PHUNOM PENH
8日目トンレサップ湖上のスコール

 朝6:00、ミニバスに乗り込み、スピードボート乗り場のトンレサップ湖へ向かう。これでシェムリアップともお別れだ。ボ〜ッと外を眺めていると、道路脇の住居や人々の生活が見える。広がる畑、昇る朝日。なんとなく感慨に浸りながら・・・かなり揺れるバスの中、頬杖をつくこともできない。道が悪いのは良いが、夕べの雨で道がぬかるんで凄い状態だ。
 バスが止まった。乗客全員降ろされる。どうやらこれ以上バスでは進めない状態らしい。急遽ピックアップトラック(トラクターみたいな大型トラック)に乗客が移される。スピードボートのチケットには船着き場までの送迎が含まれているから、当然タダだと思ったら1ドル請求して来るではないか。「!?」白人のお姉ちゃんたちもしきりに抗議している。私たちも抗議するがガンとして受け付けてくれない。諦めて1ドル払ってトラックの荷台に上がる。「ヘリ」に捕まれる立ち位置を確保して出発とあいなった。
 そしてこのトラックがひどい。というか道がひどい!!これじゃあバスは一溜まりもないなあ、という道なき道、つまりぬかるんだ道を無視して森の中をトラックは突っ切って行く。こんな経験は初めてだ!無茶苦茶エキサイティングである。ポイペトからシェムリアップまでのピックアップも凄かったが、それとは違った意味のアドベンチャーがここにはあった。こんなの日本じゃ絶対味わえない(と思う)!!!凄い!!!

 船着き場へ到着すると雨がぽつりぽつりと降ってきた。すぐにボートに乗り込む。スピードボートにしては遅いなあ・・・屋根もないし・・と思いながら水辺の景色を見ていると、軍用ボート(銃装備つき)などもあちこちに見えたりする。そうこうしていると水上の小屋でボートから降ろされた。「なんだなんだ、スピードボートは別にあったのか!」ちゃんとした大きなボートに乗り込もうとした瞬間、かなり激しいスコールが降ってきた。「出発できるのだろうか・・・」
 ひとまず席を確保したので、それでも小屋に戻ってお弁当をテイクアウトで作ってもらう。(これが本当にうまいお弁当だった!とりの唐揚げと餅米ごはん)もちろん一瞬外に出ただけで、全身ずぶ濡れだ。
 土砂降りスコールのまま出発進行!天気が良ければ船上に出て外を満喫できるのに!とはいえ、ゲストハウスであった女の子がボートの上の陽射しは本当にキツイと真っ赤に焼けていたので、出る気はなかったけれど、それでもちょっとは出たかった・・。途中、アーミー船に止められドキドキしたが、船上で4時間(うんざり)スコールも止んでウソのようにピーカンな天気の中、プノンペンに到着!バイタクを交渉し(2500リエル払ったが、実は相場は1500Rだったらしい)、キャピトルゲストハウスに向かう。

 ここは大都会だ。人もバイクもひっきりなし、まるで3年前に見たサイゴンのような衝撃を受ける。プノンペンならここ!という安宿「キャピトル・ゲストハウス」にT原さんとチェックインする。ひとり3ドル。窓はないけど部屋は割に清潔でなかなか快適!(ゴキブリはいたけど)
 しかしシェムリアップでは「キャピトルで先週イタリア人が銃で足を打たれたらしい」とか「日本人の女の子がレ○プされた」など危険きわまりないガセだかホントだかわからない情報が飛び交っていたので、警戒心を2倍にする。
 シェムリアップであったH本君が一足先にプノンペン入りしていた、夜ご飯を約束する。旅先での再会は嬉しいもんだ!

 ひとまず下のキャピトルのカフェでランチ&ビアでひといき。その後T原さんとセントラルマーケットへ!途中、美味しそうなものを食べている旅行者に遭遇。「ここのアイス無茶苦茶うまいよ、俺たちそこのダイアモンドに泊まっているんだ。」どうやら味のあるおじいちゃんがやっているアイス屋台にはまってしまった常連らしい。右にならえで、私たちも食べることにする。サンドイッチ用のパンを2つに切ったようなサイズの黄色いパンに挟まれたアイス。昔食べたバニラとシャーベットの中間くらいのアイスサンド300R(約10円くらい?この日は1ドル3790リエルだった。)本当に美味しい!暑さの中ではたまらない魅力的な味だ。
 そして目の前にそびえるマーケットに入る。この雰囲気、この凄い店ぞろい、この凄い人。ワクワクの虫がカラダを駆けめぐるのである。ルックアラウンドした後に、おみやげのTシャツ、クローマ(またかよ)、マップ、ポストカードなどを買う。もちろん交渉も忘れずに。
 そしてそっして、今度はゲストハウス近くのローカルマーケット(青空市場)へ。ここも凄かった。何が凄いって、やっぱり凄い。ここではおやつの屋台を攻撃する。ココナッツミルクの中に豆や寒天、白玉が入ったおやつを食べる。暑いから甘いものが美味しいのだ。歩いてるだけで体力が消耗してくるし。

