〈平和問題ゼミナール〉
沖縄自立への展望を考える
T
安全保障・基地問題から見る沖縄県土の約11%、沖縄本島の約20%
復帰後から
1983年末まで……毎年200件から300件の検挙数最近は毎年
100件前後で発生(粗暴犯は10件前後)復帰後から(
1972年)から1995年末まで……米軍関係者によるものは4784件(内4615人が検挙)航空機墜落(復帰後
36件発生)、不時着、部品落下、基地外への流弾、廃油等の流出による水質汚染、原野火災(
2)訓練・演習等によるトラブル航空機騒音、原子力潜水艦寄港、県道
104号越え実弾砲撃演習(三時案)、読谷補助飛行場パラシュート降下訓練(三事案)、(
2)土地利用の制約の問題(
3)制限水域・空域 → 社会活動、経済活動の制約(
4)演習等による環境破壊(
5)基地周辺における都市交通問題→県土構造のひずみに
基地依存型経済による悪循環
5、一連の基地闘争
(
1)土地を守る四原則(
2)コザ騒動(1970《昭和45》年12月20日)コザ市(現沖縄市)で道路横断中の住民が米軍人運転の乗用車に轢かれて死亡。その後のMPの一方的な事故処理と住民への威嚇発砲が、住民の暴動が発生。
→それまでの米軍支配への不満が一気に爆発。
6、安保再定義と沖縄米軍基地
(1)
東アジア情勢が変化しない限り、アメリカはアジアへの10万人体制は変更しない方針(2)
二正面作戦に対する見直しの声国防委員会(米議会詰問機関)報告書(
1997年12月)(「変質する防衛−21世紀の安全保障」)→国防総省は反論
→論議の活発化
7、基地返還と名護市海上ヘリポート建設問題
→基地返還の推移
面積は5分の1へ →米軍の不満も存在
a、ようやく繁殖し出した珊瑚礁
A案B案共に自然への影響は大
b、沖縄県自然環境保全審議会答申(1998.1.12)
名護市辺野古沖を「厳正な保護を図る地域」に指定(「自然環境保全に関する指針」)
a、大田知事の代案
b、コスト・技術面での問題
→一度日米両国間で検討後見送られる
→現在では慎重論(政府側)
8、地方自治問題から見る沖縄
U
アジアから見る沖縄→海域は熱帯性、陸域は亜熱帯性
→那覇市を中心とした半径三千キロメートルの円内に、東アジア、東南アジアの主要な都市を包含
(
3)琉球王朝時代→琉球処分、太平洋戦争、米軍統治を経て現在へ
2、沖縄の役割
→
V
民族・人権問題から見る沖縄(
1)人類館事件a、布令第147号……琉球住民の渡航管理
b、布令第116号……米軍基地労働者の団結権、争議権を認めない。
c、布令第145号……米国民政府の認可なしに労働組合の結成を認めない。
由美子ちゃん事件(
1955(昭和30)年)…米兵による暴行殺害事件 →犯人は本国送還宮森小学校ジェット機墜落事故(
1959(昭和34)年)…死者17人、重軽傷者121人国場君轢殺事件(
1963(昭和38)年)…下校中の中学生が横断歩道横断中に米兵が運転するトラックに轢かれ死亡。→加害者は軍法会議で無罪
隆子ちゃん事件(
1965(昭和40)年)…落下傘を付けたトレーラーが落下訓練中に投下目標を外れて落下、小学生が巻き込まれてが死亡。
B52
爆撃機墜落事故(1968(昭和43)年)…離陸直後に墜落、全島で反基地闘争が起こる。3、市民としての「島ぐるみの闘争」か、琉球民族としてのものか
4、「沖縄独立」論の展開
社民党代議士上原康助氏が国会予算委員会(
→ファナティックなものからの脱却を目指す。
に旗揚げ
D「沖縄人の沖縄を作る会」……保守系の人々が参加
@世論調査「日本に復帰してよかったか?」(朝日新聞実施)
「良かった」との回答の推移 1972年…55%、1981年…62%、1987年…84%、1992年…88%、
そして1997年…87%
(
3)沖縄県民の中での、「独立」論に対する位置づけ@「独立」の再定義の必要性
経済的・文化的独立と国家(既存の意味での)的独立との混同がある。
前者は「自立」への言い換えが可能
→最近のおおよその独立論は、経済的な独立か若しくは文化的な独立という意味合いのものが多い。国家的独立を実際に唱える人は、現在論者レベルでは殆どいない。
A市民レベルで、どれだけ国家的な独立を唱える人がいるか。
a、これについての正確な認識は現在出来ていないように思われる。
b、連邦国家と分権国家
(
4)今後の展開→成功例も多いが万能ではない(例:フィリピンでの失敗)。
サイエンスパーク、頭脳集積、技術集積、インキュベーダー(例:台湾)
ある程度大きな資本投入が必要
→独立と意識しているかどうかは別として、琉球民族としてのアイデンティティはもともとの沖縄県民の価値観形成等の出発点にあるものである。それを持ちつつ他の文化圏の人々に対して自信をもって付き合うことが出来ているかどうかが、こうした意味での独立の達成度を見る今後の尺度となるのではないか。特に、日本国内において沖縄県以外の人々にこうした対処が出来るかどうかは、歴史的経験の克服(差別・抑圧の経験)という観点からすれば、沖縄県の人々にとって大きな展開ではないか。
