オフ会レポート

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『水死』読書会と新年会

日時:2010年1月30日(土)午後14時〜

会場:早稲田奉仕園 102号室

参加者:HAL、つる、yoshimi、金田、いとう、タカコ、katsumi、スヌーピー、印南、真春、しま

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冒頭、大江さんに「大江健三郎ファンクラブ通信」をサイン会会場で手渡ししてきたyoshimiさんからそのときの模様を報告していただいた。さらに、スヌーピーさんから、モーツァルトK550とベートーヴェンのピアノソナタ第1番が似ているという『水死』に出てくる話について、両者の譜面を提示し実際にCDを鳴らしながらのわかりやすい解説もあった。

読書会のほうは、2年ぶりの新作ということで大いに盛り上がった。いくつか目立った感想・意見をまとめてみよう。

・読みやすさ
これまでの作品と比べ文章がわかりやすい。また、過去の作品世界の知識を前提としているかのようにも見えるが、登場人物の描写なども丁寧で、初めて大江文学を読む読者にもわかりやすいのではないか。

・小説としての面白さ
起伏に富んだ盛りだくさんの内容の物語で、すらすらと読み進める。(どのエピソードも盛り上がりきれず物足りない、という意見も)

・女性たち
アサさんやウナイコの物語にもなっている。女性たちへの励ましの思いが込められている。(ウナイコの内面が見えない。過去とどう向き合っているのか、どういう人なのか。という疑問の声も)

・老い
水死は、老いる前に死ぬこと。水死せずに老いていって、ある意味ではぶざまかもしれない生き方をしていくという意志を示した作品ではないか。
小説は作家の年齢を反映するもの。『水死』には大江さんの老いが表されている。
レイトワークとして、良い意味で、やりたい放題といった感じで書いているのではないか。小説として破たんしている部分もあるのかもしれないが、それも折り込み済み。

・演劇
客席の人間が舞台に参加したり、役者が複数の役を演じたり、解説的な部分と本編との境界があいまいな進行など、岡田利規のチェルフィッチュの舞台を連想させる。(観客を巻き込む手法は60年代にもあったという声も。また、演劇の部分については、賛否両論があった)

・沖縄問題
ウナイコと伯父の関係が、沖縄問題と二重写しになっているように感じられた。

・ラスト
たたみ掛けるような盛り上がりは、小説としてよくできている。
この作品のなかでもっとも美しい文章。
ウナイコは再び強姦されたのかどうか?(意見が分かれた)
よくわからなかった。
女性中心の物語だが、最後に大黄が決着をつけるという点に疑問を感じた。

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読書会のあとは、高田馬場の「土風炉(とふろ)」へ。江戸時代の豪壮な旅籠といった雰囲気の店。ここで新年会。近々、海外の新天地へと発つ方が複数いて、その送別会といった雰囲気にも。そして二次会は「鳥よし」へ。

午後2時に始まり夜の11時まで9時間たっぷり話したのに、まだ話し足りない。そんな気持ちを残しつつ解散。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。(2010/1/31記す)

早稲田奉仕園にて

土風炉にて


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