Self Liner Notes 2011
終わりのないトライアルの始まり… 村松 健
僕にとって2枚目になるこの作品は、ブルーはブルーでもパステルトーンの夏の清涼感、
みずみずしさをオーディエンスのライフスタイルの中に届けたい、そんなイメージで制作したアルバム。
季節や時間帯といったモティーフに加え、色相を音像化する意識が生み出したエコー感の強いサウンドが、
清々しいジャケットとともにこのアルバムのキャラクターを生み出している。
参加ミュージシャンもスタジオミュージシャンから自身のユニットのメンバーへの移行期で、
スタジオに自分の楽器を持ち込んで缶詰になってエネルギーを傾けた日々が、ここには刻まれている。
それまでのスタイルありきの方法論から脱局して、アレンジを幾度も模索しながらのレコーディングが、
“どこにもない音楽”を求める終わりのないトライアルの始まりであることに、まだこのときの僕は気付いていない。
1. HYDRANGEA -- into the morning dew
(西洋アジサイ)の名を冠した理由は3つあって、地味と季節で色彩を変化させるしなやかさと
“水の容器”と名付けられたこの花木の深い水との関わり、そして我が国原産のこの植物が今や世界に愛されている!という事実に魅かれて。
朝露に濡れるアジサイは、幼い僕の傍らにあった夏色を告げる懐かしい存在。
この5年後にリメイクされた同曲(アルバム『子供の時間』収録)と是非聞き比べてみてほしい。
別バージョンじゃなくて、脱スタイルなのがおわかり頂けるかと。
*村松 健 steinway piano #D, YAMAHA-GS1 / 岡部洋一 percussions / 吉岡堅一郎 electric bass / 猪又万里志 drums
2. OCEAN BOULEVARD -- breezy memory
当時のライブは、ピアノにパーカッションそしてベースまでは生、ドラムスは全曲打ち込み(リズムマシン) なんて斬新な編成で、
これはまさにそのころのスタイル。リズムパターンは僕のブラックミュージック好みを反映して、
その上にオリエンタルなシーケンスとオールドファッションなムードを持ったストリングスを配して、色あせないリゾートを描く。
どこまでも続く海岸沿いの並木道は…
*村松 健 steinway piano #D, YAMAHA-GS1, oberheim DMX programming / 岡部洋一 percussions / 吉岡堅一郎 electric bass
3. KOMOREBI -- leaves of summer
音楽はどんなに練り上げても、lovelyなテイクは瞬間的に舞い降りるもの、それは天から授かりもの。
風に揺れて差し込む木漏れ日のせつなのイメージを共有して、短いメロディをセッションしたこのテイクは、
今もあの日のインスピレーションを蘇らせる。
*村松 健 steinway piano #D / 今野菊治 alto sax
4. WATER INTO WINE -- in sepia color
たそがれ時を過ごそうと訪れた海。夕日を追いかけて染まる空の色が水面に映えて、その境目が見えなくなる時、
少しだけ神様に近づいた気がして、僕にはいつもメロディが聞こえてくる。
そんな素敵なことが起こり始めたときの記念すべきナンバー。弦のアレンジも再演をそそられるし、
シンセベースの存在感はひとり多重でしか表せない“うねり”を生み出しつつある。
*村松 健 steinway piano #D, moog-bass / 今野菊治 alto sax / 岡部洋一 percussions / 猪又万里志 drums / 友田ストリングス strings
5. SAILIN' SHOES -- dancing in the dark
ポップなメロディが耳に飛び込んでくるこの曲で僕がしたかったのは、それとは裏腹な複数のキーボードによるファンキーなプレイ。
前作からの流れを組むエレキベースにユニゾンするシンセベース、ストラトのカッティングをイメージした硬質でnoisyなフェンダーローズでのバッキング、
そしてとどめの一手は“village pine group”僕の名字を英訳したこのホーンセクションは、僕のメロディオンによるものなのだ!
種明かしが済んだところでもう一度、シャウトするピアノとともに僕のグルーヴを聞いてくれ!
*村松 健 steinway piano #D, fender rhodes, melodion(village pine group), moog-bass / 岡沢 章 electric bass / 渡嘉敷祐一 drums
6. LOVE COLORS -- peace of mind
アルバムの中では現在も一番プレイする機会のある曲。実は初め、jazzスタイルのピアノトリオでトライしたが方向性の違いを感じて、
今も僕のステージを支えてくれている岡部洋一との多重duoでリテイクしたもの。
タンバトリオやミルトン・バナナといったブラジリアンを聞いて育った僕は、jazzアプローチとしてのボサノバでなく、latinのスウィング感とスペースが欲しかったのだ。
大貫妙子のインストゥルメンタ ルなヴォイスワークはこの曲にぬくもりを与えてくれた。
この時の同じアプローチで生まれてきたのが、近作『My spiritual home』収録のサンバ “Ha lala ye”である。
*村松健 YAMAHA-GS1, moog-bass, hammond organ B3 / 岡部洋一 percussions / 大貫妙子 voice
7. MOONSHADOW -- on the beach
当時はピアノソロで音楽を作るのは、まだまだずっと先のことのような気がしていた。(実際には直後に実現するのだが…)
ピアノとデジタルキーボードのduoのスタイルは、これが最初でこのあと何曲かがその 手法を用いている。最近はスケール感のあるイメージでこんなやり方もまたやってみようかなと…
*村松 健 steinway piano #D, YAMAHA-GS1
8. A LONG AFTERNOON -- so, we sailed
子供の頃の夏休みは、一日が長かったね。昼下がりは太陽のもと、遊び疲れてお昼寝から覚めてもまだ明るくてもうひと遊び…
いつまでも続く夏の日の午後をイメージしたこのナンバーは、No.1fusion band “浪花エキスプレス”のリズムセクションとともに…
ミディアムスロウのテンポを走馬灯のようなエモーショナルさとスピード感で支えてくれたおふたりとの時間は、今も僕の身体の中にはっきりと記憶されている。
*村松 健 steinway piano #D, YAMAHA-GS1/岡部洋一 percussions / 清水 興 electric bass / 東原力哉 drums / 大貫妙子 voice
9. OCEAN BOULEVARD -- trio pacifico version
どこまでも続く海岸沿いの並木道は、そうして今や僕のスタジオへ通う道になった。野外公演の際、激しくなる雨の中でオーディエンスはまだ立ち去らないのに、
ピアノや音響機材をこれ以上濡らせずに止むなく中断したステージ。そのとき僕は、最後のひとりが家路につくまでパフォーマンスを続ける覚悟をした…
そう、海と雨とひとつになってこんな風に…。
*村松 健 三線, percussion /安藤浩司 ukulele
“自然の傍らにいることの幸福” を感じてほしい、僕が音楽に込め続けている永遠のテーマもまた、この作品がスタート地点であったような気がする。
当時のマスタリング技術では実現し得なかったリマスター盤の臨場感、音の奥行きや艶かしさは、僕のロマンやエネルギーを鮮やかに蘇らせてくれる。
さあ今度はあなたが、この道を通って海辺にいらっしゃる番!
|