オフ会レポート

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『憂い顔の童子』読書会

2002年11月9日、早稲田奉仕園キリスト教会館6階9号室にて読書会を行いました。参加者は、つるさん、ちゃまんさん、浜崎さん、加藤さん、白石さん、伊藤。小説に出てくるCD(「オフィチウム」)をかけながらの読書会です。

読書会のようす

ドン・キホーテという騎士道物語のパロディ作品を下敷きにした構成で、大江氏自身の言葉によれば「歩みは軽く、荷物は重く」という小説、それが『憂い顔の童子』なわけですが、これまでの作品と違った雰囲気の本作には皆さん戸惑いを覚える部分がいろいろあったようでした。「屋根裏からの転落やジグザグ行進などのエピソードはどういう意味があるのか」「これと比べることで『取り替え子』のよさが際立つ」「これまでの作品にあったような人間の苦悩が描かれていない」といった疑問、不満の声が聞かれました。その一方では、「自分にとって大切な本になるかもしれない」という声もありました。私の個人的意見ですが、提出された疑問点の多くも、ドン・キホーテの物語と引き比べるというか、これも一つのドン・キホーテ物語であると考えることで納得できるようにも思えます。

批評家の実名を出しての批評への批評といった部分など、大江さんのエネルギーが感じられるということも話題になりました。こういう元気のよさがあるのなら、次回作が最後の小説になるとの話ではありますが、まだまだ書き続けてもらえる可能性もゼロではないような気がします。

早稲田奉仕園の会議室を借りたのは夕方5時から8時まででしたので、そのあとは近くの居酒屋に場所を移し、おしゃべりを楽しみました。(2002/11/10記す)


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