不忍池徘徊奇行

 

 なんと、半年ぶりの更新となってしまった。ネタはちょこちょこあったにもかかわらず、忙しかったりめんどくさがったりした結果の体たらく。まったく、決意(実は、月に2本のペースでエッセイを書こうと決意していた)なんてものはアテにならないものだ。まあ、それもすべて自分のせいなんだけど・・・

 さて、今回は自宅の近所のことを書いてみたい。広義では“日帰り一人旅”なので旅行記に入れることも考えたのだが、それほど大したものではないので、やめることにした。そんなことを言い出したら、近所のコンビニに買い物に行くのも、旅行記になってしまう。やはり難しいことを考えずに、エッセイの中で気楽に書けたらいい。そんなことから、久々にエッセイをスタートしたい。

 いきなりだけど、“不忍池”・・・読めますか?「しのばずのいけ」と読みます。JRの上野駅から徒歩5分。京成上野駅の裏手にある池で、大して広いわけではなく、10分もあれば1周できてしまう池である。池は3つのブロックに分かれていて(“品”の字状態)、ハスがやたらと生えているハス池、ボート(もちろん有料)に乗れるボート池、上野動物園とつながっている園内池で、それぞれを区切っている部分は遊歩道になっている。で、その3つの池のすべてに接する形で、弁天様が祀られている弁天堂がある。池はどれも汚い。あまりの水質の悪さに、水質改善用循環システム(金魚の水槽に入れるぶくぶくみたいなの)があちこちにあるが、あんまりきれいになったように思えない。むせかえるような悪臭はなくなったけれど、それも程度の問題だ。ともかく、遠くから見れば都会のビルの谷間のオアシスで憩いの場となっているが、池の畔まで行けばちょっとがっかりするだろう。そんな池である。

 ところが、この池は冬になると大いに賑わうのである。シベリアから越冬のためにやってきたカモが、大挙して押し寄せるからだ。その数、ピーク時で1500羽。10年前はこの10倍もやってきていたのだが、水質改善循環ぶくぶくが怖いのか、ここ数年でどーんと減ってしまった。その代わりに、東京湾からカモメ(ユリカモメがほとんど)がやってきて、カモをいじめている始末である。だが、カモたちはメゲない。毎年、冬が近づけば必ずやってきてくれるのである。バードウォッチングってほどではないかもしれないが、すぐそばにいすぎて気にも止めなかった鳥を、興味をもった別の目で見てみると、なかなか新鮮なものだ。今回は、僕がこの冬に急に興味を持った、カモにスポットを当ててみたい。

 みなさんは、カモって何種類くらい知っているだろうか?超有名なのは、皇居のお堀端で一躍全国に名をとどろかせたカルガモと、いわゆる“カモ鍋”の具にするアイガモだろうか。でも、この両者は不忍池ではごく少数で、どっちも両手で十分数えられる程度(5〜6羽くらい)しかいない。つまり、不忍池のそこら辺にいるカモを指差して、しったかぶって「あっ、カルガモがたくさんいる!」なんて言おうものなら、お笑いぐさである。だって、いないものはいないんだから。じゃあ、不忍池にいるカモはいろんな種類がまんべんなくいるのか?答えはノー。限られた種類がゴソっといるだけなのだ。つまり、不忍池のカモがなんなのか判別するのはけっこう簡単で、コツさえつかんじゃえば、カモ博士にでもなったような気分(あくまで気分)にもなれる。ここは図鑑ではないので詳しい説明はしないけど、とにかく“見た目”勝負ってことで、不忍池にいるカモを紹介いたしましょう。なお、撮影はすべて僕で、画像の後の数字は撮影日です。

 いきなりクイズ。不忍池にいるカモの最大勢力は何でしょう?
 間髪入れずに答えにいってみると、それはオナガガモとキンクロハジロの2種類である。さっそく、その姿を御覧いただこう。なお、それぞれピーク時でオスメス合わせて500羽〜600羽くらいである。

