スキーに行くとなると、いつもルンルン気分なのだが、今日はちょっと違う。
これからスキーに行くという気分ではない。どうしてか。なんと、インストラクターのバイトに行くのだ。インターネットのスキー掲示板を見ていたら、インストラクターが足りなくて困っているという書き込みがあり、「ちょっと行ってみるか」という気になった。
卒論に追われる忙しい時期なのだが、講習が終わってから部屋で研究すれば大丈夫だろうということで、しっかりノートパソコンも持ってきた。
講習のない時間に滑りたいのだが、ホテルからゲレンデまでは10分ほどある。フリーで滑るのは絶望的。お気に入りの板を傷つけられるのも嫌なので、レンタル板を使った。ストックもレンタル。雪の形のリングがついている。どうしてこんなに大きなリングを付けるのか不思議なくらいでかい。
さて、担当することになったのは、中学生の女の子8人。僕がスキーを教えるのは初めて(本当に教えられるのか?)なので、どうやら女の子の中でも運動が得意なグループを担当することになったようだ。中学生の女の子...果たしてどんな子たちなのか? 僕は、中学、高校と男子校で、大学も理系単科大学。中学生の女の子と話したことなど、一度もない。同じくバイトだった人が「この前は、わがままな女の子に当たっちゃって、大変だったよ。」などと脅かす。
担当する生徒が判明する。「ちょっと大きくなった小学生」に見える。言うことは、よく聞きそうだ。
ブーツの履き方、いや持ち方、から説明する。みんなレンタルだから、もちろんリアエントリー。「こんな合わないブーツを履かされてかわいそう。」と思いながら説明。僕は自分のブーツ。
ゲレンデまで歩いていく。初めてスキーのブーツを履いて、5分以上歩くのは大変だろう。こんなに長い距離、慣れていないスキーブーツで歩かされて、かわいそうだと思ったが、「がんばって」と言うだけだった。
ゲレンデに到着。まず、準備体操。さて、いつもは体操何をやっていたかな?と考えると、何故かすぐに思いつかなかった。板を履いて屈伸したり、板を立てて股の裏をのばしたり、板を背中に付けて股の前をのばしたり...どれも板をつけてやる体操しか頭に思い浮かばない。そんなことできないので、とりあえず屈伸、アキレス腱のばしなど普通の準備体操をする。
次に何をやろうか決まらないまま、体操が終わってしまった。そこで、スキースクールから渡された練習メニューを思い出す。片足にスキーを履いて歩くというのがあった。それをやる。当然つまらない。みんなつまらなそうだ。僕が初めてスキーを履いたとき、こんなことやっただろうか?
まず、プルークを教えたいので、かに歩きの練習をする。初めてスキーをしたとき、かに歩きを散々やって、ヘトヘトになったのをよく覚えている。一歩踏み出すごとに下に滑っていたが、なんとかこなせた。いよいよプルーク。「ハの字」にすれば止まる事を説明する。転び方も教えたが、なかなかうまく立てないようだった。
レンタルスキーのインストラクター
初心者に教えるとなると、板を踏まれる可能性が高い。大切な自分の板が傷だらけの姿になってしまうのは忍びない。スキースクールで貸してくれるそうなので、自分の板は持って行かなかった。「あまり良い板ではないですが」という説明だったが、まあ自由に滑るわけでもないから、それでいいと思った。
僕:「自分の板を持ってこなかったので、貸してもらえますか?」
スクールの人:「何センチがいいですか?」
僕:「カービングでなければ、180位のありますか」
スクールの人:「じゃぁ、この板使ってください。」
見ると、ピンク色の古〜い板。よく見ると、板の両端にエッジらしきものが昔付いていた形跡がある。板の反りは全くない。ぺったんこ。「ワックス? 何それ」と言っている滑走面。そして、これまた古くてダサーいビンディングが付いている。つま先を止める方は、Y字型をしている。とにかく格好悪いボロ板だったが、これしかないので仕方がない。
僕:「ストックも持ってきてないのですが...」
スクールの人:「入り口にたくさんかけてありますから、どれでも好きなの持っていってください。」
どれどれ ... 好きなストックなんて、1本もなーい!!
