<NATO空爆とコソボ難民問題を考える市民の集い−かごしま平和ネットワーク主催>

 2ヶ月以上もたった今日でも続くNATOによるユーゴ空爆。コソボにおけるアルバニア系住民に対するセルビア当局の弾圧を止めさせることを目的とした「人道的介入」だとされています。しかし、国連決議なしの空爆は、はたして正当化できるのでしょうか? 空爆の結果、コソボでのアルバニア人弾圧はかえって強まり75万人以上の難民が隣接諸国・地域にあふれ出しています。そして、容赦ない空爆はたび重なる誤爆もあって、セルビアの民間人やアルバニア系難民にさえ数多くの死傷者を出すにいたっています。このコソボ紛争に、はたして解決の展望はあるのでしょうか? 日本政府やわたしたちの対応はどうあるべきなのでしょうか? また、今問題となっている「周辺事態」との関連は?
 わたしたちかごしま平和ネットワークは、今回、コソボ難民問題の歴史的背景と現状、NATO空爆をはじめとした国際社会の対応と今後の展望など様々な問題や皆さんがこれまでの「ユーゴ空爆」関連の報道で抱いた素朴な疑問・質問を、ゲストを交えて皆さんと一緒にとことん考えてみたいと思います。どうぞ皆さん、気軽に参加してみてください。
 なお、この市民の集いで集まったお金は、チャリティ募金として、「難民を助ける会」を通じてコソボ難民援助のための活動資金とさせていただくことをお断りしておきます。

期日:5月29日(土曜日)午後1時半 開場、午後2時 開始
場所:鹿児島県文化センター(天文館中央公園横)3階会議室
参加料:資料代カンパ 1,000円(高校生 500円)
【報告者】
・ ファトス・ケルチク氏(アルバニア人、九州大学留学生)
・ペイヨヴィッチ・チャスラヴ氏(モンテネグロ人、九大法助教授)
・ 中留 哲三氏(第1回アルバニア訪問団日本代表)
・ 木村 朗(鹿児島大学法文学部、平和ネットワーク事務局メンバー)
【ビデオ上映の予定あり!】
※なお、募金へのご協力は、郵便局振り込みで「鹿児島平和ネットワーク、01790−3−79365」に「コソボ募金」と明記してお願いします。
【後援】南日本新聞社、鹿児島放送、JSA鹿児島支部・鹿大教職組、その他
※ 問い合わせ先(鹿児島平和ネットワーク事務局);木村 朗(099)285―7654、続 博治(0995)63―1700


「NATO空爆とコソボ難民問題を考える」
木村 朗(鹿児島大学法文学部)

T コソボ紛争の背景と対立の構図
(1) 歴史的背景
・ 東西の十字路、「支配―被支配」関係の入れ替わり

・ 第二次大戦中の「兄弟殺し」、チトー時代における諸民族の平和的共存

(2) 民族対立の構図 ・ 「複合的危機」から「民族・宗教対立」への転換

・ 「コソボの中のセルビア人」⇔「セルビアの中のアルバニア人」

・ 「上からの煽動」と「下からの突き上げ」の結合による民族主義の高揚(権力によるメディア支配と教育支配の恐ろしさ!)

・ 自治権の獲得か、独立の実現か?、平和交渉か武力闘争か?

・ コソボ解放軍の「テロ」とセルビアの「民族浄化」の評価?

U 国際社会の対応とその特徴および問題点
(1) 平和的交渉から空爆開始へ
・ なぜ交渉は決裂したのか?

・ なぜNATOは空爆に踏み切ったのか?

(2) 「人道的介入」の正当性をめぐって
・ 「人道的介入権」は国際法上の権利としては未確立!

・ 国連決議なしの軍事介入は違法(「国連憲章」への違反)?

・ 「主権」と「人権」の衝突、どちらを優先するか?

・ 軍事介入の「恣意的適用」=「二重の基準」?

(3) NATO新戦略と「周辺事態」
・ コソボ紛争は「ヨーロッパの周辺事態」⇒独・伊と日の比較

・ NATOの(冷戦後の)生き残り戦略=国連決議を欠いた域外の地域・民族紛争への軍事介入を正当化

(4) 「正義の戦争」の特徴と問題点
@ 国連の不在、NATOの戦争
A メディア戦争
B 新兵器の実験
C 莫大な戦費
D 目的と効果の不対応=「(出口)戦略無しの戦争」、アルバニア系難民の大量流出、セルビア側の徹底抗戦(ミロシェビッチ政権の政治基盤の強化)
E 目的と手段のエスカレート→「アルバニア系住民の保護・救済」から「ミロシェビッチ政権の打倒」へ

V コソボ難民問題の現状と周辺諸国への影響
@  アルバニア、 A マケドニア、 B モンテネグロ、 C ボスニア、
D ギリシャ、E ハンガりー、F ブルがリア、G ロシア、H 中国

W 日本政府の対応と課題
(1)資金援助(難民救済、隣接諸国支援)

(2)人的貢献(自衛隊医療部隊派遣の検討、国連PKOへの参加?)

(3) 政治的立場(「理解」表明⇒第三者として和解の仲介を!)

X コソボ問題の今後の展望
・ NATOの「完全な勝利」もセルビアの「民族浄化の完成」も不可能!
               ↓
 「勝者無き戦争」=政治交渉による解決が残された唯一の選択肢!