TLS + Isobarik + AST 「タービュランス」  
 
2006年サイト復活記念プロジェクト


 
はじめに

   趣味でスピーカーを作るようになって、結構な年月がたちます。これまで製作した自作品の中でもっとも長期
   大型プロジェクトと言うと、現在メインスピーカーとなっている「ギガホーン」ですが、不満がないわけではあり
   ません(まあ、どんな物を作っても、なにかしら不満は出ると思うが……)  主な問題点としては……
 [1]  4.5inchフルレンジのバックロードなのでレンジが狭い(50Hz〜15kHz止まり)

 [2]  それほど大きくはないが、主材がコンクリートなのでやたら重い(1本80kg以上)

 [3]  バックロードとしては特性はフラットな方だが、TLSの一種と考えると不完全。

 [4]  ルックスがイマイチ気に入らない(悲)
   ……といったところでしょうか。[4]はデザイン上の失策なのでしょうがないとしても、残りの問題、特に[1]はなん
   とかしたいところです。現在はAltec CF404-8Aがマウントされており、音色自体は大好きなPA系のものなので、
   そこに不満はないのですが、やはりフルレンジ一発には限界があります。かと言って安易にツィータを加えて
   も、今のナローバランスが崩れるだけなのは目に見えており(と言うか、実際に試してしっくりこないのでフルレ
   ンジのまま使っている)、そもそも中途半端にマルチウェイ化するくらいなら、最初からマルチウェイとして設計
   したスピーカーの方がいいに決まっています。フルレンジはフルレンジの持ち味を活かすのがベスト。
 
   そういうわけで、実に7年ぶりにメインスピーカーの交替をめざし、計画を練ってみます。なお、今回は少し
   趣向を変えて、知人とのトーク展開による現在進行形のコンテンツです。失敗に終わり、途中でとん挫する可
   能性も多分にありますので、その場合はご容赦を…… (一番悲しいのは、ギガホーンと並べて比較試聴
   して、ゴミでした!というオチですな)

(2006. 5. 20)       


                  ★ ★ ★ ビミョ〜なノリの登場人物たち ★ ★ ★
 
 

 七休。一応、当サイトのweb master。昔は週休七日をうたっていたが、近頃は本業が

 忙しくて自作オーディオをサボりがち(そのくせ、本業もよくサボる……)

 死んだ師匠がビンテージ畑の人だったため、未だにその呪縛から抜け出せない。



 

 友人のA氏。自作歴は浅いが、オーディオ歴は結構長い。JBLの白黒ウーハをやたら

 激賞するので、仲間内からは密かに「パンダ」とアダ名されている(そう呼ぶと怒る)

 七休とは別の趣味での関係も深い。




Mmsが大きくて立ち上がりの鈍そうな… Prologue
    なんだかんだで、もう2006年か。
  いよいよワールドカップのドイツ大会が始まるね。どこが優勝すると思う?
    いきなりスピーカーと無関係の話?!
  テンション低すぎんぞクルァ!!
    ああそう。ダメ? 「最近は天気もいいし、工作シーズン到来ですね」とか、無難なツカミの方が
  よかった? ムックの日曜大工特集みたいで月並みだけど。
    うん。まだその方がマシだ。普通でいいんだよ。
  やり直し。
    では、ゴホン。……近頃は天気もいいし、いよいよ工作シーズンがやって来ました。
    やって来ました。
    しかし、もう二ヶ月もすれば、うんざりするほどクソ暑い夏がやって来ます。
    やって来ます。
    そんな暑い中、汗だくだくで木工に励むのはいかにも愚かしいので、オーディオショップの
  ショールームへ足を運びます。クーラーの利いた部屋で、絢爛たる海外ハイエンド機器に
  囲まれながら、美味しいアールグレイを一口すすり……

 

