【平和問題ゼミナール】
冷戦終結後の日米安全保障体制を考える
−日米安保再定義から新ガイドラインを中心に−
(1)
共産主義の防壁」にしたいアメリカの思惑→中国の国共内戦の情勢がもたらす切迫感
→これらと引き換えに、在日米軍は日本以外の「極東地域」の防衛にも任ずることになる。
(2)
アメリカとの妥結(1958年9月〜1960年1月6日)(3)
新条約への疑念・社会党など革新団体の反対
・多くの国民の不安・・・・・・日本が戦前並みの軍事国家に復活する道につながっているのではないか
(4)
強行可決警官隊
500人を衆院に配置
U冷戦の終結に伴う日米安保条約再定義
12.3マルタ会談(ブッシュ=ゴルバチョフ)→冷戦の終結
8
8
.29 政府の中東貢献策決定(多国籍軍に10億ドル支援、9.7に追加10億ドル)10.16
国連平和協力法案が国会に提出(11.8廃案決定)1
1
.25 時限特例による湾岸戦争への自衛隊機派遣を決定(停戦で実現はしない)2
.28 湾岸戦争終結4
.26 ペルシャ湾の機雷除去のため自衛隊掃海部隊が出発(〜10月30日)9
.29 国連平和維持活動(PKO)協力法案を提出(12.21継続審議)1992
年6
.15 PKO協力法、国際緊急援助隊派遣法改正成立9
.25 カンボジアPKO参加の自衛隊第一陣現地入り□
1993年5
5
.11 国連モザンビークPKOに参加の自衛隊第一陣出発□
1994年2
3
.3 IAEAが北朝鮮の申告済み核関連施設の査察を開始7
.1 村山首相、クリントン大統領に日米安保体制堅持を表明7
.20 村山首相、衆院本会議で「自衛隊は合憲」の公式答弁7
.21 村山首相、「非武装中立は政策的な役割を終えた」と言明9
.3 社会党臨時党大会で「安保廃棄」「自衛隊違憲」の放棄を正式決定□
1995年9
□
1996年2
4
.14 橋本・ペリー国防長官会談で日米防衛協力ガイドラインの見直しに合意4
.16 橋本・クリントン共同声明「21世紀に向けての同盟」発表□
1997年5
6
.7 日米防衛協力小委員会がガイドライン見直しの中間取りまとめを決定6
.11 ガイドライン見直しに対する政府統一見解(有事法制検討など)
1、冷戦後の日米関係
日米両国においても、国民レベルではその安保の必要性を疑問視する声が出始めていた。
アメリカ人の
26%が日米関係は「極めて良好」或いは「良好」と回答(
1986年には、50%以上がこう回答していた)日本人でも、日米関係が「友好的」と回答した人は
になった。
(3)1995
年に第二次大戦終結50周年を迎える戦争を振り返り、色々な議論が行われる
→国民感情によって悪影響
例:原爆のきのこ雲記念切手を郵便公社が発行決定(結局は中止)
→「歴史認識」のギャップ
(1)
国防総省が感じていたアメリカ国民の孤立主義への傾斜に対する危機感いざ有事の際に、日米同盟が機能するのかという懸念
(2)
国防総省のナイ国防次官補の提唱により、「安保対話」が始まる。→
NSC(国家安全保障会議)と国務省の政治・安全保障やアジア担当者の積極的な支持。
1995
年2月27日に発表1990
年4月と92年7月の「アジア・太平洋の戦略的枠組み(EASI報告)」では、冷戦終に伴う軍事力の削減計画と実施状況に焦点をあてていた。
ぎくしゃくした日米関係に配慮
aこの地域への商業的アクセスと通航の自由の確保
b地域的な覇権を追求する勢力の台頭を防止
c安全保障に関する国家間の連帯が少なく、緊張や不安定は将来とも存続する
→この地域は歴史的ないきさつをひきずっていると指摘
dアメリカ以外の国がこの地域でイニシアチブをとることは、妥当とは言えない。
→アメリカのみならず友好国や同盟国の利益にも合致しないと指摘
→
eアメリカの、誠実な仲介者の役割を果たす能力と信頼と公平性
f約
10万人規模の兵力の展開の必要性
3、冷戦終結後の東アジア
(1)
北朝鮮核開発疑惑(1994年3月)キム・イルソン主席「私たちに秘密はない。あるとすれば軍事機密だけだ。それはどんな国でも秘密になっている。」
→アメリカは、制裁に踏み切るかまえ
→ペリー国防長官来日、朝鮮半島有事の際の防衛協力を日本に求める
→昭和
53年ガイドラインは、日本有事に重点をおいたもの、防衛庁はそれまで、検討を先送りしてきた極東有事に対する対応を迫られることになった。→自衛隊もこのころ、在日米軍から具体的協力を求められていた。
