「鹿児島県知事選挙を振り返って−大きい民主党の責任・建設反対も候補出さず」                木村 朗

投票率は過去最低だった前回の37・66%を上回ったとはいえ、40・62%と予想通り低かった。須賀龍郎氏に複数政党が相乗りし、選択肢が限られた選挙で、(基礎票から推測すれば)結果もほとんど目に見えていた。衆院選など相次ぐ選挙で、有権者に疲れがあったことも重なり、全体的に盛り上がりに欠けた。

より根本的には有権者の政治離れもあったと思う。議会制民主主義の形がい化を克服するためにも、今回の知事選を、有権者が主体的に政治に参加する機会にして欲しかった。(共産党以外の)政党が選択肢を提示できなかったことは批判されるべきだが、有権者の意識にも問題があるといわざるを得ない。

最大の争点とされた人工島建設(問題)は財政や情報公開の在り方など県政のあらゆる問題が凝縮された象徴的な争点だった。だが、建設の是非を問う住民投票条例の制定運動を行った団体などの動きは低調で、盛り上げようという意気込みは感じられなかった。

最大の争点として取り上げるのなら、反対を打ち出した政党や団体が事前に調整して統一候補を出すことが望ましかった。そういう意味では,国政の場で最大の野党である民主党が人工島には反対の姿勢を見せながらも、対立候補を出さずに須賀氏支援に回った責任は大きい。そうした中で、杉野氏が鹿児島市で善戦したことは、人工島に反対する無党派層が動いたことを示しているのではないか。

須賀氏は「開かれた県政」を目指したいとしているが、これまでのように情報公開や住民投票に後ろ向きの姿勢のままでは実現は無理だ。根本的な姿勢の転換が求められる。

政策の決定過程でインターネットを使って県民から意見を募るなど、いろいろなアイデアで住民参加型県政を実現してほしい。また、これからの地方分権時代においては国や企業に振り回されるのではなく、地域の特性を生かしたユニークな政策も必要になる。

全有権者に対する須賀氏の得票率が29%にとどまったことを見れば、一期目の実績がすべて承認されたわけではないことを認識すべきだ。知事は都道府県においては米国大統領よりも権限が大きいといわれている。二期目では、一期目に出された須賀県政への異論を踏まえながら、より透明な県政を強いイニシアチブで行うことを望みたい。

(政治学=談、『朝日新聞』2000718日付掲載を一部修正)