  「音像が実にシャープですね」……って、うぉい! 気分はレコード演奏家?!
  スピーカー作らねえのかよっ?! 
    作りますとも。よし、下らない前置きはこれぐらいにして、さっさと話を進めるぞ。
  (神の声により) お題は大口径ドライバのTLS + Isobarik + ASTと決まった。
    とうとうバックロードは卒業か。宗旨替え? どういう心境の変化よ?
    そういうわけじゃないんだけどね。バックロードは……、ま、あれはあれでいいだろ。
  今さら新しい作例を作っても、(サイトの)お客様の好奇心は満たせませんので。
    接客業種のサービス精神が骨の髄まで染み込んでるねえ。
  でもさ、7年もつき合ってきたんだろ。ケジメはつけた方がいいんじゃないの?
    男と女の別れ話みたいだ……。別に「ギガホーン」を捨てる気はないぞ?
  それに音のインプレなんて、ぐたぐた書いたところで第三者の参考にならんでしょ。
  これこれここが気に入らないので別のスピーカーにしますとか、書けばいいわけ?

 
  測定データぐらいアップしてもバチは当たらんと思うよ。
    そうですか。では、歴代のマウント・ドライバと共に、とくとご覧あれ。


  
   ドライバを変更するたびに外装を変えてるところが微笑ましいようなそうでないような… 



 ■青線は「ホーンの開口部に吸音材を入れなかった時」の周波数特性
   ■赤線は「ホーンの開口部に吸音材を入れなかった時」のインピーダンス特性
 


 Mic : Behringer ECM8000    Pinknoise & 1/24octave PC RTA (1m) 


    このデータの何がすごいかって、一本80kgもあるスピーカーをわざわざ近所の公園まで持っ
  てって野外測定してるとこだな。それはもう、見返りのない重労働の極み。
    そこに感心するんかい?!
  工作精度をほめるとか音をほめるとか、そんな気づかいまるでナッシング?
    それにしても、いつも思うんだけど……
  バックロードってのは、こんなに特性に凸凹が出来るものなの?
    吸音材を入れてない時のすっぴんの特性のことを言ってるんだよね?
  その通り、笑っちゃうくらい凸凹になります。これが普通です。
  でも音楽は十分聴けるよ。

 

  確かに言えてる。吸音材なしだと、かなり荒っぽいけどさ。
  同じ「Altec CF404-8A」を使った他のバックロードのデータと比較すると面白いね。

 
  そうなんだ。箱の剛性の高さと音響管のなめらかさの恩恵で、凸凹だけど低域の音圧が圧
  倒的に高い。95dBを優に越える。木製の直管ホーンだとここまでは無理。このスピーカーは、
  もともと吸音材を詰めることを前提にしていて、グラスウールを入れた状態だと音圧は全体
  に低下し、ピークやディップが目立たなくなる。インピーダンスカーブもダンプされて、4つ
  ある山の最大値でも17Ω程度。データの傾向を見る限り、TLS(トランスミッション・ライン)に
  似ています。

 
 
  でもまあ、音はやっぱりバックロードだ。
  これ、さらに吸音材でダンプするとどうなるの? もっとフラットな特性になるわけ?

 
  なりません。もちろん特性の凹凸は潰されてなめらかになるんだけど、200Hz〜300Hzから
  ダラ下がりの密閉箱みたいな特性になっちゃうの。インピーダンスはさらにダンプされて、
  いよいよTLSに近づくんだけど、要するにそれは「高能率なフルレンジは普通のTLSには
  向きませんよ」という典型パターンにすぎないのね。……ま、そういうこともあって、今回は
  大口径ドライバでTLSに挑んでみようかと。

 
 
