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むむむ。コーンが白黒だとか、金メッキ端子に意味はないと言いたいんだな?
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[1] は大体分かるよね。やっぱり高品位な再生音を求めるなら、ドライバのピストンモー
ション域だけを使いたいわけだ。けど、これは案外難しい。ごくごく標準的なドライバだと、
6.5inchクラスなら800Hz前後、15inchなら350Hzくらいから分割振動が始まる。もちろん、
これは振動板の材質にもよるんだけどね。ただ、ピストンモーション域を広げようとして、
やたら剛性の高いコーンにすると、Mms(振動系)が重くなって能率が下がったり、中高域
のどこかに強烈なピークが出たりする。こういうドライバは、ネットワークで苦労するから
敬遠されます。一般的に、高級と言われるウーハは、このあたりの処理が実にうまい。
適度な剛性と内部損失を両立させて、広いピストン領域とフラットな特性を獲得している。
さらにすごい奴になると、分割振動のキャラクターを「艶」っぽい色づけとして聴かせる
ものまであるんだな。まさに工芸品だね。
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[2] の「振動系の軽さとfsの低さ」ってのは矛盾するんじゃないの?
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そうなんだ。基本的に低い周波数までレンジを広げようと思ったら、低fsって条件は必須な
んだけれど、振動系を重くしてfsを下げると、能率の低下に直結する。だからエッジやダン
パーを柔らか〜くして、いわゆるハイコンプライアンス・タイプにするのが有効と言える。
その最極端と言えるのが、ARの「アコースティック・エアサスペンション」に使われたような
ドライバだ。これは吸音材をギチギチに充填した小型密閉箱にマウントすることを前提と
したドライバで、普通の箱では使えない。1970年代に、日本のPioneerも単体売りの大型
ウーハをこういう路線でラインナップしたことがあったんだが、「ふらふらコーン」と馬鹿に
されて、結局、従来の方式に戻ってしまった。大型ウーハのハイコンプライアンス・タイプは、
大振幅時にローリング現象を招いたり、ボイスコイルを長期安定支持することが難しい
んだよ。Pioneerは1990年代の中頃からエッジレス・ドライバを謳い文句に製品を次々と
出してきたけど、あれはやたらめったら支持系が硬かった。懲りたのかもしれない。
……まあ、とにかくこの問題は、適度なバランスを取るのが重要ってことだな。
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[3] の「振幅限界の大きさ」ってのは、大口径なら無視してもいいんじゃない?
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無視していいってことはないけど、それほど重視しなくてもいいのは確かだね。
ドライバのギャップの高さとボイスコイルの高さで決まる、リニアな最大変位幅をXmaxと
いうパラメータで表記するんだけど、3inchドライバの Xmax = 3mm と、10inchドライバの
Xmax = 3mm じゃ、まったく意味合いが違うからな……

音圧と振動板の関係ってのは、周波数の2乗に反比例して振幅が増大するものだから、
大音量で低音を出そうと思ったら振動板を大きくするか、振動板の振幅を大きくするしか
ない。仮に……まあ、こういうのは現実として製作不可能だけど、ものすごくXmaxが大きく
て、振動板の物理的な変位許容幅が広い小口径ドライバがあったとしても、再生時に単位
面積あたりの速度が上がりすぎて、風切り音や空気歪みが発生したりする。小型ダクトの
バスレフと同じ現象が起こるわけだ。
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Xmax って言葉を見ると、Xmasに見えてしょうがないんだよ。
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[4] については説明するまでもないだろう。けど、せっかくだから話しとくか。
安いドライバってのは磁石が貧弱で、フレームの作りも安っぽい。こういうのは派手な高調
波歪みを発生したり、下手をすると特定の周波数で共振を起こし、異常音を出すものまで
ある。無論、これは相当に粗悪なものに限るけどね。さすがに単体売りのドライバで、そう
いうケースは少ないと思う。
高級ウーハのフレームが頑丈なのは、ちゃんと理由があるんだ。振動板に対し駆動力が
かかると、それと逆方向の反作用が発生する。これは磁気回路やフレームを励振させ、
その振動がバッフルからエンクロージュアの側壁を伝って音を濁らせる。いわゆるスピー
カーボックスの不要共振は、大部分がこれが原因だと言われている(三菱の論文にはモー
ダル解析の計測データまで出ている)
なにしろ空気伝搬ではなく機械的な固体振動伝搬なので、音の立ち上がりが速く、問題は
深刻だ。富士通テンが自社製品の技術紹介ページで解説しているが、ECLIPSEみたいに
フローティング構造にして、巨大なデッドマスを取り付けたり、フレームの剛性を高めたり
するのは、みんなそのための対策なんだよ。

それから、磁気回路(ギャップ付近の磁界)の対称性が保たれてないのも困る。この点は
結構な価格帯のドライバでも解決できていないことが多い。大抵は振動板の押し出す方向
が弱く、引っ込む方向に強くなってる。これが逆だったら、音の立ち上がりが改善されるは
ずで、実際、過去に市販されたスピーカーシステムの中には、Isobarik(=タンデム駆動)
でもないのにウーハの磁石を外側に向けてマウントしている製品まであった。優位性があ
ると考えたんだろう。あと、交流磁束からくる渦電流のマイナーループだとか、磁気回路の
材質による歪み、ボイスコイルの熱圧縮の非線形なんかは話が難しすぎるので省略する。
……まあ、そんなこんなで、高級ウーハはこれらの問題が高いレベルでクリアされてるん
だな。だから、やたらと高い。別にボッタクってるわけじゃないのよ。
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ん〜、高級ウーハのご高説は、もうお腹一杯。
で、今回、あえて安物を選択する理由とは?
