飛行機に乗って

 気づけば、丸2ヶ月以上もエッセイをほったらかしにしてしまった。まさかこんなに忙しい日々が続くとは思っていなかったのですが、ごくごく一部の僕のエッセイ・ファンをやきもきさせたことでしょう。すいません。と、平謝りに謝っての休載(?)明け第1回のネタは、前々回の船に続いて今度は飛行機の話。

 先日、用事があって町田に行った。その帰り、テキトーに一般道をドライブしてたら、ふと飛行機が見たくなった。真っ昼間から何をしたいんだという気もいささか、いやけっこうしたけれど、とにかく無性に飛行機が見たくてたまらない。ドライブがてら成田に向かうことも頭をよぎったが、なんぼなんでも遠い。そんなわけで手近な羽田空港に向かうことにした。

 夏休み期間中の羽田空港は、当然ながらムチャクチャ混んでいた。なんと、駐車場が満車である。20分待ちと案内が出ているが、僕みたいにたかだか飛行機を見物に来ただけで、20分も待つハメになるとは・・・意地になって、駐車場待ちの列に並んでみた。結局、待ち時間はたった5分ほどだったが、駐車場内の空スペースを捜して走り回っていると、なんでこんなに混んでるんだよ!との思いが先行する。いくらなんでも混みすぎである。

 実は、僕は真っ昼間の羽田空港に来たのは、これが初めてである。だいたい出発するときは早朝、到着するときは深夜だ。先月に友人を迎えに来たときなんか、深夜かつ台風のまっただ中だった(よくまああの時のANA機は着陸したものである)。つまり、混んでいる羽田を見るのは初めてなのである。早朝はまだ人も少なく、深夜は閑散として、出発ロビーなんか警備員しかいないのだが(あたりまえ)・・・ともかく、僕は飛行機が見たいだけなので、まっすぐ展望フロア・バーズアイに向かった。

 暑い。とにかく暑い。屋上だから直射日光がカンカンと、容赦なく照らしてくる。そんなバーズアイは、子供達で埋め尽くされていた。みんなこれから出発だろうか?それとも僕のように見学のみ?ともかく、ポケモン・ジェットが飛んできただけで大騒ぎである。汗だくのお父さんとお母さん、家族サービスも大変だ。そんなホノボノとした暑い空間で、1時間以上も1人飛行機を眺めた。

 僕は鉄道が好きであるし、いままで交通手段はもっぱら地上ばかりだった。なんせ、20歳になるまでに飛行機に乗ったのは、わずか3回。小学生のときに沖縄往復(詳しくは覚えていない。航空会社はどこだったかな?)、中学生の時にオーストラリア往復(成田からカンタス航空と、シドニーからメルボルンまで国内線)、そして初めての北海道のときに、帰りのみ千歳から飛行機を利用している(機内でコーヒーとおかきをもらった。変わった取り合わせである)。つまり、ほとんど僕には縁のない交通手段と言って過言ではないのだ。なんせ、僕の行動パターンだと、極めて飛行機に乗る機会は少ない。パスポートだって、失効してから10年もほったらかしだったのだから。

 ところが、昨年のネパール旅行から、飛行機が目の前にやってきた。昨年はネパールに行き、北海道へも往復飛行機だった。今年はスキーをしに北海道に行ったが、それも飛行機。さらに今月はまた北海道へ、それから中1日でブータンへと、飛行機に乗る予定がけっこうある。これだけ急に縁が深い乗り物となったのもちょっと不思議だが、ともかくだいぶ乗り馴れた交通手段となった。

 もっとも、不満がないわけではない。なんせ、列車のようにウロチョロできない。座り飽きたら立ち歩くのが僕のクセなのだが、機内で歩き回るのは迷惑なだけだ。日本の国内線なら、機内放送の落語を楽しんでしまうのだが、それもなんかの案内でしょっちゅう中断させられ、集中できない。寝てればいいではないかと言われそうだが、僕は飛行機ではなぜか寝られないのだ。国際線では、コーヒーをくれと言ったらコーラが出てきた苦い経験から、あまり英語で喋りたくない(笑)。ついでに、出発時刻の2時間前に集合というのもキツい。列車だったら、出発1分前でも十分に間に合うのに・・・

 と、いろいろ書いてしまったが、では飛行機は嫌いかといわれれば、そうではない。飛行機には飛行機なりの味わいがあるし、単なる移動手段としてだけ座っていたら、なんとも味気ないではないか。仕事での移動が多い人はそう思わないだろうけど、僕は気楽な旅行者だ。なんとなく目の前の機内誌を3回くらい読んじゃうのも、またいいではないか。

 でも、どーしてもシートベルトだけは外したくない僕なのである。

2000/08/04

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