  けどさ、マルチウェイのスピーカーって普通、ミッドの選択から始めるじゃない?
  ウーハをTLSにして、そこから設計するってのは順序が逆だと思うんだけど。

 
  それはその通りなんだけど、今回は応用の利く作例にしたいんだよ。
  ほれ、スピーカーの自作派の人って、大体、好きな音の方向性を持ってるじゃん? 分かる?
  クラシック向きのおっとりした音調が好きな人とか、ペーパーコーンのカラッとした音色が好き
  な人とか。俺もサスペンション硬めのPA系ドライバが好みだしさ。ミッドを先に決めてしまうと、
  それに見合った低域の能率を考えて、ウーハや箱の大きさが決まってくるから、あとでミッド
  だけ交換するとか、簡単にはできないだろ? まあ、やれんことはないけどさ……
  だから今回は、低域は完全にアクティブ化して、汎用性を持たせたいんだな。
    じゃあ、まずはTLSに向いたウーハの物色からか。
    そういうことです。
 

(2006. 5. 30) 


ハイコンプライアンスにフラフラと… Chapter.1
    しかしまあ、実際問題、いざTLS向きのウーハを一つ選ぶとなると難しいね。
  いろいろありすぎて迷う迷う。目移りしまくり。
    今回は大口径で攻めるんだよな。
  だったら、EVのDL18Wとか、FostexのFW800あたりはどうだ? デカいぜ?
    お前は俺に、綾辻の迷路館を建てさせる気か?
  80cmウーハでTLSなんか作ったら、JIS標準箱(600リッター)よりデカくなるだろ。
  ウレタンの鏡面仕上げにしたら塗装代に何百万かかると思ってんだよ。
    箱だけなら作る気力はあるわけだ……

 
  冗談はさておき。手頃なのは8inch〜10inchくらいかな。海外の作例も多いし。口径はそれで
  いいとして、スペック的に重視すべきなのはやはりQmsだろう。大体 4〜6ぐらいが目安と
  なる感じ? これは「B.J.'s TLS 3way」を作った時にも書いたし、その後、自分で追試した経
  験からも、The Subwoofer DIY Pageの指針はおおむね正しいと思う。要するに口径を問わず、
  Qmsが小さめの、密度感のあるコリッとした低音を出すウーハは、TLSには向いてないって
  ことだ。それともう一点。今回は出来るだけ安いドライバを使いたいんだよね。

 
 
  どうして? ……ああそうか。こないだパチスロ打ちに行って、
 「吉宗」で一日に三回もBAR天井を食らったせいだな。 
    あれには俺もビックリしたよ。設定以前の問題だわ。鷹狩りもガセりまくるし、ピ〜ヒョロロ〜
  「殿、帰りますぞ」……分かりましたボクちんも家に帰りますからお願いお金返して……
  って何を言わせるんじゃい。ほっといてくれ。
    そんな八代将軍も今年の7月には全部撤去です。
    「吉宗」さえなければ、AccutonのD20-6が2ペアぐらい買えてた気がする……
    脱線しすぎだ。話を戻そう。
  で? なんでわざわざ安物のウーハを選ぶの?
    理由はいくつかある。設計方針とも密接に関わる話だから、整理してみよう。
  ところで逆に尋ねるが、高級ウーハの特徴ってなんだと思う?
    そりゃ……、巨大な磁石に頑丈なフレーム、金メッキ端子とか……、要するに
 いかにも、いい音が出そうな雰囲気? 
    豆腐の角に頭をぶつけて死んで下さい。
  ……いやまあ、まったく見当違いってわけでもないんだけどさ。
  箇条書きするとこんな感じかな?
 [1]  中域からの分割振動域の処理が上手い。

 [2]  振動系の軽さとfsの低さのバランス

 [3]  振幅限界の大きさ。これは耐入力とPeak SPL(最大音圧)を決定づける。

 [4]  各種の歪み・非直線要素の排除。
    むむむ。コーンが白黒だとか、金メッキ端子に意味はないと言いたいんだな?


