海防艦 鵜来型(日本海軍)
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海防艦と海上護衛戦 海防艦は貨物船やタンカーの護衛を専門とする小さな軍艦です。 商船を狙う潜水艦を制圧するためソナーと爆雷を装備し、 その他の機能は最低限に抑え、量産に向く直線的な構造をしています。 戦前には全く軽視されていた海防艦は、戦争の推移に伴い最優先で量産され、 終戦までに合計172隻も完成しました。 日米開戦の背景には、日中戦争と国際社会の経済制裁による国内の資源不足を解決するため、 東南アジアの豊富な資源を武力で奪い、国力を回復させる目論みがありました。 日本は大軍を送り込んで東南アジアの資源地帯を占領し、商船で資源輸送を始めます。 一方、アメリカの戦略は、経済制裁に引き続き、海上封鎖で日本経済を破壊することでした。 日本の存亡は往復10,000kmにおよぶ資源輸送の成否にかかっていましたが、 日本の戦略では商船の護衛を考えていなかったため、単独航行の商船はアメリカ潜水艦の好餌となります。 ようやく戦争中盤から海防艦を量産して商船を護衛しましたが、もはや手遅れでした。 海防艦も完成後すぐ撃沈されて戦力不足となり、商船を十分に守りきれませんでした。 敗戦直前、ついに主力艦や航空機は燃料不足で行動不能となり、国民は飢餓に苦しみます。 アメリカ軍と最後まで戦っていたのは必死に資源輸送を試みる商船と海防艦だけでした。 終戦までに海防艦の60%、商船の80%が撃沈され、商船乗組員の死亡率は陸海軍兵士を上回る46%に達しました。 明治・大正・昭和の60年間で築き上げた世界第3位の商船隊は、わずか4年弱の戦争で消滅しました。 日本の生命線である長い資源輸送ルートは守りにくく、そのために失う犠牲は極めて大きいことを物語っています。
海防艦 鵜来型
模型と背景はCG合成です。
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Hideyuki Kikuchi (gotha@ops.dti.ne.jp)
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