口内炎の恐怖

 

 楽器を吹くことをを仕事に、あるいは趣味にしている人々にとって、最も恐い病気はなんだろうか?そう考えると、カゼも二日酔いも交通事故も多いのだが、どれも“ある程度の注意”でなんとかなる。カゼひいたって一晩で治る場合もあるし、交通事故にはそんなに遭うもんじゃないし、酒が飲めない人に二日酔いは関係ない。しかし、どんな人でも、突然貧乏くじのようにかかってしまう不思議な病気がある。それが口内炎ではないだろうか。一般の人ならイライラした1週間ほどをおくるだけの話(いい話ではないけれど)だが、音楽を仕事なり趣味にしたりしている人には、まさに地獄の責め苦だ。他にもいろんな病気があるだろ!というイタイほどのツッコミが聞こえてくるが、これは僕の大いなる思い込みとタイトルをつけてしまった都合と現在口内炎を抱えてヒサンな生活を送っている現状とそれに対する腹いせの気分があるので、口内炎は恐いぞ、ということが今回のテーマなのである。なお、当然のことながらこのエッセイは医学情報雑誌投稿論文の原稿ではなく、僕の勝手な知識と感想を羅列したものである。まるごと信じないでね。

 それにしても、実に不思議な病気である。間違いなく病気なのではあるし、食事をする気がなくなるくらい痛い。でも、ほったらかしたところで1週間〜10日もすれば自然に直ってしまうし、命に関わるという心配もない。そのせいか、例えば友人などに「口内炎が痛くてメシ食えなくてさ」などとしゃべったところで、ホンキで心配してくれる人などいるまい。「ふーん、大変だねぇ。しみる?」で終わってしまうのではなかろうか。僕のように楽器を吹くことを趣味にしている人間にとってみると、一番の楽しみである楽器を吹くことができなくなってしまうので、ストレスが溜まる。体そのものはピンピンしているし、おしゃべりだってできるし、熱があるわけでもない。しかし、口の中は大変に痛い。パートが打楽器系だったら、(たぶん)口内炎なんか気にしなくていいのに・・・もちろん、ふだんの生活では口内炎の“こ”の字も忘れた生活をしている。で、いつのまにやら口の中に違和感を感じることになるのだ。気をつけていないのは確かに悪いのだが、口内炎ってなんで起きるの?

 そこで便利なのがインターネット。いろいろ口内炎について調べてみた。すると、それをマジメに紹介しているサイトのなんて少ないこと!「ほっといても1週間から10日で自然と治る」程度のことばかりで、今すぐ直したいんだベラボーめ、という江戸っ子な人向けのことが書いていない。とりあえず歯医者か口腔外科で見てもらって薬をもらえみたいな書き方もあるが、市販の薬でごまかす方法はろくすっぽ紹介されていない。硝酸銀を使って焼き切るというテもある、というオソロシゲな紹介もされているのだが、痛いのかどうか、ほったらかすのとどう違うのか、治るまでにどれくらいかかるかなど、やはり知りたい肝心なことが書いてない。そんなに口内炎について深く悩んでいる人はいないのだろうか。

 そんな口内炎の原因は、疲労・睡眠不足・ヴィタミン不足などだそうな。不規則な生活や食事の問題など、要するに忙しかったりなんだかんだで不規則な日々を送ってしまうと、自動的に口内炎予備軍となってしまうという。もちろん、遊び過ぎに飲み過ぎといったような、自分が悪い場合もあるけれど。ともかくそういった問題点の積み重ねが、口内炎として出てくるのではないだろうか。不思議なもので、忙しかったり不規則真っ只中なときには、口内炎はそんなにできないような気がする。そのときは気合いが入っていていいのだろうが、その後にうまく疲れをとれなかったときなどに、どーんと発生してしまうような気がする。僕はそんなところなのだが。

 で、いったん口内炎になってしまうと、大変なのが食事だ。辛いもの・酸っぱいもの・熱いものなどに敏感に反応してしまう。トマトソースのスパゲティとか、酢豚とかは地獄(実験済み)。じゃあ冷たいものをと、アイスなんかは問題ないのだけれど、ソフトクリームのコーンには要注意(実験済み)。和食系統は比較的痛くないものが多いけれど、けっこう危険なのが味付け海苔(実験済み)。どれも涙目になること請け合いである。こうなってしまうと、食事をするのがイヤになってしまい、ついつい食べ物を丸のみしてしまいがちだ。でも、それがいいわけはない。とすると、バランスのとれた食事をキチンととることって、ナカナカ大変なのだということに、いまさら気づかせられるのだ。口内炎にはヴィタミンB2/B6の不足が原因となることがあるというのだが、痛いのにわざわざヴィタミン摂取のために食事だあ!なんてならないもの。こうなっちゃうと便利なのがヴィタミン剤。頼るつもりはないけれど、補助として飲んでおいた方がいいかもと思い、つい手を出してみた。これで僕の体内では、せっせとヴィタミンB2/B6が生成されているはずである。なお、「メシ食うと痛いから酒飲んで過ごした」というのは最悪なのだそうな。口内炎そのものは痛くないけど、治りが遅くなるそうです(これはホント)。

 そして、実際に治療するというと、とにかくてっとりばやいのはそこらへんの薬局で売っている口内炎薬を購入することだろう。僕が買ったのはパッチ・タイプの貼り薬で、患部に直接貼れるから、効いてるぞっていう気がしてよい。同時に、いつか剥がれるのではないかという心配と、ヘンな物質が口の中に貼り付いている違和感もあるのだが・・・他にも塗り薬タイプがある。口内炎そのものは大した病気ではないのだが、それでもこまごまと薬が市販されているのにはオドロキだ。薬なんてないと(勝手に)思い込んでいたから、目からウロコが落ちたような気もした。

 くり返すことになるけれど、口内炎なんてホントにくだらない、とるにたりない病気であると思う。蚊に刺されたかゆみと一緒で、死ぬことはないだろう。しかし、それはそれでとても腹立たしいものだ。1日3回、楽しいはずの食事が憂鬱な時間に早変わりしてしまうのだ。おー、くわばらくわばら。みなさんも口内炎には御注意を。

 

2001/08/18

Back to menu page