どれも、大きな雪の形をした水色のリングが付いていて、持ちづらいグリップも水色、長さの変えられない黒いストラップ、シャフトは銀色のアルミ。昔のレンタルストックの象徴とでも言えるようなストック。どうしてこんなでかいリングを付けるか不思議なくらい。これまた、ダサダサ。
こんな板とストック。んもぅ、とにかっっっくひどい。ひどすぎ。泣きたくなるほど。
レンタルでこんな板を出された記憶もない。生徒の方は、レンタル屋の板で、ずっと良い板。
こんな板とストックで教えているインストラクターなど見たことがない。しかも、そんなおかしなインストラクターを僕自身がやろうとしているのだから、悲しいこと、この上ない。トホホ。。。
リアエントリー
リアエントリーのブーツ。ロボット型の昔のヤツ。レンタルの定番。
そして今日、とうとう僕は見てしまった!!
なななナナンと、白いリアエントリーで滑るインストラクターを!!!
(もちろん、それは僕ではない。僕はボロ板を借りていたが、ブーツは自分のを履いていた。念のため)
アルバイトとはいえ、スキーのインストラクターです。もうちょっと格好よく行きましょうヨ。
そんなところに、ワックス?
借りたボロ板、滑らないと思った。やっぱり滑らなかった。滑るわけがない。滑走面を見ると、雪がびっしり。板の手入れをしないとどうなるか、ボロ板は体を張って教えてくれた。(教えてくれなくていいのだが。)
雪が降った。おそらく、もっと滑らなくなるだろう。スクールの校長が固形のワックスを出してきた。他のインストラクターが塗っている。コルクで擦ったりなんてしない。ただ塗りつけるだけ。
そして、またまた見てしまった!
なななななナント!! 固形ワックスを板の表に塗っている人を!!!
僕:(笑いとあきれをこらえながら)「そこに塗っても意味ないんじゃないですか?」
インストラクターAさん:「雪が表面に付かないように」
そんなところにワックス塗る人、見たことも聞いたこともない。ワックスは滑走面の水分量を最適にして、良く滑るようにするためのもの。 それに、もし表に塗っておいたとしても、滑走面みたいに擦れるわけではないから、雪が付くだろう。板の表面に雪を付けたくなかったら、板を外に出して冷やしておけばいいだけなのに。
インストラクターAさん:「塗っておくと、雪がつかなくていいですよ。」
僕:「僕は、ゲレンデに板おきっぱなしだからいいです。」
僕の内心:「あんなボロ板、表に雪が付いて、どんな板だか、わからなくなってしまった方がよっぽどいい。」
トレンド?
生徒の人数が増える。アルバイトのインストラクターも増える。ボロ板の需要が急増する。
ちょどいい長さの板が見つからない人がいた。
インストラクターBさん:「これじゃあ、短いんじゃないですか。」
インストラクターCさん:「大丈夫それで」
インストラクターBさん:「だって140cmしかないですよ」(Bさんの身長170cm)
インストラクターCさん:「最近、短いのが流行ってるだろ。」
それって、カービング板での話では? カービング板は、短くても大丈夫だから、短くしてあるのではなかったかな。 もちろん、そのレンタルのボロ板はカービング板である訳がない。
インストラクターBさんが苦戦したのは言うまでもない。
ココアとコーンスープ
昨日、疲れて戻ると、ココアのいい匂いがした。生徒がカウンターに集まってココアを飲んでいる。
匂いに誘われて、飲みたくなった。生徒のためのココアだが、もらって飲んだ。
あのいい匂いから得た期待を完全に裏切るには十分すぎるほどのまずさだった。
Dさん:「日によって、ココアとか、コーンスープとか出しているんですよ。」
今日、疲れて戻ると、コーンスープのいい匂いがした。生徒がカウンターに集まってスープを飲んでいる。
匂いに誘われて、恐ろしくなった。飲むものか。