@アメリカが要求した極東有事の際の協力事項
a、物資の補給(食料や燃料)
b、武器弾薬の輸送
c、民間空港の使用
d、自衛隊機による情報収集
e、機雷の掃海
→在日アメリカ軍から要求された項目は、
1900にものぼる(より具体的な内容)→その大体は、新ガイドライン最終報告に盛り込まれることになる。
日本は、アメリカ軍に具体的な答えを出さないままで終わった。
(2)
台湾海域での中国の軍事演習(与那国島からわずか60kmの距離)(1996年3月)→空母インディペンデンス(横須賀を事実上の母港とする)を台湾海峡に派遣して中国を牽制。
政府は、防衛庁に対して情報収集の強化を支持
防衛庁は、海上自衛隊、陸上自衛隊に支持。自衛隊は対潜哨戒機を使い、通常の2倍以上の規模で情報収集を実施、さらに随時米軍と情報交換をしていた。
防衛庁は、
1995年11月に、19年ぶりに防衛計画の大綱を見直した。そこでは、これまでの日本有事から日本周辺有事の際の防衛協力を初めて打ち出していた。(3)1996
年4月の日米安保共同宣言ガイドライン見直しの合意がとられた。
「日米関係はこれまで以上に良好で強いものとなる」(クリントン大統領)
「日米協力というものについてわれわれは出来ること出来ないことの言及はきちんとやっておかなければならない。」(橋本総理)
V日本とアメリカの防衛協力の指針(ガイドライン)
(1)
グレーゾーンを検討するのではなく、過去20年間議論していないところについて、出来ること出来ないことを明確化したつもりだ。(秋山昌廣防衛事務次官)(2)
新ガイドラインは60年安保改定からの、アジア太平洋地域における戦略上重要な新機軸である(キャンベル国防次官補 代理)→湾岸戦争以降、たびたび要請されてきた協力を具体化。
(3)
同盟関係にある日本とアメリカが、有事の際にどういった協力が出来るのかを明確化(1997年9月23日日米安全保障協議委員会)。
@19年ぶりの改定
A協力は、民間が有する能力を適切に用いる。
3、周辺有事の際に行われる日本の米軍に対する協力内容
日本が直接攻撃を受けた場合どういったことを行うのかがこれまでのガイドラインでの問題。新しいガイドラインでは周辺で起きた紛争に対しても米軍に対して協力を行う。
特定の地域を指す地理的概念ではない。具体的項目は40以上(これまで、憲法論議で具体的判断が避けられてきたもの)
(1)
民間空港の利用(2)
物資の補給報告書・・・・・・別府、函館、岩国、鹿児島、神戸、室蘭、仙台、名古屋、新潟、大阪、佐世保、呉、下田、横須賀(横浜)、青森、小樽、長崎、苫小牧その他(全部で
28港)。(3)
機雷の除去(公海も含む)(4)
臨検臨検は、湾岸戦争時の臨検報告書を参考にした(外務省)。
a、
1990年8月から半年間(イラクへの経済制裁から)b、
7673隻(56隻に進路変更・964直接乗り込む)のすべての商船に対して行う。→(公海を含めれば)日本周辺では、湾岸以上に大規模な臨検になる(元掃海艇派遣部隊司令官落合氏)。
c、威嚇射撃(11回)、ヘリからの強制臨検(11回)
臨検への威嚇射撃は可能か
→臨検には、武力の使用が必然的に伴う、自衛隊が対等に参加するなら、武力の行使は前提となる(元米海軍大将
マクデビット)。→内閣法制局は否定的見解を示し、武力による威嚇にあたるとした。これに対して外務省は臨検を否定すべきでないとし、臨検を、憲法の範囲内で行う方法の選択を主張。
→実弾ではなく、空砲・信号弾による警告を認めた。
米軍への支援
民間空港、港湾の使用
後方地域支援(補給・輸送など)
日本が主体的に行う活動
難民の保護
捜索・救難
船舶の検査(臨検)
海外の日本人の救出
自衛隊と米軍の協力
米軍との情報交換
機雷の除去
海・空域調整
1996
年4月日米安保共同宣言↓
新ガイドライン作成
↓
@日米政府間での具体的な協力計画
A国家での法律の整備(早ければ来年の通常国会に提案)
(1)4
年前の北朝鮮における核開発疑惑→日本を含む東アジア情勢は必ずしも安定していないとするアメリカから、日本も経済力に見合った軍事的協力を行うべきだとの圧力がかかってきた。日本の与党内でも、有事の際の具体的協力事項の決定を行うべきだという声が多く上がっていた