陸に上がったオナガガモのオス。オがナガい。(2/23)

こちらはオナガガモのメス。この色合いをちょっと覚えといてください(3/8)

キンクロハジロのオス。後頭部の冠羽(ちょんまげみたいなの)が特徴(3/8)。

こちらがメス。全体に体の色が暗めです。

 


 お次は、色がとっても分かりやすく、初心者でも容易に他のカモとの見分けがつくホシハジロ。こちらは150羽以下ってとこですな。

頭の色が特徴のオス。わかりやすいでしょ?(3/8)

こっちがメス。オナガのメスと同じく、やはり全体的に色が暗め。(3/8)

 

 こちらは、くちばしの形に特徴があるハシビロガモ。平たいくちばしは水面をついばむのに適しています。こちらは50羽以下ってところでしょうか。

くちばしのでかいオス(3/8)。

メスもくちばしはでかい。水面をスイープするのに適したくちばしです(3/8)

 

 ぐっと数が少なくなって、マガモにいってみましょう。カモっていったらどんな色?って聞かれたら、多くの方はこんな色を想像するのではないでしょうか。それがマガモなんですね。メスはくちばしの色が特徴。オスがいれば近くにメスがいるという仲の良さで、12羽(6つがい)くらい。

オスはこんな色。くちばしはきれいな黄色。(3/8)

こっちがメス。オナガのメスと比べて、くちばしの色が違うのです。(3/8)

 


 今度はヒドリガモ。くちばしの小ささが特徴で、そのせいか“小顔”に見える。5羽前後。


上がオスで下がメス。(どちらも3/8)

 


 “超有名ガモ”のカルガモも、不忍池では超少数派で、6羽くらいしかいない。ディズニーランドの池の方が実は多いのである。

体が他よりも1まわり大きくて、目の横のラインと、先端部のみ黄色いくちばしが特徴(3/8)

 


 通称“キング”ことアイガモ。実はマガモとアヒルのハーフなんだけど、とにかくでかい。周りの他のカモと大きさを比べてみてください。遠近感が狂うほどです(言い過ぎ)。それにしても、ホントに食えるのかなあ?

奥にいるホシハジロのメスと比べてみると、大きさの違いが一目瞭然。(2/23)

 

 そして真打ち(?)はヨシガモ。去年から1羽だけ登場した新顔だが、色合いと風貌から皇帝とまで呼ばれるそうな。めずらしいので紹介しておきます。たった1羽だけだけど、来年も来てくれるのかなあ?

2/23に撮影。その翌日からいなくなってしまった・・・

 

 その他、僕がカメラを持っていった日にいなかった(もう帰っちゃったか、茂みの中に隠れていたか?)のが、ミコアイサっていうやつ。それと、例年スズガモが1羽だけいるらしいのですが・・・わかんない。僕だって、すべてのカモを把握しているわけではないのだから・・・でも、ここまでに写真つきで紹介した種類だけで、不忍池のカモの99%はカバーしているはずだ。ここに出ていない鳥がいっぱいいたら、それは明らかにカモではないのだ。

3/8に久々に見かけた、ミコアイサのメス。

 

 そんなカモたちも、まもなくシベリアやアラスカなどの地元に帰ってゆく。そうすると、不忍池にも春が来る。すでにオナガガモはすでに帰りはじめたようだ。ピーク時よりも、明らかに数が減っているのだ・・・とシメたいのだが、全部のカモがいなくなる前に春は来てしまう。何種類かのカモをまとめて、原稿をシメようというのがいけないのか?ともかく、春が来たらカモもそろそろ帰り支度を始めるころだ、というくらいのほうが適切だろう。そんなに都合よくシメられないのは、この原稿が僕の都合でなく、カモの都合によったものなのだから。

オマケ画像・カイツブリ。カモより遥かに小さい。

2001/03/09

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