平和問題ゼミナール報告レジュメ(2004年6月12日)

私たちを取りまく現状〜平和問題・環境問題を通して、

命の大切さを考える〜」

講師:橋之口みゆき(地雷ゼロ鹿児島代表

平和・環境問題を通して命の大切さを考える。私たちを取り巻く現状を知ることが何より重要なことだと考えています。知ることによって人は気付き、行動をはじめる。動くことによって周りが変化していく、NGO活動の中で学んだ大事なことの1つです。

世界では紛争が絶えず、世界の軍事費は平和の思いに逆行して増え続けているのが現状です。

その結果、軍事技術が発達し武器の小型化・軽量化に伴い、もっとも弱者である子ども達が、

子ども兵として戦っている事実にも驚かされます・・・

戦争が終わっても武器は残り、傷ついた人達も存在し続けます。住みなれた土地を追われて

難民となる人、先祖伝来の土地に残り続ける人、どの選択にも厳しい現実が待っています。

施設の破壊、生活の崩壊、大地に埋められた地雷におびえる毎日・・・、戦争は最大の環境破

壊なのです。

今後、地球温暖化による水不足や食糧危機などによる飢餓・貧困が予想されます。環境問題

も平和問題も根本ではつながっています。どちらの問題がより重要ということはなく、全ての問題について私たち自身が関係しています。

未来の世代を担う子ども達のために私たちに何ができるのか?現状を通して事実を知り、行

動し続ける事で未来を変えていきたいと考えています。

 

●世界の軍事費

・2002年の世界の軍事費は7940億ドル(約93兆円)前年比6%増。アメリカの軍事費は10%増えて世界の43%に達した。増加分も世界全体の4分の3をアメリカが占め、軍事大国ぶりを象徴している。

アメリカ、日本、ロシア、フランス、中国、上位5カ国の軍事費は世界の62%に達した。

国内総生産(GDP)に占める軍事費の割合は、世界平均の2.3%に達し、中東が6.3%と突出している。

『スウェーデン・ストックホルム国際平和研究所2003年版年鑑による』

 

●紛争・兵器

・武力紛争が発生している国は50カ国以上。

・冷戦終結後の武力紛争により、子供が200万に人以上死亡。500万人が身体障害者に

なり、1200万人が家を失う。

・死傷者の90%は民間人で、通常兵器(マシンガン、ピストルなど)の使用によるもの

(※ところが、通常兵器の貿易を規制する条約はいまだ成立せず。非人道的な兵器の使用を

規制するものとして、「対人地雷全面禁止条約」、「特定通常兵器禁止・制限条約」が存在)

 

●子ども兵の現状(見えない兵士)

【近代以前

・戦場における子どもの役割は、補助的、予備的なもの

【現代】

・軍事技術の発達⇒武器の小型化、軽量化、自動化 例)AK47:旧ソビエトの歩兵式突撃銃

・子どもでも武器を簡単に扱えるようになり、戦闘行為そのものを担うようになった。

・36の武力紛争で、18歳以下の子供達が参加(1995〜1997)

 (そのうち、28の紛争では、15歳以下の子どもが確認されている)

・現在、確認されているだけで約30万人の子ども達が兵士として戦っている。

 

→ 子ども兵問題解決に向けて、予防策、徴兵手続きの見直し、国際的規範の改善、リハビリテーションの実施などが早急に必要。

 例)エルサルバドル

     ゲリラ活動に加わっていた兵士の内、18歳未満は1800人と推定(全ゲリラ兵の20%)

     UCA( Universidad Centro Americana ) が「戦争の子どもたち(Chirdren of War)

        プログラムを実施(〜1996

    @紛争地域であった村から集めたメンタルヘルスに関わる人々に訓練を実施。

     訓練を受けた人々が村々に戻り、子供達にセラピ−を行う

    A戦争による深刻なトラウマ症状が見られる場合は、UCAの心理学者が個別、集団でセセラピーを実施

    B戦争による人口の変化を調査研究する

 

●地雷の問題

1、残虐性

・地雷は殺すためにではなく、手足を失わせることを目的にした兵器

⇒死体は置き去りにできるが、傷ついている味方は置き去りにできない

2、無差別性

・地雷は殺傷する相手を選べない

・被害者の80%は非戦闘員、その3割は14歳以下の子ども(全体の24%)