(2)日米安保体制の、質的な転換点
5、新ガイドラインがもつ諸論点及び問題点
憲法は海外での武力行使を禁止(第9条)
@戦闘機及び艦船への給油について
戦闘機への離陸直前の給油は違憲(敵地に一時間程度で到着するため)と判断。
艦船への給油は軍事行動へは直接結びつかない(防衛庁)。
A公海上の燃料補給は可能か
a後方地域では可能だが、戦闘地域では不可能(防衛庁)。
b自衛隊と米軍の情報を収集して分析すれば、戦闘に巻き込まれるかどうが正しく判断する
ことが出来る(防衛庁)
→後方地域と戦闘地域の明確な判断を誰が行うのか。
→政府に課せられた課題
→法律の整備が必要である(より具体的な憲法論議が交わされる)。特に憲法9条との関わり。
グレーゾーンはかなりある。
c戦闘地域と一線を画した上での燃料補給
最後は、現場の指揮官に任せる(久間防衛庁長官)。客観的線引きは困難。
有事法制・・・・・・外部からの武力攻撃、つまり防衛出動事態における自衛隊の行動とその基礎に関わる法的仕組みをいう。
有事法制の分類(『防衛白書』)
a、自衛隊の行動に関わる法制
b、米軍の行動に関わる法制
c、国民の生命・財産等の保護等のための法制(有事法制の固有の問題でありかつ最も遅れている分野)
→三矢研究(昭和
38年度統合防衛図上研究)の批判から6、自民・社民・さきがけ(6月から協議)の見解対立点
(1)
武器・弾薬の輸送社民「武器・弾薬は不可能」米軍と一体化→憲法違反
自民「水・食料・燃料・武器・弾薬は可能」
(2)
民間空港使用社民「日本列島に軍隊をおいているのと同じ(及川政審会長)
自民「そんなのんきなことはいってられない。日本の平和と安全のためにその事態においては優先されるべき(山崎拓政調会長)
(3)
臨検については憲法の範囲内の活動にとどめることについては同意社民「武装前提ならば、憲法上難しい」
自民「武器所持は可能である」
(4)
周辺有事の範囲(最大の対立点)自民・さきがけは政府の方針を支持(極東に限定しない)地理的に捉えるべきではない。
社民は反対
さらに、台湾海峡を周辺有事の範囲から排除するよう要求(中国を配慮)
→集団的自衛権の範囲内になるのではないかという意見。
(5)
野党の反応ガイドラインの見解と、従来の憲法解釈との違いの明確化を次国会で求めていく。
7、ガイドラインに対する周辺諸国の反応
資料参照
W現在の東アジアの状況
1、北朝鮮
@国とその情報の閉鎖性
A「冷戦の残滓」
2、中国
(1)
公式発表で13億人の人口(世界の人口の22%)(2)1997
年度の国防費805.7億元(約1兆1300億円で日本の4分の1)。但し、整備調達費や兵器関係等の研究費等は別であり、実態を示していると言うのは難しい。(3)
江沢民政権は、ケ小平氏の経済成長路線を踏襲。四つの近代化・・・・・・農業、工業、科学技術、国防(四番目)
a、
1997年9月の中国共産党大会において、この路線を再度確認b、人民解放軍
50万人の削減計画(4)
台湾関係a、中国が台湾を軍事的に制圧出来る可能性はあるか。
海兵隊(海軍歩兵部隊)数は5000人程度、揚陸艦艇数は54隻(一度に輸送出来る
能力は戦車350輌、兵6100人)
b、台湾の兵器近代化政策
21世紀初頭で、大半の新型兵器の配備が完了。→中国との差は拡大。
(5)
米国による「積極的関与(アクティブ・エンゲージメント)」政策中国を孤立させずに、かつ大量破壊兵器拡散防止や人権の保護等で、中国の協力と国際社
会との共同歩調を促す。
3,東南アジア
ブルネイが領有権を主張→台湾を含めると
6カ国中国の「領海法」(
1992年公布)(4)
ミスチーフ環礁、スカーボロ環礁問題(5)ASEAN
地域フォーラム(1993年設立)による安定化努力
4、ロシア
暖かい海を目指す。
X現在の日米安保体制の持つ性格
1,日本がとるべき安全保障政策とは。
2,国民一人一人が、安全保障問題と向き合う時代へ。
3,米国との健全な関係
米国・・・・・・新ガイドラインによって日米間により緊密なパートナーシップが築かれる。
日本・・・・・・本来の意味での信頼関係とは何かという疑問の投げつけ。
4,アジア太平洋にとっての日米安保体制
日本の軍拡化と見る(中国、韓国の中での見解)
アジアの平和と安定に貢献するとの評価(ロシア、台湾)
5,人間の安全保障とは
6,多国間安保の可能性の模索