台風接近に思う

 

 台風がやってきた。上陸するのは2年ぶりとのことだが、大型でとってもチンタラ動いている台風、被害が心配である。テレヴィには、僕の学生時代の友人の実家付近がちょいちょい映され、避難勧告やら警戒水位を超えたやらとやっている。友人本人は今でも関東にいるのだが、実家のことが心配でなるまい。大きな被害にならないことを祈るばかりだ。

 そう、台風が来たら、僕たちにできることは“祈る”ことしかなんじゃないか、と思う。台風って、モノスゴイ威力をもっている。どこに行くか、予想はできても予定はできない。いつ、どのように、どこへ動くか分からないし、どんな被害が出るかも予定はできない。厳重な警戒をとは言うけれど、警戒していたからって、人的な被害こそは防げても、土砂災害なんかは防げないかもしれない。相手は自然の猛威である。とにかく、死んじゃったらモトも子もないのだから、台風が来たら読者諸兄は余計なことなどせず、自分の身を守ることのみを最優先して行動されたい。めずらしくエラソウなことを書くけれど、やはり命は大切である。台風による大波を期待したアホサーファーが、湘南でサーフィンをしていて危ないともテレヴィでやっていた。そんなヤツは(自主規制)である。

 そんなが台風接近する8月21日、夕飯を済ませてテレヴィをつけた僕は、なぜか妙な気分にさせられた。東京ドームで行われている巨人戦の中継である。別に、雨漏りで水浸し、とかいうとんでもない事態が起こっていたわけではない。ごく普通に野球の試合が行われていただけである。そこに、僕はとんでもない違和感を感じた。
「どうして台風の日に、野球なんかやるんだろう?」

 台風一過で風は強いものの快晴、という天候で試合をするなら分かる。また、台風接近中で雨がいつ降るだろうか、というドキドキ状態で試合をするのも分かる。どちらも、自然の中での野球だ。でも、台風まっただ中でわざわざ野球をやる必要なんかあるのだろうか?この日、プロ野球は3試合が中止になった。その中には、大阪ドームでの試合も含まれている。曰く、「交通の面による観客の安全が守れないから」。ドーム球場そのものはもちろん安全だろうけど、球場までの往復の足が安全でないかもしれないから、という理由の中止に、僕は快哉を叫んだ。そう、各交通機関に運休・欠航・遅延が相次いでいるのに、ムリヤリ野球なんかやることはないのだ。もともと野球は青い空の下でやるスポーツなのだから、わざわざ台風なんていう「野球は見たいけど、ドームまで行くのはヤだな」と思うような天気の日に、やることはないんじゃないの?と思う。もし試合中に風雨が強まり、交通機関が止まったらどうするつもりだったのだろう?球場関係者には、それくらい考えてるよと鼻で笑ってほしいのだが、どうも僕は違和感を覚えてしまう。ちょっとした雨だったら、濡れないドーム球場はうれしい。でも、台風までかなりの距離のあった仙台・宮城球場の試合はまだしも(試合後半は雨が降った=千葉ロッテ勝った!)、関東のドーム2試合がわざわざ行われたことは、僕は大いなる疑問を抱いてしまうのである。前々から野球観戦を楽しみにしていた人には申し訳ないのだが、台風の日に強行するほどのことでもないだろうな、という気がしてならない。

 ただ、ではどのくらい台風に近かったら中止するんだよ、と聞かれても困ってしまう。どこの会社だってそう簡単には休みにならないし、学校だってそうだろう。大雨大風がもれなく約束される台風が来ているのに、日常と同じ生活をしいられるのは、どうなんだ?そこで2つ目の疑問。
「どうして台風の日に、平常と同じ生活をしなければならないんだろう?」

 天気予報を見ていたら、ふだんは温厚な語り口で有名なお天気キャスターが、いざというときの備えをせよ、レジャーに行くなんて言語道断自殺行為、用事のない人は家にいろ、雨不足解消なんてのんきな話でなく被害が出るぞと口を酸っぱくして喋っていた。台風とはそれほどの恐れを抱かせるのに十分なものなのである。その予報どおり、風雨は強いし各交通機関は乱れまくっているのだ。そんな日に、なんで外出しなければいけないんだろうか。こんな日は年に何度もあるわけではない。台風が上陸するのは2年ぶりで、関東直撃コースは何年ぶりになるだろうか。そんな日くらい家にいて、いつでも避難できるような対応をしていてはいけないのだろうか。

 語弊のある言い方かもしれないが、僕は台風のような「日常とは違った気候」を体験するのは大好きである。でも、それは被害が出ない範囲での話であって、被害に対して備えなければならないような状況では、シャレにならない。台風ってホントに備えが大切なのだ。それをわきまえない限り、被害はどうしても発生してしまうのではないかな、と思う。

 

2001/08/22

後日談:東京ドームの巨人戦は、翌日の試合が中止になりました。「あまりに台風がゆっくりだった」のでした。

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