地区(10条の3)
B 被災市街地復興推進地域(10条の4)
次回の講義は「都市計画(2) − 地区計画、公用制限 −」、須田p226〜255