3、残存性

・戦争が終わっても地雷は、そのまま地中で生き続ける

50年以上前の地雷による被害も毎年報告されている(ポーランド、エジプトなど)

4、安価

・最も安い地雷は3ドル程度で製造

・高価な兵器を買うことができない途上国、反政府ゲリラにとっては手ごろな兵器

 

●地雷の種類

1、爆破型地雷

・直径5〜15センチ

・爆発する重さは、種類によって異なる

・上からの圧力により起爆装置が作動し、信管に通電して本体の爆薬に引火

・単純構造なので大量生産しやすい

2、破砕型地雷

・地表の物陰などに隠して使用

・爆発により地雷本体が砕け、飛び散り、時速100キロで周囲20〜30m四方にいる標的を殺傷する

・紐やピンにつなげておくと、標的が紐にかかるとピンが外れ、起爆装置が作動する仕組み

3、跳ね上げ型地雷

・地雷本体が地表から跳ね上がり、1〜2mのところで本体が爆発

・他の地雷と違い、被害を与えるのは人の胴体、内臓、頭部

・人の生命を奪うことが目的。車両に乗っている人にも怪我を負わせる

4、散布型地雷

・航空機やヘリコプター、地上の車両から散布する地雷

・ロケット弾やミサイルの中に地雷を詰めて爆破の勢いで広範囲に地雷を散布も可能

・それぞれが小さいため、気付かずに踏んでしまう

5、賢い地雷(スマートマイン)

・自己破壊装置または自己不活性化装置付の地雷のこと

・一定時間後、自爆もしくは無力化する

 

地雷の被害

・地雷による被害者数・・・毎年20,000人、毎日50人、30分に一人程度

・手足の切断者の数はカンボジアでは234人に1人、アンゴラでは20,000人を超える

・被害者の治療、義足、義手などの生涯の経費は3,000ドル(約36万円程度)

・被害の多い途上国では不衛生な処置から感染症になり、死亡するケースが50%を越える

・事故後6時間以内の処置が重要 ⇒実行可能な割合は30%(アンゴラでは10%以下)だとされる

 

●飢餓・貧困

・世界には難民と呼ばれる人々が2300万人いると言われている。

・途上国で食糧不足に苦しむ10歳以下の子供の数は、少なくとも1億8千万人。

・毎日3万5千人にのぼる5歳以下の子供が、栄養失調で死亡。

(※アフガニスタンでは平均寿命は46歳。子ども100人のうち、30人が5歳になる前に亡くなる。10人に1人が今も飢えに苦しんでいる。)

→ 1年間で合計すると、1100万人が死亡している。(※東京都の人口ぐらい)

しかし、毎日約3000万人分もの食料が、先進国において()てられているのが現状。

    私たち一人一人が飽食や食べ残しや、ぜいたくな生活を見直すことが必要。

→ 地球温暖化 → 食糧危機・水不足 → 飢餓・貧困

 

●21世紀の世界

・このままいけば・・・

 


   (オゾン層)  →  あと20年で1/3

   (地球温暖化) →  あと20年で気温上昇

   (森林破壊)  →  あと50年で大半が消失

   (水不足)   →  あと20年で50億人が水不足

   (食糧問題)  →  あと20年で食糧危機

   (資源問題)  →  あと40年で石油が枯渇

 

【参考文献】

「過酷な世界の天使たち」企画:有限会社アザーハウス 1991年発行 角川書店

世界の子ども兵〜みえない子どもたち〜 レイチェル・ブレット、マーガレット・マカリン 2002年発行 新評論

「ワールドウォッチ研究所地球白書200203」クリストファ・フレイヴィン 2002年発行 家の光協会

神保哲生;著 『地雷リポート』 築地書館、目加田説子;著 『地雷なき地球へ』  岩波書店

赤十字国際委員会;著 難民を助ける会ボランティア;訳 『対人地雷 味方か? 敵か?』 自由国民社

地雷廃絶日本キャンペーン;発行 『JCBLニュースレター』

【参考資料】

子ども兵、小型武器に関する現状視察のアフリカ調査報告(2004年328日〜412日)

『NGOテラ・ルネッサンス』