 
  [1] は大体分かるよね。やっぱり高品位な再生音を求めるなら、ドライバのピストンモー
  ション域だけを使いたいわけだ。けど、これは案外難しい。ごくごく標準的なドライバだと、
  6.5inchクラスなら800Hz前後、15inchなら350Hzくらいから分割振動が始まる。もちろん、
  これは振動板の材質にもよるんだけどね。ただ、ピストンモーション域を広げようとして、
  やたら剛性の高いコーンにすると、Mms(振動系)が重くなって能率が下がったり、中高域
  のどこかに強烈なピークが出たりする。こういうドライバは、ネットワークで苦労するから
  敬遠されます。一般的に、高級と言われるウーハは、このあたりの処理が実にうまい。
  適度な剛性と内部損失を両立させて、広いピストン領域とフラットな特性を獲得している。
  さらにすごい奴になると、分割振動のキャラクターを「艶」っぽい色づけとして聴かせる
  ものまであるんだな。まさに工芸品だね。
    [2] の「振動系の軽さとfsの低さ」ってのは矛盾するんじゃないの?

 
  そうなんだ。基本的に低い周波数までレンジを広げようと思ったら、低fsって条件は必須な
  んだけれど、振動系を重くしてfsを下げると、能率の低下に直結する。だからエッジやダン
  パーを柔らか〜くして、いわゆるハイコンプライアンス・タイプにするのが有効と言える。
  その最極端と言えるのが、ARの「アコースティック・エアサスペンション」に使われたような
  ドライバだ。これは吸音材をギチギチに充填した小型密閉箱にマウントすることを前提と
  したドライバで、普通の箱では使えない。1970年代に、日本のPioneerも単体売りの大型
  ウーハをこういう路線でラインナップしたことがあったんだが、「ふらふらコーン」と馬鹿に
  されて、結局、従来の方式に戻ってしまった。大型ウーハのハイコンプライアンス・タイプは、
  大振幅時にローリング現象を招いたり、ボイスコイルを長期安定支持することが難しい
  んだよ。Pioneerは1990年代の中頃からエッジレス・ドライバを謳い文句に製品を次々と
  出してきたけど、あれはやたらめったら支持系が硬かった。懲りたのかもしれない。
  ……まあ、とにかくこの問題は、適度なバランスを取るのが重要ってことだな。
    [3] の「振幅限界の大きさ」ってのは、大口径なら無視してもいいんじゃない?

 
  無視していいってことはないけど、それほど重視しなくてもいいのは確かだね。
  ドライバのギャップの高さとボイスコイルの高さで決まる、リニアな最大変位幅をXmax
  いうパラメータで表記するんだけど、3inchドライバの Xmax = 3mm と、10inchドライバの
  Xmax = 3mm じゃ、まったく意味合いが違うからな……

 
    
  音圧と振動板の関係ってのは、周波数の2乗に反比例して振幅が増大するものだから、
  大音量で低音を出そうと思ったら振動板を大きくするか、振動板の振幅を大きくするしか
  ない。仮に……まあ、こういうのは現実として製作不可能だけど、ものすごくXmaxが大きく
  て、振動板の物理的な変位許容幅が広い小口径ドライバがあったとしても、再生時に単位
  面積あたりの速度が上がりすぎて、風切り音や空気歪みが発生したりする。小型ダクトの
  バスレフと同じ現象が起こるわけだ。
    Xmax って言葉を見ると、Xmasに見えてしょうがないんだよ。

 
  [4] については説明するまでもないだろう。けど、せっかくだから話しとくか。
  安いドライバってのは磁石が貧弱で、フレームの作りも安っぽい。こういうのは派手な高調
  波歪みを発生したり、下手をすると特定の周波数で共振を起こし、異常音を出すものまで
  ある。無論、これは相当に粗悪なものに限るけどね。さすがに単体売りのドライバで、そう
  いうケースは少ないと思う。
  高級ウーハのフレームが頑丈なのは、ちゃんと理由があるんだ。振動板に対し駆動力が
  かかると、それと逆方向の反作用が発生する。これは磁気回路やフレームを励振させ、
  その振動がバッフルからエンクロージュアの側壁を伝って音を濁らせる。いわゆるスピー
  カーボックスの不要共振は、大部分がこれが原因だと言われている(三菱の論文にはモー
  ダル解析の計測データまで出ている)
  なにしろ空気伝搬ではなく機械的な固体振動伝搬なので、音の立ち上がりが速く、問題は
  深刻だ。富士通テンが自社製品の技術紹介ページで解説しているが、ECLIPSEみたいに
  フローティング構造にして、巨大なデッドマスを取り付けたり、フレームの剛性を高めたり
  するのは、みんなそのための対策なんだよ。

