<平和問題ゼミナール・沖縄の経済的自立への展望>

平成1036日(金曜日)

沖縄の経済的自立への展望

 

T 自立化に向けて

「独立」の再定義:経済的・文化的独立の「自立」への言い換えが可能

夢としての「独立」論からの脱却

「自立」:自らの生産と取引で自由貿易市場の中で生き残れる経済構造を持つ

21世紀型の国民国家

20世紀における「独立」=新たな国民国家を作る

→支配されてきた人々が、国民国家さえあれば支配される側から逃れられると考えた

→現代世界の国民国家:政府の強制する力と自発的に従う国民によって構成される

承認と支持を得ることに他ならない。

 

U 沖縄国際都市形成構想(県)

→約20年後(2015年)を目標年次とする21世紀に向けた新沖縄のグランドデザイン

・基本理念:「平和」「共生」「自立」

・構想策定の意義

  1. 内外情勢の変化…国際交流の活発化、世界経済のボーダレス化、予測されるアジア諸国との交流
  2. …規制緩和、地方分権の推進、地域の個性を伸ばしながらの施策の展開

  3. 沖縄の課題…産業振興の後れ、財政依存の高い経済構造、米軍基地の存在
  4. 沖縄の特性

3,000km半径の円内に東アジア・東南アジアの主要都市のほとんどを含む。

→東京・北京・ソウル・上海・台北・香港・マニラ・ハノイ等

→東シナ海、南シナ海、黄海の交流拠点

→シャム、マラッカ、ルソン、カンボジアとの平和的交易

→親和性、寛容性、おおらかさ等、多様性を受け入れる国際的な感覚

→相互扶助を尊重する精神

  1. 沖縄の役割

→アジア太平洋地域の平和と持続的発展への積極的な貢献

→軍事拠点からの脱却、国際的な貢献拠点への転換

理念:沖縄の「自立」

→アジア太平洋地域の平和と持続的発展に寄与する地域形成

  1. 平和交流
  2. →太平洋戦争時の国内唯一の地上戦地

    →米軍駐留による極東最大規模の軍事施設の集中

    歴史と現実を踏まえ、平和理念の追求と国際平和の構築に寄与

  3. 技術協力
  4. → としての特性、海洋性等の地域特性を生かした技術・ノウハウの積極活用

    →学術・研究交流の推進

  5. 経済・文化交流

→東アジアの結節点ともいえる地理的位置にある

→人、物、文化の交流の拠点

  1. 駐留軍用地の返還とその跡地の整備
  2. →米軍基地の計画的かつ段階的な返還の要求

    →普天間飛行場、那覇軍港等の返還軍用地の跡地整備

    →沖縄本島西岸一帯の産業振興ゾーンとしての整備

  3. 交流ネットワークの整備
  4. →那覇空港のハブ空港化、那覇港湾の機能の拡充促進、起動交通システムの整備

  5. 国際的な交流・協力の場の形成
  6. →教育、研究、健康や福祉と長期滞在型リゾートの組合せによる魅力ある地域作り

    →人や情報が行き交う国際的な交流・協力の場の形成

    APEC関係機関、JICA海外協力隊訓練センター等の誘致、国際情報センター(仮称)等の整備

  7. 新たな産業の創出
  8. →海洋療法などの特色ある産業の振興

    →産業活動の活発化や新産業の立地促進、内外に開かれた「経済特別区」の形成の推進

  9. 研究機関等の設置及び誘致
  10. →国際学術交流研究所等の誘致

  11. 人材の育成・確保
  12. →国際的なシンクタンクの設置

  13. 国際貢献の推進等

NGO支援センターなどの設置

 

V 沖縄経済振興21世紀プラン(仮称)(国)

  1. 加工貿易型産業の振興
  2. 観光・リゾート産業の新たな展開
  3. 国際的なネットワーク化を目指した情報通信産業の育成
  4. 国際的な研究技術交流
  5.  

