タイタニック号(イギリス)


TITANIC

無数の窓と照明、手すり、膨大な食料、巨大な蒸気エンジンや煙突・・・ このような豪華客船の建造は、ひとつの都市の建設に匹敵する大事業だと思います。 しかも19世紀末から20世紀初頭には、何隻もの豪華客船が大西洋を往復していました。 ニューヨーク港では巨船が居並ぶ壮大な風景が広がっていたことでしょう。

当時の乗客は、政治・経済的に行き詰まっていたヨーロッパから新世界アメリカまで 片道切符で押し渡る膨大な数の移民と、ビジネスや旅行で往復する少数の富豪たち。 この大西洋航路には多くの船会社や造船所が参入し、すぐに集客競争が激しくなりました。 そこで各社とも生き残るため”より速く、より大きく、より快適な”巨船を投入したのです。

1912年に竣工したタイタニックは、処女航海で氷山と衝突して失われました。 世界最大かつ最新装備であるという船の安全性を過信するあまり、 氷山の存在を知りながら、夜間に危険な海域へ突き進んだのです。 不運なことに自慢の安全装置は当たり所が悪くて役に立ちませんでした。 この人的ミスにより1,500人以上の乗員乗客が犠牲になりました。 事故後、無線通信による氷山位置の通報、危険海域の迂回、十分な救命ボートの搭載など、 予防措置が講じられました。

2年後の1914年に勃発した第一次世界大戦は、飛行船や飛行機を急速に成長させます。 ヨーロッパ〜アメリカ間の旅客輸送における新たなライバルとの競争は1950年代まで続き、 大西洋の豪華客船は定期運航から撤退することになりました。

(模型:1/350 タイタニック グンゼ 製作:菊地秀之)


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Hideyuki Kikuchi (gotha@ops.dti.ne.jp)