 
    
  それから、磁気回路(ギャップ付近の磁界)の対称性が保たれてないのも困る。この点は
  結構な価格帯のドライバでも解決できていないことが多い。大抵は振動板の押し出す方向
  が弱く、引っ込む方向に強くなってる。これが逆だったら、音の立ち上がりが改善されるは
  ずで、実際、過去に市販されたスピーカーシステムの中には、Isobarik(=タンデム駆動)
  でもないのにウーハの磁石を外側に向けてマウントしている製品まであった。優位性があ
  ると考えたんだろう。あと、交流磁束からくる渦電流のマイナーループだとか、磁気回路の
  材質による歪み、ボイスコイルの熱圧縮の非線形なんかは話が難しすぎるので省略する。
  ……まあ、そんなこんなで、高級ウーハはこれらの問題が高いレベルでクリアされてるん
  だな。だから、やたらと高い。別にボッタクってるわけじゃないのよ。

 
 
  ん〜、高級ウーハのご高説は、もうお腹一杯。
  で、今回、あえて安物を選択する理由とは?

 
  つまりだな……、こういう諸問題をウーハのポテンシャルに頼らず、実装面で解決できれ
  ば、わざわざ高級ドライバを使わなくてもいいんじゃないの、ってこと。マルチウェイの場
  合、正直、ミッドやツィータはアマチュアにはどうしようもない。安いドライバをどうこねくり
  回しても、高級品にはかなわないと思う。まあ、これは俺のつたない経験則にすぎないけ
  どね。世の中は広いから、あるいは安物からハイエンドなドライバをも凌駕する中高音を
  鳴らすすべを心得ている達人だっているかもしれないが、俺の技量では無理。ほとんど
  あきらめてます。ツィータの自作なんて、死ぬほど難しい上にゴミしか作ったことがない。
  でもウーハは違う。結局、低域(特に最低域)はエンクロージュアの出来・不出来が支配
  的だから、各自のテクニックがものを言う。いくら高級ドライバを使っても、箱やアンプが
  ショボかったらフルレンジの低音にさえ負けることがある。そのあたりが自作の妙味って
  言うか、面白さでもあるわけですが。
    じゃあ、具体的にどうするの? ドライバの改造とか、再現性の低い奴はやめてよ。
    とりあえず、Isobarik (アイソバリック)で行こうと思ってる。こういう(↓)のね。

 
   
    ってことは、最低、片チャンネルあたりウーハが2本いるってことだろ?
  倍の値段のウーハを1本だけ使う場合と比べて、メリットはあるわけ?

 
  あります。さっきの話で言えば、主に[4] の改善かな。実装法にもよるんだけど、対抗配置
  の逆相ドライブだとすれば(上の図で言えば左か真ん中)、高調波歪みが減ると言われて
  いる。俺もどちらかの取り付け方法で作ろうと考えてるんだが、これだと磁気回路の非対象
  性も改善されるんじゃないかな? 多分。
    多分って……、そんな無責任な。

 
  だってしょうがないじゃん。もちろん Isobarik もTLS以外では何度も試作してるよ?
  どんな音になるかも、おおよそつかんでる。海外のDIY系サイトでは、「チープなドライバを
  大変身させるマジック」と言う人もいるし、魅力的な技術であるのは確かなんだ。見かけ上、
  Vasが半分になって、箱が小型化できるってのは、むしろ福次的なメリットらしい。
  「歪みが改善されます!」というメーカー発表の特性データなら見たことあるけど、自分で
  計ったわけじゃないもの。今回は、できればそのあたりも定量的に測定してみたい。
  音質の官能評価も含めてね。
    要するに、TLS + Isobarik って組み合わせは試したことがないんだね?

