二子玉川園までは1時間半ほどかかった。教えられたとおり高島屋の側へ駅を出て、タクシー乗り場へ。並んでいたのは二人だけだったが、土曜日の夕方とあって道が混んでおり、タクシーはすぐにはこなかった。結局、10分くらい待った。目的のマンションに着いたときには約束の5時を30分ほど過ぎていた。
そのマンションは、黒沢映画などで有名な俳優が運営する私塾に隣接していた。名前を言うとタクシーの運転手も知っていたから、地元でも名のとおったマンションらしい。共同玄関のチャイムで名前を告げ、中へ。建物の構えは立派だったが、内装はさらに豪華だった。部屋にはホストの夫妻と先客が二人。私のほかにもあとから二人くるという。
それは、以前勤めていた会社の社員やOBが数名集っての忘年会だった。年に一回、会うか会わないかという程度の緩やかなつながりだが、会えばすぐに話しが弾むというメンバー。同業者からベテランと呼ばれることもある年代の自分も、この中では一番若く、虎やライオンの群れに紛れ込んだ子猫のようなものだ。とはいえ、かつて”同じ釜の飯を食った”気心の知れたもの同士。こちらも緊張することもなく、ゆったりとした気持ちで会話、食事、飲み物を楽しんだ。
その会社に自分が勤めていたのは10年前のことだ。自分はその後、小さなマニュアル制作会社に所属し、在宅勤務でライターをしていた。その制作会社もこの10月で辞め、現在はフリーランス。この忘年会では、先輩からキャリアアップに関しての話もいろいろ聞き出したかったのだが、飲み食いしているうちにどうでもよくなってしまった。居心地のよい時間・空間を過ごせたから、それで満足しよう。(1999.12.20)
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