オフ会レポート

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『みずから我が涙をぬぐいたまう日』読書会

日時:2008年12月20日(土)午後14時〜午後17時

会場:早稲田奉仕園 101号室

参加者:金田、タカコ、HAL、印南、yoshimi、 スヌーピー、ちゃまん、真春、いとう

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今回は初参加のタカコさんがいらしたので、全員の自己紹介からスタート。それから、今年、有志で制作した映像作品「Rejoice!」の上映会。このDVDに対する大江さんからのお礼のハガキの紹介、イギリスパンの会で送ったクリスマスカードへの返事の紹介なども行う。

読書会の課題図書は「みずから我が涙をぬぐいたまう日」(1971)と「月の男」(1972)の中編2作からなる『みずから我が涙をぬぐいたまう日 』。どちらの主人公も「天皇」の存在に強く捉われており、天皇自身は登場しないもののその存在がもう一つの主人公となっている。噂される大江さんの次回作『水死』の主題もまた天皇ということで、今回この本を読書会で取り上げることになったしだい。

まずは、天皇が「アラヒトガミ」であった時代のことを覚えておられる真春さんから当時の話をうかがった。東京をはるかに離れた地方においても、天皇がまさに神として扱われていた、その圧倒的な徹底ぶりを、実際にそれを記憶している方から直接うかがえたことは貴重だった。

「みずから我が涙をぬぐいたまう日」のほうは、狂人のような主人公の口述を記録した内容がメインで、そのあいだあいだにいわゆる神の視点での記述が挟まるという構成で、さらに口述の部分が三人称(神の視点)であるかのように語られているために、非常にわかりにくい構造になっている。しかも、文体自体も1センテンスが長く複雑。全体として独特の異様さが際立つ。ある意味で大江さんらしさが強く感じられる作品で、その点を評価する声が多かったように思う。

超国家主義や三島由紀夫の自決との関連についても議論になった。超国家主義のマインドコントロールに支配されてしまった者の悲劇、三島由紀夫の自決に対する大江さんからの回答である、といった見方が示された。

母と対立しつつも、結局は母によって涙をぬぐわれるという主人公のあり方ついても話が出た。

「月の男」のほうは時間があまりとれなかったのだが、細木というキャラクターについての意見が多かった。三島的だ、小中陽太郎的だ、伊丹十三的だといった意見も。

夜は、高田馬場駅前の暴動前のような雑踏を通り抜けて神田川沿いの「いろりダイニング松橋」へ。おいしい料理と飲み物を味わいながら忘年会。さらに2軒となりの焼鳥屋で2次会。今年のこと、来年のこと、文学のこと、映画のことなどあれこれ。

早稲田奉仕園にて 早稲田奉仕園にて

ファンクラブの充実した一年に感謝。(2008/12/21記す)


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