ラスト・ダンス

フラメンコ

久しぶりに妹のフランコを見た。かつてはプロの踊り手になることを志した妹ではあるが、今回が最後の踊りになるということで、彼女 のほうから招待をしてくれたのだった。昨年結婚した彼女は、プロの踊り手になることの代わりに、よい家庭を築くことを目標としたのだ。

妹の踊りを見るのは何度目だろうか。5回か6回か? 最初のころに比べるとずいぶんと上手になったようだ。初級の踊り手と比べると、それは明らかだ。発表会では初級者から上級者へという順番で登場するようだが、今回妹は一番上級のグループとして登場していた。

初級者と上級者の違いはどこにあるか。技術的には、体を動かすスピードであるとか、静と動のメリハリであるとか、キメのポーズの美しさであるとか、いろいろな要素があることだろう。ただ、こちらは素人なので、技術的なことを正確に指摘するのは難しく感じる。しかし全体的な印象として、次のようなことがいえる。初級者の場合は、踊っているというよりは、決められた振り付けどおりに体を動かしているだけのように見える。まるで体操でもしているかのように。それに対して上級者は、自らの意志で体を動かし、まさに”踊っている”という感じがする。そして何かを表現しているという感じがする。さらにいうなら、大勢の観客に対抗するかのように、どう? 私を見て! この体の動きを見て! と強く自己をアピールしているようにも見える。ことにフラメンコ教室の代表者の踊りには、その自己アピールが強く感じられ、それが踊りを魅力的にしている。逆に妹の踊りに物足りないところがあるとしたら、それかもしれない。

体操のごとき初級者の踊りがつまらないかというと、そうでもない。不純な見方とのそしりを覚悟で言うが、若い異性が体を動かすさまを見るのは、それだけで心地よいものだ。案外そういうところに踊りというものの本質の一端があるようにも思うのだが…。

(2001.1.21)

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