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つまりだな……、こういう諸問題をウーハのポテンシャルに頼らず、実装面で解決できれ
ば、わざわざ高級ドライバを使わなくてもいいんじゃないの、ってこと。マルチウェイの場
合、正直、ミッドやツィータはアマチュアにはどうしようもない。安いドライバをどうこねくり
回しても、高級品にはかなわないと思う。まあ、これは俺のつたない経験則にすぎないけ
どね。世の中は広いから、あるいは安物からハイエンドなドライバをも凌駕する中高音を
鳴らすすべを心得ている達人だっているかもしれないが、俺の技量では無理。ほとんど
あきらめてます。ツィータの自作なんて、死ぬほど難しい上にゴミしか作ったことがない。
でもウーハは違う。結局、低域(特に最低域)はエンクロージュアの出来・不出来が支配
的だから、各自のテクニックがものを言う。いくら高級ドライバを使っても、箱やアンプが
ショボかったらフルレンジの低音にさえ負けることがある。そのあたりが自作の妙味って
言うか、面白さでもあるわけですが。
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じゃあ、具体的にどうするの? ドライバの改造とか、再現性の低い奴はやめてよ。
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とりあえず、Isobarik (アイソバリック)で行こうと思ってる。こういう(↓)のね。

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ってことは、最低、片チャンネルあたりウーハが2本いるってことだろ?
倍の値段のウーハを1本だけ使う場合と比べて、メリットはあるわけ?
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あります。さっきの話で言えば、主に[4] の改善かな。実装法にもよるんだけど、対抗配置
の逆相ドライブだとすれば(上の図で言えば左か真ん中)、高調波歪みが減ると言われて
いる。俺もどちらかの取り付け方法で作ろうと考えてるんだが、これだと磁気回路の非対象
性も改善されるんじゃないかな? 多分。
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多分って……、そんな無責任な。
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だってしょうがないじゃん。もちろん Isobarik もTLS以外では何度も試作してるよ?
どんな音になるかも、おおよそつかんでる。海外のDIY系サイトでは、「チープなドライバを
大変身させるマジック」と言う人もいるし、魅力的な技術であるのは確かなんだ。見かけ上、
Vasが半分になって、箱が小型化できるってのは、むしろ福次的なメリットらしい。
「歪みが改善されます!」というメーカー発表の特性データなら見たことあるけど、自分で
計ったわけじゃないもの。今回は、できればそのあたりも定量的に測定してみたい。
音質の官能評価も含めてね。
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要するに、TLS + Isobarik って組み合わせは試したことがないんだね?
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その通り。……とにかく、Isobarik については俺も分からないことが多いんだよ。シングル
ドライバ(フルレンジ)のタンデム駆動は、1950年代に H.F.オルソン博士が自著で紹介した
ことに始まって、のちに三菱(ダイアトーン)が詳細に解析して研究論文まで発表している。
三菱式(?)の考え方は、「トライアンフ」のところで紹介したから省略するが、問題は海外
主流の Isobarik の方だ。イマイチよく分からん。Dickason の CookBookでも、すごくおお
ざっぱな解説しかない。ホントにこれで合ってるんか??? ……って疑問符つきまくりだ。
世に出回ってるシミュレータにも、Isobarik の設計項目があったりするけど、どう考えても
ドライバ間の空気の重さや距離差を考えてないし、あれじゃわざわざシミュレータを持ち
出す意味がない。でもまあ、逆に言えばまだまだ未開拓ってことで、追求しがいのある方
式ではある。サブウーハなら割とポピュラーな方式だしね。ほとんどバスレフだけどさ。
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TLSはPMCのイメージが強いけど、Isobarik はどこのメーカーが有力なの?
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ハイエンド機で有名なのはスイスのGoldmundの「Epilogue」だろう。「2」&「3」ね。
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ムンドのフルエピか。……標準価格2800万円? 一戸建てが買えるぞ。
目ん玉飛び出て塩水に漬け込んでひ〜ひ〜タコ踊りしたくなるほど高いな!
