MFBH 「ムンク」




クニャッとな…

今年の猛暑で溶けました



はじめに

  このスピーカーはムンクの「叫び」をモチーフにした作品で、Fostex主催の「FE103誕生40周年記念スピー
  カークラフトコンテスト」に応募したものです。結果の方は……と言いますと、最優秀賞は逃したものの、
  優秀賞(総合2位)を頂きました。「コンテスト」と名のつくものに自作品を発表したのはこれが初めてですが、
  多くの方に試聴して頂き、なおかつ高く評価されたことは大変名誉に思います。それにしても、仕事の都合で
  コンテスト当日に会場へ行けなかったのがつくづく残念でした。他の方の作品の音も聴いてみたかったです。
 
  ところで、このムンク、名前の前にMFBHという見慣れぬ略号がついていますが、これは「モーショナル・フィー
  ドバック・ホーン」の略……ではなく(笑)、「マッチングフィルター・バックロード」の略称です。略称こそ私が
  勝手に命名したものですが、発想自体はそれほど突拍子もないものではありません。要するに、ベル(ホーン
  開口部分)に重さを変えた何枚もの吸音材を張り込み、開口面反射による音波の減衰を減らそうというもの
  です(つまり、正確には「放射インピーダンス・マッチング・フィルター」ということになる)

   

  この方式を採用し、実際にメーカーから発売された商品としては、私の知る限りでは、JBLのパーフォレー
  テッドプレートホーン(通称・蜂の巣ホーン)があります。ランサー101に組み込まれた175DLHや、大型の
  HL-88などが有名です。古い製品ですが、今でも、コテコテのジャズ喫茶なんかに行くと見かけることが
  ありますね。もっともあれらは中高音用のホーンで、張り込んである素材も薄いパンチングメタルなのです
  が……。いずれにせよ、ショートホーンの実効長を延ばそうという設計のねらいは同じです(ただし、JBL
  の音響レンズには、指向性の改善目的もあります)
 
  さて、このMFBH、設計の計算式があるのか、と言いますと、それがあるようなないような……(汗)
  例によって吸音材のデータが非線形なため、インピーダンスカーブを見ながらのカット & トライとなります。
  理論的にはインピーダンスカーブが平らになればよいのですが、はっきり言って、こんなショートホーンに
  インピーダンスカーブが真っ平らになるまで吸音材を詰めると、低音が死んでしまいます。
 
  そういうわけで、多少の凹凸は我慢して、結局は「聴感」で吸音材の量を調整することになります。しかし
  まあ、バックロードの設計なんてものは、あんまり屁理屈をこねない方がいいのかもしれません。長岡老師
  も著作の中で「バックロードは美しく設計できれば成功と言ってよい」と書いておられますし。自分の耳を
  信じるとしましょう。
 
  最後に少しだけ、私の経験談というか、ノウハウのようなものを明かしますと、MFBHの吸音材は、できれば
  「薄く」・「隙間なく」・「太鼓張りにしてやる」方が音はいいようです。が、これはあくまで私の経験則です。
  場合によっては、わざと隙間を開け、たとえばホーンの四角い開口部に「×型」に厚いグラスウールを斜め
  に立てかける、という手もあるでしょう(初期のギガホーンがこういう状態だった)  ただ、音波に限らず、
  圧力変化というものは、伝わりやすいところを伝わるという性質がありますので(「音の橋現象」だったか?)、
  フィルターとしての効率は悪くなります。また、開口面反射を減らす、という点を考えると、厚いフィルターを
  一枚だけ貼るよりは、空気層の厚みを変えて何重にも薄いフィルターを重ねる方がよいはずですが、音質
  的にどっちが優れているかは分かりません。一応、私は後者を採用しています。
 
  ……ああ、結局は最後まで屁理屈を……




製作途中のスナップ


 ●片チャンネル分の積層MDF 

 スピーカー2本分で、φ30mmの穴を合計1200箇所(!)

 近く開ける必要があります。東急ハンズあたりに板材

 カットを依頼したら殴られそうです。……金さえ払えば

 やってくれる?



 このような大径の穴を狭い間隔で大量に開けるには

 普通の電動ドリルではまったく歯が立たず、高速イン

 パクトの出番となります。これがまた高い……(涙)

 



 ●切り出したMDFを接写 

  結構いい感じ(?)に見えなくもないのですが、実は

 これでもまだ精度が甘く、平均して0.6〜0.5mmくらいの

 誤差があるのです。これがギリギリ許容範囲で、1mm

 以上の誤差が出たら、多分隙間だらけで、最終的に

 箱にまとめられないと思います。



 やはり専用の工作機械が欲しいですねえ。

 



 ●両サイドのパテ盛りまで 

 「積層ブロック接着」 → 「ユニット取り付け部分の開口」

 → 「前板・背板接着」 → 「両サイドのパテ盛り」



 なんか一気に作業が進んじゃってますが、これは途中

 の写真を取るの忘れただけです。申し訳なし。



 なんせ締め切りが間近に迫っていたもんで……

 

 

 



 ●あっけなく完成! 

 製作時間は、1本1ヶ月といったところでしょうか。

 ギガホーンやB.J.'s TLSと比較すると随分と小物です。

 やっぱり小型スピーカーは塗装が楽だなあ……



 ところで出来上がってから気づいたんですが、この箱、

 アングルによって歪み方が違って見えるんですよね。

 結構、見ていて飽きません。



 ……が、スピーカーというものは鑑賞物ではなく音を

 聴く道具でありまして(以下省略)





その後、ムンクは長崎県のN氏の元へ旅立ちました。
  気に入って頂いたようで、製作者としては嬉しい限りです。  




(2001. 6. 5)