  6. 「特別の自由貿易地域制度」新設→法人税の軽減
  7. →全県化には難色を示す

  8. 中小ベンチャー企業、環境・情報通信産業に対する投資減税

 

W 返還ションプログラム(県)

概要

  1. 国際都市形成構想の目標年次とセット
  2. 2015年を目途に米軍基地の計画的かつ段階的返還を目指す

  3. 現在沖縄県に所在する全ての米軍基地を対象(40カ所)

段階的返還

国際都市構想との関連、これまでの返還要望状況、市町村跡地利用計画の熟度、市町村の意向を

考慮し、米軍基地の返還過程を三つの段階に分類して提示する。

  1. 第1期(〜2001年)…第3次沖縄振興計画が終了する2001年を目途に、早期返還を求め、整
  2. 備を図る必要性ある米軍基地を対象(10施設)

    →那覇港湾施設、普天間飛行場、読谷補助飛行場、ギンバル訓練場、金武ブルービーチ訓練場等

  3. 2期(2002年〜2010年)…国で作成中の次期全国総合開発計画の想定目標年次2010年を目
  4. 途にして、早期返還、整備の必要な米軍基地を対象(14施設)

    →牧港補給地区、キャンプ端慶覧、楚辺通信所、トリイ通信施設、キャンプ・コートニー、北部

    訓練場、辺野古弾薬庫等

  5. 第3期(2011年〜2015年)…国際都市形成整備構想の実現目標年次2015年を目途にして、早

期返還、整備の必要な米軍基地を対象(17施設)

→嘉手納飛行場、嘉手納弾薬庫地区、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、伊江島補助

飛行場、ホワイトビーチ地区、鳥島射爆撃場、久米島射爆撃場、沖大島射爆撃場等

 

X 全県自由貿易地域化(FTZ)計画(県)

  1. 一国二制度の模索
  2. →中央官庁は否定的(「適用例外は認めるべきではない」との見解)

  3. 自民党税制調査会沖縄対策小委員会(’97.11.12会合)での否定

→名護市西海岸が候補地としての可能性(ヘリポート建設とセットか?)

※沖縄県以外からの注目(民間)

→全県化は困難な状況だが、地域的には実現の可能性

 

Y 沖縄における開発と環境

・環境問題における中央部と沖縄の違い

  1. 気候帯(温帯地方と亜熱帯地方)

※地域のミクロな環境科学の成立

→東京中心の環境政策が沖縄では、ほとんど失敗

 

 

・新石垣空港の計画

→「サンゴは沖縄中のどこにでもあるさ、だから白保の沖合いを埋め立ててもどうってことないさ」

全体的なサンゴの荒廃、赤土とオニヒトデの食害を無視

※不十分な環境アセスメント

 

Z 経済的自立への展望

現在、沖縄の将来に向けた経済振興策を国と県でそれぞれ作成している。これは、沖縄の基地問題との取引材料といえる。そのため、沖縄の経済振興を活発なものにしようとするとどうしても基地問題に対して意見が弱くなってしまう現実がある。しかし、基地問題処理と経済振興を同時にかつ的確に処理しなければ、沖縄は葛藤から抜け出すことはできない。冷戦が終わった今、沖縄に米軍基地が本当に必要であるかは疑問である。法律上、軍事的シュミレーションが立てられないからといって、アメリカのシュミレーションを鵜呑みにするのも問題ではないだろうか。経済振興の障害となる基地の返還と米軍の大幅な人員削減を現実のものとして欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<参考文献>

沖縄県『国際都市計画構想=21世紀に向けた沖縄のグランドデザイン=』

沖縄県『国際都市形成基本計画』

沖縄県『基地返還アクションプログラム(素案)』

なんくる組編『沖縄が独立する日』夏目書房

集英社『イミダス1998』

朝日新聞社編『朝日キーワード1998』朝日新聞社