 
  その通り。……とにかく、Isobarik については俺も分からないことが多いんだよ。シングル
  ドライバ(フルレンジ)のタンデム駆動は、1950年代に H.F.オルソン博士が自著で紹介した
  ことに始まって、のちに三菱(ダイアトーン)が詳細に解析して研究論文まで発表している。
  三菱式(?)の考え方は、「トライアンフ」のところで紹介したから省略するが、問題は海外
  主流の Isobarik の方だ。イマイチよく分からん。Dickason の CookBookでも、すごくおお
  ざっぱな解説しかない。ホントにこれで合ってるんか??? ……って疑問符つきまくりだ。
  世に出回ってるシミュレータにも、Isobarik の設計項目があったりするけど、どう考えても
  ドライバ間の空気の重さや距離差を考えてないし、あれじゃわざわざシミュレータを持ち
  出す意味がない。でもまあ、逆に言えばまだまだ未開拓ってことで、追求しがいのある方
  式ではある。サブウーハなら割とポピュラーな方式だしね。ほとんどバスレフだけどさ。
    TLSはPMCのイメージが強いけど、Isobarik はどこのメーカーが有力なの?
    ハイエンド機で有名なのはスイスのGoldmundの「Epilogue」だろう。「2」&「3」ね。
    ムンドのフルエピか。……標準価格2800万円? 一戸建てが買えるぞ。
  目ん玉飛び出て塩水に漬け込んでひ〜ひ〜タコ踊りしたくなるほど高いな!

 
  なんか痛々しいよ、その表現。いろんな意味で……
  最近だとイギリスのWilson Beneschが「Bishop」の後継の「Chimera」というモデルでIsobarikを
  採用しているが、やはり最有力はLINNじゃないか? かつてはズバリ直球の「Isobarik」って
  ネーミングモデルがあったくらいだし……、そのLINNにアクティブ・サブウーハの「MELODIK」
  ってのがあったんだが、あれの中身を見たことがある。12inchの貧弱なウーハが向かい合
  わせに水平にマウントされて、内蔵アンプはディップスイッチで出力インピーダンスが 0Ω 〜
  −2Ωまで可変できるようになってた。多分、抵抗検出型の負性インピーダンスアンプ
  んだろう。いわゆるヤマハのYST(AST…アクティブ・サーボ・テクノロジー)と同じタイプだね。
  今回はウーハをアクティブ化して、そのASTも採用する。ヤマハにしてもLINNにしても、どち
  らかと言えば非力なドライバを使ってるし、あれを見る限り Isobarik + AST という組み合わ
  せは、結構イイ線を行くんじゃないかと思うぞ。

 
 
  うーん……。こう言っちゃなんだが、YSTにはあまり好印象がないなあ。
  なんと言うか、あのボフンボフンする感じがどうも……

 
  ま、確かに……、ローエンドの製品はピュア・オーディオにはどうかな〜と感じるかもしれん。
  バスレフを思いっきり効かせてるからね。そもそもYSTは、負性インピーダンスアンプとバス
  レフの組み合わせによって特許を取得したもので、ぶっちゃけて言えば、「小型バスレフで
  こんなに低音が出るぜ! どうよ?!」ってシロモノなんだな。電流正帰還をかけて、見かけ
  上のアンプの出力インピーダンスを負の領域に持っていく技術ってのは、回路的には昔から
  あるものなんだ。ASTだからと言って、必ずしもバスレフを組み合わせる必然性はなく、密閉
  箱でもいいし、バックロードでもいいし、別に何を使ったって構わないんだよ。もちろんTLS
  だってOK。どんなスピーカーでも一種の速度型MFBがかかる。

