「女性国際戦犯法廷」を傍聴して

〜日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」〜

                                            2001.1.26 疋田京子

 

証言ビデオ上映

 ・写真に残された「慰安婦」――朝鮮民主主義人民共和国 朴永心の証言

   取材・構成 青野恵美子/2000/20分

・中国・武漢に生きる元朝鮮人「慰安婦」河床淑の証言

  取材・構成 須田馨・瀬山紀子/2000/12分

「法廷」の概要――4日間の「法廷」日程を追いながら

  ・被害女性、8カ国から79人が参加  ・海外からの参加(メディア除き)約440人

・韓国・朝鮮、南北統一チーム  ・東チモールからの参加

・昭和天皇「有罪」の判決;12月12日最終日(「事実認定の概要」朗読)

 *当日、「「最終判決」は2001年3月8日に発表される。」との予告が行われたが、4月下旬か5月になるとの情報があった。

「法廷」を振り返って――疋田の傍聴メモより

主席検事の起訴状(共通起訴状)

(パトリシア・セラーズ);被告人10人の刑事責任追及

「犯罪が行われた当時の法を適用する」

 「1945年の東京裁判では裁かれなかった犯罪の実態について我々は明らかにする」

   「奴隷制と強姦は戦争犯罪。強姦は戦争犯罪の中心的なものとして認められてきた。

強姦;人間の破壊。

社会自体が破壊される―それが許されるとき、兵士達の精神が破壊される。」

(ウスティニア・ドルゴポル);日本国政府の国家責任 

「日本国政府は、国際法に照らし、被害を認定し、被害の回復をはからなければならない」

「日本軍;女性たちを徴募、管理、強姦。強姦をしてもよいという黙認」

「日本国の官僚;募集、移送に関与」

「慰安婦の問題が注目されるようになった時点で、日本政府は被害者に対して法的責任があることを明らかにし、加害者処罰を開始すべきであった。」

各国検事団による起訴

被害事実

・被害者の証言;判決サマリー「沈黙の歴史を破って」による確認の意味

 ・証言の具体性(証言の裏付け、部隊の特定などによる立証が各国検事団から行われた)

 ・戦後も続く被害(肉体的障害、精神的社会的損害)

専門家証言(日本検事団による証人尋問)

「日本軍の構造について」専門家証人;林博史・関東学院大学教授

・日本政府と軍の構造――統治構造について資料

・軍隊の構造、戦争遂行の権限、日本軍が慰安所を作った地域

・日本軍兵士が犯した性暴力の実態――慰安所マップ

    タイプ1)軍の駐屯地を中心に制度化された慰安所―大都市

       朝鮮半島、台湾、日本からの女性

    タイプ2)抗日勢力の強い農村地域

       略奪、強姦などの放任。 

「天皇の責任について」 専門家証人;山田朗・明治大学教授

・明治憲法における天皇の位置、現実にどのような権限を持っていたか

・天皇の権限と憲法による制限――935年;立憲君主制の事実上の終焉
・1930年代の中国の状況を天皇は知っていたか
・1941年の「戦陣訓」の公布とその理由 ・1942年陸軍刑法の改正

・日本軍の軍事関係資料

*専門家証言としては、吉見義明・中央大教授の証言もあった。

なぜ「慰安」という言葉を使うようになったのか(ムトゥンガ裁判官)

――戦争の長期化、目的を見失い、その不満が上官に向かうことを恐れた。不満を抑えるために慰安を与える必要があると考えた。

「日本人慰安婦について」専門家証人;藤目ゆき・大阪外国語大学助教授

      ・日本人慰安婦は、内地、植民地及び占領地に多数存在した

     証拠)山川(那覇警察署署員)のエッセイ「従軍慰安婦駆り出しの裏話」

         上原栄子「辻の花」

・日本人で慰安婦にされた人たちの属性

1    公娼制によって既に国家管理されていた女性たち

    直接貧しい農山村の女性たちを女衒や業者がつれていく

   貧困層の女性に対して「仕事をするのだ」とだましてつれてくる

・タイプ1)の女性達も性暴力の被害者

       慰安所における被害の内容は、前歴によって左右されない

元日本軍兵士の証言  

傍聴の感想・雑感

 *NHK教育テレビ ETV2001 シリーズ"戦争をどう裁くか"(放送時間22:00〜22:45)
  第1回(1月29日)人道に対する罪  第2回(1月30日)日本軍の戦時性暴力
  第3回(1月31日)いまも続く戦時性暴力  第4回(2月1日)和解は可能か
  第2回で「法廷」が、第3回で「公聴会」が取り上げられます。