おわりに

 「広かった」と「遠かった」……シルクロードの感想である。当たり前すぎるし「想定の範囲内」なので面白くないけれど、この二つをどうしても無視することができない。とにかく遠いところだったし、広いところだった

 一方で、僕はまったく「想定外」だった別の感想も抱いている。シルクロードは「静かなところ」なのだ。バスで移動しているときに、原野のど真ん中で幾度となく小休止を取った。そのときに聞こえてきたのは、風の音だけだったからである。特に強風に見舞われたわけではないのに、木がないから葉は擦れないし、落ち葉も風に舞わない。鳥や獣の鳴き声もない。基本的に自分が発する音以外では風の音ばかり。時折通る長距離トラックが唯一の例外で、とにかく生活の音が何一つしない場所。それが「シルクロード」なんだと思う。

 そして町に入れば、活気と喧噪が待っている。生活という現実世界が展開されているのだ。さらに忘れてはいけないのが、町の近くにある石窟寺院群である。喧噪から一歩離れた静寂の場に、祈りと修行の地域があったのである。このメリハリすべてを体験しないと、シルクロードという世界が見えてこないような気がする

 さて、今回の旅も多くの方々にお世話になったが、今回は団長先生とNiu先生、そしていつも快く写真使用をOKしてくださる鈴ぽちぇさんに代表していただいてお礼を申し上げ、この「ノート」を閉じることにしたい。


バス車内の筆者(写真:鈴ぽちぇ師)
2005/12/22

2005新疆シルクロードノート・完


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