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なんか痛々しいよ、その表現。いろんな意味で……
最近だとイギリスのWilson Beneschが「Bishop」の後継の「Chimera」というモデルでIsobarikを
採用しているが、やはり最有力はLINNじゃないか? かつてはズバリ直球の「Isobarik」って
ネーミングモデルがあったくらいだし……、そのLINNにアクティブ・サブウーハの「MELODIK」
ってのがあったんだが、あれの中身を見たことがある。12inchの貧弱なウーハが向かい合
わせに水平にマウントされて、内蔵アンプはディップスイッチで出力インピーダンスが 0Ω 〜
−2Ωまで可変できるようになってた。多分、抵抗検出型の負性インピーダンスアンプな
んだろう。いわゆるヤマハのYST(AST…アクティブ・サーボ・テクノロジー)と同じタイプだね。
今回はウーハをアクティブ化して、そのASTも採用する。ヤマハにしてもLINNにしても、どち
らかと言えば非力なドライバを使ってるし、あれを見る限り Isobarik + AST という組み合わ
せは、結構イイ線を行くんじゃないかと思うぞ。
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うーん……。こう言っちゃなんだが、YSTにはあまり好印象がないなあ。
なんと言うか、あのボフンボフンする感じがどうも……
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ま、確かに……、ローエンドの製品はピュア・オーディオにはどうかな〜と感じるかもしれん。
バスレフを思いっきり効かせてるからね。そもそもYSTは、負性インピーダンスアンプとバス
レフの組み合わせによって特許を取得したもので、ぶっちゃけて言えば、「小型バスレフで
こんなに低音が出るぜ! どうよ?!」ってシロモノなんだな。電流正帰還をかけて、見かけ
上のアンプの出力インピーダンスを負の領域に持っていく技術ってのは、回路的には昔から
あるものなんだ。ASTだからと言って、必ずしもバスレフを組み合わせる必然性はなく、密閉
箱でもいいし、バックロードでもいいし、別に何を使ったって構わないんだよ。もちろんTLS
だってOK。どんなスピーカーでも一種の速度型MFBがかかる。
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MFB(モーショナル・フィードバック)ってのは最近よく聞くなあ。何だかすごそうだ。
でも電子回路の難しい話はよく分かんね。パスパス。
結局その……なんだ、負性インピーダンスアンプ? それって何がすごいの?
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……。アンプの「出力インピーダンス」って分かる?
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「入力インピーダンス」ってのは、カタログや取扱説明書に書いてあったぞ。
えーっと、俺のアンプは何kΩだったかな?
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…………。じゃあ、ダンピングファクタは?
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ああ! それは分かる。とりあえず数値のデカい方がいいアンプなんだよね?
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ダンピングファクタってのは、負荷(スピーカー)のインピーダンスをアンプの出力インピーダ
ンスで割ったパラメータだ。基本的にはアンプの(電磁)制動力を表す。「ダンピングファクタ
がデカい」=「出力インピーダンスが小さい」と思えばいい。昔、サンスイの製品で、公称ダン
ピングファクタ=150のパワーアンプの出力インピーダンスを計ったことがあるんだが、見事
に0.1Ω未満だった。まあ、カタログスペックに偽りなしといったところかな。
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ふむふむ。それで?
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出力インピーダンスが0(ゼロ)なら、ダンピングファクタは無限大ってことになる。
さらにそれがマイナスの領域に入れば、見かけ上、スピーカーの電磁制動力がもともとの
スペックを越えて強化される。
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つまり?
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つまり、ドライバのQesが下がるんだよ。Qtsも当然小さくなる。
具体例を挙げれば、Qts = 0.49 のAltec CF404-8Aに、DCRの半分程度の -3Ωの負性
インピーダンスアンプを繋いだとしたら、Qts = 0.3 くらいになっちゃうの。
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Qts = 0.3 って言うと、大体、FostexのFE108EΣクラスの強さか。
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そんな感じだね。バックロードもゴリゴリ鳴らせるよ。
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それってさあ……、なんか淡々と説明してくれちゃってるけど、ひょっとして
マジですごくね? ASTって最強かァァァ!?
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最強かどうかはともかく、ウーハの駆動に限って言えば、有力な手段なのは間違いない
よね。もちろん、万能の技術であるなら世の中のパワーアンプがすべてASTになっている
はずで、そうなっていないのは、ちゃんと欠点もあるからだ。ASTパワーアンプは俺も何度
か作っていて、小規模なものでも物量投下型のハイパワーアンプを凌ぐ駆動力・制動力が
得られることを確認している。物量投下したASTアンプならさらにすごいことになるんだが、
ASTがもともと内包する欠点は解消できなかった。やっぱり中高域が弱いんだよ……
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