やまーだでんきっ!

町田にヤマダ電機テックランドという店がオープンしました。パソコンの展示品処分が1980円、先着10台限りというチラシにつられて、馬鹿なことに僕は土曜日の朝7時ころ家を出ました。開店は10時だから、あわよくば「パソコン、ゲットだぜ!」という目論見です。

車で30分ほどかけて店に到着した時点で、目論見が甘かったことを僕は思い知らされました。開店までまだ2時間以上あるというのに、店の前には50メートルほどの人の行列ができていました。これではとうてい件のパソコンを入手することなどできない。僕は「ふふっ、俺ぁまだまだ甘ちゃんだな」と心の中で自嘲しながら列の最後尾につきました。

しかし「まだまだ甘ちゃん」という僕の自己認識は、それでもまだ甘かったということがほどなくして明らかになりました。件のパソコンなどの日替わり目玉商品の列は店の裏側にあり、パソコンを含めほとんどの目玉商品はすでに定員に達しており、パソコンについては最初の客は10日前から並んでいたのです。

僕は改めてこの世界の広さと奥深さを思い知らされました。いくら格安とはいえ、パソコンごときに10日前から並ぶ人間がいるとは・・・。

結局僕は、下半身が冷えるという妻のためにセラミックファンヒーターを数千円で購入したにとどまりました。商品は店の裏手の倉庫で受け取るのですが、倉庫の前には、正直にいって薄汚ない感じの人たちの一群があり、ちょっと異様な雰囲気でした。みな頭髪はぼさぼさで、段ボール箱を立てて風よけにしている人がいるかと思えば、段ボール箱に入って首だけだしている子供もいます。ちょっと見た感じ、難民キャンプあるいは新宿のホームレスという雰囲気があります。

「おや、彼らはなんだろう」と思った瞬間、僕はすべてを理解しました。そう、彼らは日替わり目玉商品のために並んでいる人たちなのでした。開店セールは明日、明後日まで続きます。おそらく彼らは明日の目玉であるビデオデッキ880円、あるいは明後日の目玉である冷蔵庫880円などを狙っているのでしょう。ふと横を見ると、店を囲う金網にはカラフルなテントが数張り干してあります。彼らも何日かをここで過ごしたに違いありません。

まったくすごい人たちだ。僕は驚きをとおりこして感動を覚えました。彼らの努力に対するものというより、そういう人たちもいるこの世界の広がりに。そんな感動を胸に僕は帰路につきました。

1998/1/24

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