オフ会レポート

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新年会(『人生の親戚』読書会)

 2003年1月18日の正午から、前回と同じ早稲田奉仕園キリスト教会館にて開催。参加者は、つるさん、しみずさん、じゅんさん、ちゃまんさん、羊羹さん、伊藤。

 今回は、私がヤフーオークションで仕入れたビデオ『静かな生活』の鑑賞でスタート。観るのは三回目ですが、退屈しないですねえ。初めて観たという方が多かったのですが、好評でした。ビデオの最後のオマケがまたよかった(これは私も初見)。伊丹十三のナレーションで、原作者である大江さん、主人公のモデルの光さんの紹介、公開初日の挨拶などの映像があるのですが、ハイライトは大江さんと光さんが撮影現場を訪問したときのシーンです。俳優たちの演技を30分ほど見つめていた光さんが、モニターで再生されている渡部篤朗の演じるイーヨーを指差して、「実はあれは僕なんです」と隣のゆかり夫人に静かに話す。そばにいた伊丹十三は、映画を作っていてこれほど嬉しかったことはなかったと感じたそうです。

 読書会のほうは、『人生の親戚』を取り上げました。受け入れがたい悲劇的かたちで子供たちを失った「まり恵さん」の人生を友人である作家の視点から描いた小説です。皆さんの話をまとめることは自分には無理なので、書き留めた発言の断片を列挙することにします。

・『燃えあがる緑の木』を除けばこれが一番好き

・人間には誰でも困難を抱えていかなければならないときがあると思うが、そういうとき、まり恵さんがしたように魂のことをすることが大切だと思う

・まり恵さんの人物像が鮮明(映像も目に浮かぶようだ)

・自分の人生は失敗だったと語りながらも前を向いて生きるまり恵さんの姿に慰めを感じる

・小説を物語ること、物事の本当の姿を表現することの不可能性が、この小説では繰り返し述べられている

・信仰というものについて考えさせられた(信仰を持たないものでもそれに近い感情を覚えることがある)

・瞑想によって「いま」を三通りで感じとるやり方が、ベンヤミンなどの哲学の話を連想させて面白い

・聖書の話のような聖女伝説という印象がある

・無垢(イノセンス)とセンチメンタリティの話が興味深い

・アンチクライストのアンチが「反」のほかに「前」という意味で捉える考えかたが面白い、「偽」という見方もできる

・英語版では、語り手のKがけっこうかっこよい印象に変わっている

・フラナリー・オコナーなど大江さんが好きな女流作家はみな独特

 

 ほかにもいろいろな意見が出ていました。1月4日から始まった読売新聞への連載も話題に上りましたね。

 読書会のあとは前回と同じ居酒屋へ。

集合写真

(2003/1/19記す)


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