2001春 大・仏蘭西物語編
(その3)





 さて、しばらく機内にいると、やることもなくなり、脚もむくむ。
 よく見ると、機内をぐるぐる散歩している老人たち(もちろん日本人)や、
 パジャマ姿の人もいる、むくみにたまらずミニ青竹踏みを出してもみたのだが、
 あんまり効き目はない。途中、映画「ホワイトアウト」をしていたのだが、
 あまりにスケールがでかすぎるのかリアリティがなく、面白くなかった。
 そのうち何故か頭が重くなってきて、「もしかして酔ったのか」と思うのだが、
 もう遅い。がんがんする頭を抱えてうなる。「あー、早く着いてくれー。」

 さらに機内食が出て、その後にやっとシャルルドゴール空港に到着。
 揺れもほとんどなく快適なフライトであった、のだろう。やっと解放されて飛行機
 から降りる。しかしすぐ乗り換えてもう一度飛行機に乗らねばならないのだが。
 うー、とうなりながらのろのろ降りると、何と周囲は日本人ツアーの方々で一杯。
 添乗員が口々に「ニースにお乗り継ぎの方―」「マルセイユにお乗り継ぎの方―」
 「スペインへお乗り継ぎの方―」と言って、その後をぞろぞろと日本人が・・。
 こんなに乗ってたとは。まあ多いなあとは思ってたんだけど、とかなりびっくり。
 私たちも添乗員Nさんに連れられて、ぞろぞろと行く、宇宙基地のような
 シャルルドゴールのフロアを入国審査場にたどり着き、さて、フランスへの
 第一歩だ、と思って係員の男の人に、「ボンジュール」と元気よく入国カードと
 パスポートを見せた。

 ところがちょっとパスポートを見た係員は「ジュマユ?」と不思議なことを言う。
 「な、何とや?」と思うが、言っていることはもちろん分からない。
 しまったなー、ハローにしときゃよかったかー、それともやっぱコンニチワか、
 と思ったけどもう遅い。「へ?」という反応をしたら、「マユ?」と聞かれた
 (聞こえた?)ので、とりあえず自分を指して「マユ・イノウエ」と言ってみたら、
 「こいつは何にも分かってない」と言う顔をされて、「サンキュー、グッバイ」と
 言われた。最初から英語で言ってくれー!と悲しくなった私。
 「ああやっぱ語学力は必要ね」と妙にへこんでしまったのであった。

 

 さて、飛行機をリヨンへ乗り換え、再び空の旅へ。一番後ろの私たちの席の
 横には可愛いフランス人(多分)の娘さん。おしゃべりしてみようかしら、と
 思ったんだけど、そんな会話ができるような力はない・・。
 (さっきの入国審査でへこんでるし)

 機内では軽食と称してサンドイッチとベリーの
 たくさん入ったタルトが出た。
 「もう何にも食べられんー」と思ったが、試しに
 食べてみると、サンドイッチは穀物系のパンに
 クリームチーズにハーブを混ぜ込んだものが
 塗られていて結構新鮮な味。さらにベリータルトは
 ベリーの酸味がきいてなかなか美味しい。
 しかし!さらに飲み物を勧めにやってきた
 スチュワーデスに、「何があるのですか」
 と聞けない私たちは、「隣の人とおんなじ」のオレンジジュースを頼んで、
 超甘甘状態で食べたのであった。ああ顔から砂糖が出そう。

 リヨンまでの道のりは、最初こそ広大な大地が見えてよかったものの、その後
 ばんばん揺れて、長旅で疲れた身体には鞭打つようであった。1時間程度の
 フライトを終えて降り立つリヨン空港は、ちょっと閑散としていて、「こんなトコを
 通るのかい」というような古びた廊下を通り、やっとフロアに出る。
 自分のスーツケースを無事受け取って、空港の外に出てバスに乗る。しかし、
 「トイレに行きたい方、ご案内します」と言って案内された私のフランス初体験
 トイレは、和式だった(日本のとはちょっと違うんだけど)。びっくり。
 しかもかなり両足の間が広く、「落ちないかしら」と思い、さらに、
 「どこを押せば流れるんだー?」と思ってとりあえず目の前の、でかいでかい
 ボタンを押してみたり(流れた)、となかなか冒険。

 バスが無事動き出し、回りの景色も変わってゆく。
 リヨンのサトラス空港は別名サンテグジュペリ空港。
 「星の王子様」の作者サンテグジュペリは、
 このリヨンに1900年に生まれたのだそうだ。
 そう聞くと感慨深いものがあり、羽根のような
 カタチの屋根にしばし見とれてみたりした。
 そう言えばフランスのお札50フランは、
 サンテグジュペリの顔が描かれてあるのだが、
 それも来年には使えなくなるので、
 残念かもしれない。

 しかし夜も9時近くだというのに、まだ全然外は明るい。「いつ太陽が沈むの?」
 と朦朧とした頭で思う。「今日が皆さん一番しんどいんですよ」と添乗員Nさん。
 「ぼーっと聞いててもいいですよ」とお金の説明を始めるが、もちろん頭は
 休止状態。新品のバスに乗ってホテルに向かう間、高速をぼけーっと
 見ていると、何だか落書きが多く、「こんなところにどうやって描くんだ?」と
 思ったりもする。日本のヤンキーの落書きと同じようなものだが、こちらの方が
 かなり上手。「ううむ、やっぱり本場(ってどうして)は違うわね」と妙なことに
 感心する。

 さて、しばしバスに揺られて着いたホテル「メルキュール・リヨン・ジェルランド」
 は小奇麗なホテル。部屋の中は少し古いけど、きちんと清掃されていて、
 いい感じだ。特にお風呂はキレイで、安心する。早速スーツケースを開け、
 中からジャージを出してお着替え。
 トイレに入って一息ついて座る。「ぎゃ!!」
 便座が横にずれた。



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