Isobarik 「トライアンフ」
「笑いポイント」は皆無
はじめに
2003年は時間的な理由で、恒例のフォステクスのコンテストには参加できませんでした。
その代わりというわけでもないのですが、「サンバレー」「Sound Atics」「長谷弘工業」三社共同で開催される
「第4回もの作りコンテスト」というスピーカーコンテストの話を聞き、私も一口乗らせて頂くことにしました。
(コンテストの審査結果は準グランプリ) 審査会当日は、例によって不義理をして欠席してしまいましたが、
多くの方に音を聞いて頂いたことに大変感謝しております。ありがとうございました。
さて、製作の方ですが、コンテストの開催を知ったのが2003年の12月の末、締め切りが翌2004年の1月末日
ということで、とにかく時間がありません。大がかりな箱は無理と判断し(どう考えても仕上げが間に合わない)、
小型のタンデムにすることにしました。海外では「アイソバリック(Isobarik)」と呼ぶ方が通りがよいようです。
タンデムスピーカー(アイソバリック)について
タンデムスピーカーは、内側と外側のドライバに同品種を使うと、正常に動作しません。もちろん結線すれば
音は出ますが、中音域から高音域にかけ、ドライバ間の距離差と内部キャビの形状に応じて派手なピーク
やディップが発生します。実際、耳で聞いても、帯域によって音が妙に濁っているような違和感を感じます。
この問題を回避するには下記のような方法が考えられます。[1] 外側のドライバの裸特性と、内側のドライバを箱に取り付けた状態の特性が一致するよう、このうち [2] は、メーカー製の3wayや4wayのスピーカーでよく見かける手法です。特性の乱れる部分は全部別々のドライバを選択をする。
[2] 同品種のドライバを使う場合、低いカットオフのローパスフィルターを入れる。
ネットワークでバッサリと切り捨てて、タンデムドライブの美味しい部分だけを利用しようという考え方です。
究極的に言えば、タンデムドライブというのは、どんなに緻密に設計しようと多少なり諸特性が乱れますので、
(2本のドライバの距離差をゼロにするのは物理的に不可能だから)、最初からネットワークを前提とした設計
というのは、強引なようでいて、その実、エレガントな解決策と言えるかもしれません。単純に同じドライバを
2本向かい合わせに取り付けることで省スペース化でき、量産コストを抑え、副次的に高調波歪低減などの
メリットも狙えます。いわゆるT/Sパラメータのモデリングも簡単です。
ただ、今回のコンテストではフルレンジのSA/F80AMGの使用が指定されていますので、必然的に [1] の
方法となります。従って、何らかの測定環境は必須ですが、最初にドライバの選定を間違えなければ、箱の
設計・製作自体はそれほど難しくはありません。参考までに内側のドライバ選びのポイントをあげておきます
と(多少、私見が入ってます)、
・ 外側のドライバに対して 10%〜20%程度 Qts と fs が低いもの。今回は、手持ちの適当なジャンクドライバ(ダブルボイスコイルの8cmフルレンジ)を使用しましたが、おおよそ
・ 能率は同程度ないし数dB低め。
・ Sd(振動板面積)も同程度。
・ Leは同等ないし少し小さいもの。ただし大きくても高域がのびていなければ使える。
条件が合えば、どんなドライバでも使えます。なお、エンクロージャを設計する時のT/Sパラメータですが、
・ Mmsは、外側と内側のドライバのMmsを加えたものに、両者のドライバの間にある空気の重量を諸数値が出そろったら、パソコンのシミュレータを使うなり、教科書に載っている数式をもとに手計算を行う
加算する(空気は1リッター = 1.2g)
・ 新たに算出したMmsからVasを計算する。Sdは外側のドライバのものを使用する。
・ Qtsも外側のドライバの裸特性を利用する。
なりして、設計を進めていきます。ここから先の作業は普通のスピーカー作りとあまり違いはありません。
作品(トライアンフ)自体には、他にもいろいろとノウハウが詰め込まれているのですが、コンテスト参加作品
の諸権利は主催者側に帰属するとのことですので、細かい設計図などは割愛させて頂きます(写真からバレ
ちゃいそうですけど……) 実際、この箱は、未塗装の試作品を十数個作り、実測してもっとも特性が優れ
ていたものを採用しましたので、コンテストで好評を博したのは、それが理由かもしれません。