(
5)今後の展開上の問題点@沖縄県域に経済上のメリットはあるのかという問題
A「琉球人」の認識概念の変化
→
5、「奄美」の視点
以前は琉球として存在した奄美
→琉球よりも、先に日本へ奄美の人は、沖縄問題を、どういう問題として捉えているのだろうか。
→視点の転換
W
沖縄が考えてきた自立策→2015年を目途に米軍基地の計画的かつ段階的返還を目指す。
国際都市形成構想との関連、これまでの返還要望状況、市町村跡地利用計画の熟度、市町村の意向を考慮し、米軍基地の返還過程を三つの段階に分類して提示する。
整備を図る必要がある米軍基地を対象(10施設)
→那覇港湾施設、普伝間飛行場、読谷補助飛行場、ギンバル訓練場、金武ブルービーチ訓練場等
目途にして、早期返還、整備の必要な米軍基地を対象(14施設)
→牧港補給地区、キャンプ端慶覧、楚辺通信所、トリイ通信施設、キャンプ・コートニー、北部訓練場等、辺野古弾薬庫等
早期返還、整備の必要な米軍基地を対象(17施設)
→嘉手納飛行場、嘉手納弾薬庫地区、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、伊江島補助飛行場、ホワイトビーチ地区、鳥島射爆撃場、久米島射爆撃場、沖大島射爆撃場等
→沖縄県側からの、基地問題に対する具体的提示
→基地返還アクションプログラムとセット(→
(
1)「平和」、「自立」、「共生」を基本理念→沖縄県の自立的発展を図るとともにアジア太平洋地域の平和と持続的発展に寄与する地域形成
歴史的経験から
亜熱帯の環境特性、島嶼としての特性や海洋性としての特性を生かした技術・ノウハウを活用し、アジア太平洋への国際技術協力・交流を展開
→持続可能な発展に寄与
東アジアの結節点としてある地理的条件を生かす
→経済・文化交流の拠点化
3、沖縄県が提示した諸計画の将来像
中央官庁は否定的
A自民党税制調査会沖縄対策小委員会(
’97.11.12会合)での否定名護市西海岸が候補地としての可能性 → ヘリポート建設とセットか
→沖縄県以外の注目(民間)
全県化は困難な状況だが、地域的には実現の可能性
→これまでの項目(基地
B時期的問題の指摘
(
3)国際都市形成構想について@具体的計画の早期提示の必要性
→国の振興策の対応待ちか
A新しい全国総合開発計画と「21世紀・沖縄のグランドデザイン」(1996年3月)
X
沖縄自立への展望→支配と従属から相対化へ
「ウチナーンチュ同士の争いと、その成り行きを見守る政府」の構図
→けれども原因提示は政府から
A基地問題は、いかに他地域からの関心を得られるかが重要なポイント
沖縄県以外での米軍基地問題と密接に関連させることが必要(→社会問題としての認識へ)
「アメ」と「ムチ」
(1)
アメリカの譲歩「海上ヘリポート施設の代替的な検討は可能」(1月21日 コーエン国防長官)
→アメリカのこの譲歩で、日本政府もこの問題に対して再検討する可能性が出てきた。
(
2)日本政府の譲歩は?(
3)市民を守るために市民を苦しめる構図さらに深い論議と理解の必要性
@アジアで冷戦は終結しているのか。
A冷戦下の脅威と冷戦後の東アジアにおける不安定要素による脅威は同程度なのか。
→後者に、アメリカの世界戦略に対する配慮をプラスして釣り合わせている。
3、政府の沖縄振興策
(1)
「沖縄経済振興21世紀プラン」(仮称)D「特別の自由貿易地域制度」新設 →法人税の軽減
→全県化には難色を示す。
(
2)政府の譲歩山中案から見る沖縄県への配慮
→安全保障問題と比較して、経済問題は主として国内的問題であり、その分沖縄県の意向が反映される可能性は高い。
4、基地依存型経済からの脱却
県民所得は、沖縄県以外の約
70%d
、軍用地料がネックよい担保物件 →有利な資産
年間平均5%上昇する軍用地料 →跡地利用の妨げに(地価の上昇)
(
2)「第二の香港」目指して@沖縄国際都市形成構想についての補足
→政府側も、それを考慮に入れた対応を行っている点からすれば、現在でも一定の成果は得ている。
A中継貿易拠点
B規制緩和、独自の関税制度、法人税の軽減
→規制緩和には、沖縄県以外の民間企業も注目
沖縄が先駆的役割を担う可能性
5、現在の沖縄県民世論の主流はどこにあるのか
他人事としての沖縄問題
(
3)芸能人等の影響による沖縄若年層の意識変革集団就職した先輩と、メディアで脚光を浴びる先輩
a、若年層意識の変化
b、自信を持ち出した若者(屈折した見方からの脱却)
本来の沖縄文化や価値観の侵食
→必然的結果か?
沖縄問題と、他県が抱える諸政策的問題との共通性
沖縄県に見る利益誘導政策
沖縄は、政府の譲歩を引き出した(山中案)
(
3)国策との関係沖縄県民からの挑戦
→すべての現状改革の出発点
海上ヘリポート建設問題に対する大田知事の態度への現れ
提言と代替案
「本土への復帰」から「本土からの自立」へ