 ゲストハウスのカフェに戻って一息ついてると、またもやシェムリアップで一緒だった旅人がチラホラ見える。行き先は皆一緒である。その時、チェンラで一緒だった命知らずのTくんがボロボロの出で立ちで目の前に現れた。話を聞くとこうだ。シェムリアップからレンタルバイクを返すためにプノンペンに戻る途中(これが既に無謀)バイクが転倒して気を失ったらしい。ぬかるみに落ちてドロドロになり負傷したT君を地元の人たちが親切にも手当してくれたらしい。傷口に歯磨き粉を塗って。服も洗ってくれたらしい。バイクは壊れ、バイクを運んでもらうタクシーのおじさんと交渉が決裂し、バックパックごとそのおじさんのタクシーに忘れてきてしまった・・・気がついて探したけれど既に遅かったらしい。カラダに付けた小さい貴重品ポーチ以外のものを失い、文字どおり身体一つになってしまったTくん。さすがのTくんもこれにはかなり凹んでいた。事の顛末を聞いているところに、物乞いのおばあちゃんが私たちのテーブルにやって来た。「俺よりあんたの方が綺麗な格好をしている!」「俺よりあんたの方がカネ持ってるよ!」とやけくそになっておばあちゃんをおっぱらっている。申し訳ないが本当に良いキャラクターをしているなと、Tくんに感動してしまった。こんな人普段ではなかなかお目にかかれない。

 夜、プノンペン初の夜。待ち合わせしたH本くんとT原さんと3人でセントラルマーケットの近くの食堂に向かう。夕べそこでご飯を食べ、かなりうまかったとの言葉を信じて。テレビでは日本の選挙か何かのニュースをやっている。青空食堂の店先にはうまそうな食材がずらり並んでいる。小さい二枚貝の蒸しものはビールにピッタリ!スープや青菜の炒めものも感動的にうまい!そして安い!
 3人で色々話をしているウチに、成りゆきで社会見学、置屋街を覗きに行くことになった。H本君は見るだけだし大丈夫だというが、夜の街、人気もなくかなりコワイ。が、立ち並ぶ1軒に入る。好奇心に負けてしまった私。ピンクづくしの店内には、クメール人とベトナム人の若い女の子が雛壇とソファにズラ〜リと並んで座っている。すぐ外に出るが、私としては結構ショッキングな光景だった。
 カンボジアは「ガン」「ガンジャ」「ガール」が「名物3G」だと聞いた。女の子は2ドルだという。女の立場の私は何だかとても悔しくなった。あそこに並んでいる女の子たちのなかには、農村から騙されて連れてこられた子も少なくないそうだ。いろんな背景があるんだなあ、と自分の贅沢さに一瞬ひいてしまった。そういえば、以前旅仲間の女友達が「カンボジアに旅行に行く男は信じられない!」と言っていたが(それは大体1995〜6年くらいの話)。1999年は大分旅行者も増え、警官も目立った悪さを働かなくなっている。治安が前よりは回復しているという事だ。でも銀行の入り口にはデカイ銃をもったセキュリティの人がいたりもする。そういえばカフェで女の子をはべらしている日本人のおっちゃんも何人か見かけたなあ。
 暗い道を3人で歩いて帰り、無事にキャピトルに到着。下のカフェで他3人と合流し閉店の10時まで話をした。夜は流石に危険だが、このホテルの横のこのカフェだけは各国の旅行者で賑わっている。

 疲れる。夜T原さんとカンボジアの情勢や世界の風俗について真面目に色々ディスカッションした。Tくんの次ぎにコワイもの知らずだろうH本くんに、ちょっぴり感謝する。色々な切り口から色々なものを見れるのが旅の醍醐味だ。さあ!明日はカンボジア本格観光だ!

next