 

  MFB(モーショナル・フィードバック)ってのは最近よく聞くなあ。何だかすごそうだ。
  でも電子回路の難しい話はよく分かんね。パスパス。
  結局その……なんだ、負性インピーダンスアンプ? それって何がすごいの?
    ……。アンプの「出力インピーダンス」って分かる?
    「入力インピーダンス」ってのは、カタログや取扱説明書に書いてあったぞ。
  えーっと、俺のアンプは何kΩだったかな?
    …………。じゃあ、ダンピングファクタは?
    ああ! それは分かる。とりあえず数値のデカい方がいいアンプなんだよね?

 
  ダンピングファクタってのは、負荷(スピーカー)のインピーダンスをアンプの出力インピーダ
  ンスで割ったパラメータだ。基本的にはアンプの(電磁)制動力を表す。「ダンピングファクタ
  がデカい」=「出力インピーダンスが小さい」と思えばいい。昔、サンスイの製品で、公称ダン
  ピングファクタ=150のパワーアンプの出力インピーダンスを計ったことがあるんだが、見事
  に0.1Ω未満だった。まあ、カタログスペックに偽りなしといったところかな。
    ふむふむ。それで?
    出力インピーダンスが0(ゼロ)なら、ダンピングファクタは無限大ってことになる。
  さらにそれがマイナスの領域に入れば、見かけ上、スピーカーの電磁制動力がもともとの
  スペックを越えて強化される。
    つまり?
    つまり、ドライバのQesが下がるんだよ。Qtsも当然小さくなる。
  具体例を挙げれば、Qts = 0.49 のAltec CF404-8Aに、DCRの半分程度の -3Ωの負性
  インピーダンスアンプを繋いだとしたら、Qts = 0.3 くらいになっちゃうの。
    Qts = 0.3 って言うと、大体、FostexのFE108EΣクラスの強さか。
    そんな感じだね。バックロードもゴリゴリ鳴らせるよ。
    それってさあ……、なんか淡々と説明してくれちゃってるけど、ひょっとして
  マジですごくね? ASTって最強かァァァ!? 

 
  最強かどうかはともかく、ウーハの駆動に限って言えば、有力な手段なのは間違いない
  よね。もちろん、万能の技術であるなら世の中のパワーアンプがすべてASTになっている
  はずで、そうなっていないのは、ちゃんと欠点もあるからだ。ASTパワーアンプは俺も何度
  か作っていて、小規模なものでも物量投下型のハイパワーアンプを凌ぐ駆動力・制動力が
  得られることを確認している。物量投下したASTアンプならさらにすごいことになるんだが、
  ASTがもともと内包する欠点は解消できなかった。やっぱり中高域が弱いんだよ……



   かなり気合いを入れて作ったものの、中高域がカサカサして今一つだった自作ASTアンプ 


  
  ASTの詳細については、ここで話すと長くなるし、すでに技術系オーディオ雑誌や他のDIY系
  サイトで語り尽くされた観があるので省略させてもらう。どっちにしても、実装面で解説しきゃ
  ならないこともあるしね。興味がある人は、とりあえずGoogleで電流正帰還と検索をかけて
  みると幸せになれるかもしれません。

 
 
  やれやれ。うんちくはやっと終わりか。説明なげーよ。
  しかも結局、ドライバが決まってないぞ。ちゃんと話をまとめろよ?
    まかせてくれ。ここまで長々としゃべってきたが、俺が言いたいのはただ一言。
  スピーカー作るより「吉宗」打つ方が(・∀・)イイ!! 
  八代将軍ジャキーン!! 
    話ぐてぐて。先が思いやられます。

(2006. 6. 9)       



空芯コイルなみに長〜い試行錯誤のはじまり… Chapter.2


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