オフ会レポート

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『新しい人よ眼ざめよ』読書会

日時:2007年5月19日(土)午後1時から

会場:早稲田奉仕園

参加者:イオ、金田、サーチ、スヌーピー、ちゃまん、yoshimi、じん、つる、真春、いとう

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読書会での話題を私なりに分けてみると、次のようであったと思う。

・作品の構成

・ブレイクの詩

・イーヨーとの共生

・家族をモデルにすることの良否

 

作品の構成については、非常に複雑な構造になっていて、その構成が絶妙であるという意見があり、僕もそれに大いに賛同。この見事な構成をどこまであらかじめ詰めて書いたのか興味があり、意見を皆さんにうかがったところ、小説を書いた経験のある方から、ある程度は構成は決めてあるはずだが、細部については書きながら作っていく部分も多いだろうという話があった。この作品は今年、「著者による加筆訂正」を行ったうえで再刊となったものだが、どの部分が変わったのかについては、語句の表記と若干の英文和訳について修正があった程度という話が出ていた。

 

ブレイクの詩について。『 新しい人よ眼ざめよ』の各編はいずれもブレイクの詩に由来する題名が付けられており、ブレイクの詩の解釈が内容的にも深く関係していて、随所にその引用が出てくる。その部分については感情移入できない、飛ばして読んでしまう、といった意見がある一方、大江さんの解釈を通じて触れるブレイクの詩は非常に魅力的という人も。しかし、その場合も、ブレイクの詩自体を実際に読んでみると、長大であったり難解であったりして、なじみにくいという意見が多かった。

 

イーヨーとの共生は、本作の中軸をなすものだと思う。イーヨーのかわいらしさに惹かれるという意見もあれば、イーヨーに家族を重ね合わせながら読んだという意見もあった。政治の話も絡むが、物語中、イーヨーの今後について、「妻」が「自分ら障害児の親はこの子より一日でも永く生きて面倒を見ることができたらと(中略)考えています」と言ったのに対し、沖縄の施政権返還運動の活動家である「Fさん」がそれは敗北主義だといい「この憲法パンフを胸ポケットに入れさせて置いてですね、困ったことがあれば、障害児がハイといってこれを出す。それだけで、すべて解決。そういう社会をですね、実現しなければ、だめですよ。それをめざさないかぎりは、みな敗北主義ですよ。」と述べるくだりがあり、この部分に決定的な影響を受けたという話があった。

 

議論となったのは、家族をモデルにすることの可否。書かれる側に配慮すべきだというのが大江さんの立場なら、子供たちのことも書くべきではないのではないかという問題提起があった。家庭内のことをさらけ出すようなことに対して、いい感じがしないという声を聞くという話も。光さんは了解しているのではないかという意見もあったし、僕としても家族の場合はそれを受け入れるしかないのではないかという気もするのだが、すっきりとした結論には至らなかったように思う。

 

読書会は、1時開始で4時に終了。その後、高田馬場に移動して打ち上げ。まだ明るいうちから始めて、数時間たっぷりとおしゃべりと飲み食いを楽しんだ。

(2007/5/20記す)


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