コンビニについて

 

 僕は、コンビニがけっこう好きである。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ampm、サンクス、マイチャーミー、サークルK、スパー等など、いろんなチェーン店があちこちに乱立している。ひどいときには、十字路それぞれの角に違う店鋪が並んでいたりする。誰も気にせずに便利のいい店を利用するだろうが、冷静に考えるとものすごい。

 なんにせよ、僕は基本的にコンビニ好きである。しかし、毎日買い物に行くような好み方ではない。コンビニの店鋪という空間が好きなのである。広すぎず、狭すぎず、こぢんまりとした空間にありとあらゆるモノが揃い、欲しいものはだいたい揃う店。最近はあんまり買うものがないのと、ドリンク類を自販機で済ますようになったので寄らないのだが、数年前まで、週に必ず4回はコンビニを利用していた時期が、3年ほどあった。いや、これは正確な表現ではない。キチンと書くなら、「コンビニで生活していた時期」となるだろうか。

 それでもちょっと不正確な気がするが、要するに、コンビニでバイトをしていたことがある。高校生のころは長期休暇の間だけだったが、大学に入ってからも、時間が比較的自由になることと、休みが取りやすい(代わってもらいやすい)ということで、時給が安いのにもメゲずに、コンビニでバイトをしていた。僕がバイトをしていたのは、“ジャストスポット”という、とってもマイナーなコンビニである。そこそこ大きなコンビニチェーンがつぶれて経営母体が分裂し、複数の経営母体となったものの、基本的には同じ“ジャストスポット”を名乗っているというヘンなチェーンなのだが、1都2県に100店鋪以下しか展開していなかったため、営業網としてはけっこう貧弱だった。公共料金は扱っていないし(200店鋪以上でないと扱えない)、お弁当温めサービスはセルフだった(よく物議をかもした)。航空券を買えるようなシステムもないし、なんと“おでん”もなかった。店員にとっては楽勝なのだが、冷静に考えれば、お客さんにとっては“要所要所で不便”という、けっこう使えない店鋪だったかもしれない。公共料金をやっていないことへの文句や、酒たばこを置いていないことへの苦情なんか、何回聞いたことだか。

 でも、そんな店でずーっとバイトをしていた。いい同僚に恵まれ、良く言えば放任主義・悪く言えばいいかげんな店長のおかげで、僕は“副店長待遇アルバイト”として、けっこう自由に働いていた。なんせ、お弁当やパンの発注をするのは僕である。新メニューが登場したら躊躇なく発注したし、マニア好みの品々を取り揃え、それでもほぼ完売させていたという、冷静に考えればムチャクチャなことをしていたのである。残念ながら、大学生活が忙しくなってしまって辞めたのだが、バイトのクセに仕事は楽しいなと思っていたので、けっこう残念だった。

 さて、コンビニ事情である。よく、“コンビニのバイトって楽だよね”などと言われたことがあるのだが、それについて言っておきたい。コンビニでバイトすることは、メインの仕事はレジ打ちである。これはけっこう楽しいし、そんなに難しい仕事ではない。忙しい時間帯を30分もやるとキレそうになるのだが、とにかく新人に最初に教えるのがレジであるし、そればかりやっていれば、かなり楽である。

 だが、もちろん商品が売れれば補充をしなければならないのだが、それをサボると大変なのだ。例えば、ドリンクの冷蔵庫。1時間に1回補充をしたとすると、そんなに作業に時間はかからない。のん気にやってもせいぜい5分、真夏ならちょっと涼んだ程度で終わってしまう。とっても楽勝である。ところがあるときのこと。僕はドライブの帰りに、バイト先に立ち寄った。時間は午前1時をすぎ、客はまったくいない時間帯である。店に入ると、深夜勤の人がキレそうになりながら、雑誌を並べていた。冷蔵庫はすっからかん、几帳面なその人にしては、あまりにもヒドい。大量に売れたんですか?と聞いてみると、22時でアガったバイトの人が、冷蔵庫にまったく補充をしないで仕事を続け、さっさと帰ってしまったそうである。その途端に客が増えて補充ができず、そのうちに乳製品が納品され、雑誌が納品され・・・と、まったく手がつけられなかったそうな。あまりにもすっからかんなので手伝うことにしたのだが・・・仕事の早さに絶対の自信を持つ僕が、なんと30分!ちょっと立ち寄って深夜勤の人と雑談でもしよう、忙しければちょっとだけ手伝おうと思ったのに、悲惨なタダ働きとなってしまった。ちょいちょいこまめに動いていれば大したことのない作業が、ほったらかしたら最悪の事態になった例である。

 まあ、そこまでヒドいのはなかなかないけれど、納品が重なって店内がごったがえしたり、万引き犯人をとっ捕まえてボコボコ殴っている店長を止めたり、一生懸命店内を掃除したのにムラがあって床に模様ができていたり、突然アイス用の冷蔵庫の電源が落ちて中が全滅したり、常連のヤ○ザの愚痴を聞いてあげたり、倒れている酔っぱらいのために救急車を呼んであげたり・・・

 その他、エピソードには事欠かない変わった店鋪だったが、一つの仕事に対する専門性でなく、いろんな事態に幅広く対応することが求められるのが、コンビニでのバイトなのである。一応、マニュアルには「レジ打ち、品出し(補充)、清掃」なんて業務内容を説明しているけど、それだけでは済まない。たかだかコンビニとはいえ、バイト気分で適当にやっていたら、確実に客足が落ちる。“やるべきこと”をキチンとやれば客足はのびるし、売り上げも上がる。たかだかコンビニなのにとは思うが、レジ〆をやって売り上げをチェックしていると、それが数字となって如実にあらわれるのである。おそろしいものである。

 コンビニのバイトなんて、アルバイト情報誌を見れば山のように掲載されているし、働きやすく辞めやすいバイトの典型のように思われているかもしれない。でも、やってみるとモノを売るってことが、けっこう面白く感じられてならない。だから、けっこうやりがいのアルバイトなんじゃないかな、と僕は思っている。

 

2001/05/25

 

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