人その研究 ユーゴ=ソ連紛争探る〜 
              木村 朗助教授(鹿児島大学法文学部) 
                  
                  『南日本新聞』1990年9月3日付朝刊
 
   ユーゴ=ソ連関係を中心とする社会主義的国際関係論を主要テーマとする木村朗助教授(三十五)=福岡県出身、九州大学法学部卒業=。特に中ソ対立に代表されるような社会主義諸国間および諸党間の矛盾・対立の問題に関心を持つ。
 現在の課題は1948年に発生したユーゴ=ソ連紛争を歴史的に解明すること。第二次大戦後、故チトー大統領に率いられたユーゴスラビアは、自主的外交政策を積極的に展開し、ソ連との関係では平等な立場を一貫して求めた。一方国内発展のあり方でもソ連の経験をそのまま導入せず、ユーゴ独自の方法をとった。
 その結果、ソ連ブロックから閉め出される結果となった。それ以来ユーゴは、「ソ連型社会主義」を徹底的に再検討し、自主管理型社会主義にたどりつく。「国土を開放し自力で革命を成し遂げたところが、ユーゴが他の社会主義国と決定的に異なる点であった」
 外向的にはブロック政治を離れ非同盟運動の指導的割を担うことになった。「このようにユーゴは『東西』『南北』の接点に位置したユニークな存在。ユーゴ=ソ連紛争が社会主義国同士の最初の対立であったのは単なる偶然ではない」 ソ連・東欧改革の波は、ユーゴにも及んでいる。同国を覆う経済的危機と民族対立を心配そうなまなざしで見つめる。「やはり愛着がありますから」。今秋三年ぶりにユーゴを訪れる予定。
 今後、研究の重点を平和問題に徐々に移していく考え。中でも非核地帯化構想、非核自治体運動などに興味を示す。「アジア・太平洋の軍縮問題、南北問題の解決に向けて日本が果たしうる役割とは何か、を今こそ皆で真剣に考える時期ではないか」
 趣味はスポーツ。ソフトボールではピッチャー専門で、毎年行う学科のゼミ対抗ソフトボール大会を楽しみにしている。