1.提訴
  従軍慰安婦あるいは女子勤労挺身隊員であった人々が、「帝国日本の侵略戦争と旧朝鮮に対する
   植民地支配によって」被害を被ったとして、日本国に対し、公式謝罪及び損害賠償を求める訴訟
   を相次いで起こしている。すでにいくつかの判決が出ている。
 
2.私たちは、「耳をすます」ことができるか。
   しかし、原告らの陳述、供述は「原告らが慰安婦とされた経緯や慰安所の実態等については、な
    お明瞭かつ詳 細な事実の確定が殆ど不可能な証拠状態にある」。原告らの陳述には証拠価値が
    あるだろうか。裁判は、確かな事実に基づいて行わなければならない。 
 
3.被害者の個別救済を否定する論理
  「戦争犯罪」や、「戦争被害」について、個人が外国国家に対して直接損害賠償を求めることがで
    きるという権利を認めるのが相当であるか?戦争と歴史についてのある裁判所の見方を紹介する。 
 
4.原告らの前に立ちふさがる法律論の壁
   (1)個人が戦争被害の賠償を外国に対し直接請求をすることは一般的には承認されていない。(国
      際法上の課題)
   (2)当時の我が国においては国等の公権力の行使による損害について国等は一切の責任を負わない
      とされていた。(国家無答責の原則)
  (3)戦争被害者を救済する立法をするか否かは国会の自由裁量である。戦後、救済立法をしなかっ
      たことは、国家賠償法上、違法とはいえない。
  (4)加害行為の時から20年が経過したので請求権は消滅した(除斥期間概念、民法724条後段
      参照)。
 
 (参考)立法による救済
 二〇〇〇(平一二)年一〇月三〇日、第一五〇回国会に三党は、戦時性的強制被害者問題の解決の
  促進に関する法律案を提出した。戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案(第一五〇回
  国会参第一一号)