ここでは、北海道旅行に参加してくださったみなさんの投稿を、順不同でアップします。本編ではサラッと書き流しているウラにはこんなことが・・・Ts君によるこの文章は、本編「第1日目」とあわせてご覧下さい。
おっと、日付が変わってしまった。夕食はみんながやってきて酒盛りになること間違いないだろう。早めに寝ておくか、そんなことを考えていた12時30分、電話が鳴り響いた。誰だ?こんな時間に。待て、東京からの緊急連絡かもしれない。
「はい、もしもし?」
「もしもし?Oです」
あら?Oさんだ。確か木曜のうちに渡道して、友達のところに泊めてもらうとか言ってたな。
「いまどこさ?泊めてもらったんでなかったのかい?」
「断られた。今千歳駅前のローソンの駐車場」
はあ?断られた?きっと友達のところには女がいるに違いない、それでレンタカーの中で一夜を明かす決心をしたところだとか。夜勤明けでそのまま飛行機に乗って来たそうで、PHSの電波事情はバッチリだが、声が頼りない。 あまりに不憫に思えたし、こんな時間に電話してくるのはきっとうちに泊めてくれと言うことなんだろう。気を利かして提案した。
「したらさ、うち来るかい?」
「行ってもいいよ」
間髪入れずに返ってきたことばに、普段は温厚な俺が怒った。
「何!?その返事は!『行ってもいいの?』が正解だべ!何て失礼なんだ!」
「大変失礼をばいたしました!お邪魔してもよろしいんでございますか?」
打てば響くようなタイミングだが、ちっとも心に響かないたどたどしい敬語を連発するOさん。武士の情けだ、泊めてやろう。 1時30分、Oさんがレンタカーで到着した。さっきのことは忘れてとりあえずビールで乾杯だ。おや?ちゃんと冷やしたのにぬるいな。
「あー、ぬるいねOさん。いや申し訳ないね」
「うん、ちょっとぬるい」
したらぬるくてもうまい日本酒にしよう。売り言葉に買い言葉だ。
「えー? 日本酒ですか、Tsさん。俺、夜勤明けなんだけど。千歳から札幌まで眠くて力つきそうだったのに・・・」
有無を言わせずコップに透明な酒を注ぐ。根室の地酒「北の勝」。色も透明なら味も喉越しも透明だ。つまみはなくてもスルスルとしみ込む。 酒は心の潤滑油、会話は弾む時間は過ぎる。気がついたときは北国の短い夜が明けようとしていた。
「まずいよ、Oさん、こんな状態で千歳までみんな迎えに行けるの?俺だって今日出勤なのに」
「はっはっはあ、困ったねえ」
もはや役に立たないOさん。時計は5時を回っている。あと3時間で酔いをさまして俺は会社へ、Oさんは後発のみんなを迎えに千歳空港に向かわなくてはならない。そうこうしているうちにOさんは寝袋をかぶって寝てしまった。俺は寝たらまず遅刻する。やむを得ず水を飲み、牛乳を飲み、コーヒーを飲み、何とかアルコールを排除しようとする。ヨーグルトを食べ、トマトを丸かじりし、お茶漬けで朝飯を済ませる。 ああ、後発隊はそろそろ羽田に集まってくる頃だ。連中に伝えておかなければなるまい。電話をかけてユーモアたっぷりに緊急事態を伝えたつもりだったが、どうも酔っぱらいのバカ電話としか受け取ってもらえなかったらしい。 結局Oさんは沈没したまま、睡眠20分の酒が抜けきらない俺は出勤することにした。午前中いっぱいで休みを取って後発隊を案内しよう。 正午頃自宅に戻るとOさんは俺の(!)布団から出てきて、 「おはよう」
この一言で怒りは頂点に達し・・・そうになったが、興奮のあまり俺は不整脈を起こしてしまった。どこまでこの人は神経を逆なでするのか。 みんなは小樽にいるとのこと。それじゃOさん、酒は抜けた?みんなを迎えに、レンタカー小樽まで頼んだよ。 小樽までのR5は混雑していた。さて、他の人たちはどこにいるのかな?
「あっ、ピッチ忘れた」
ウソだろOさん?忘れんなよそんな大事なもの。誰の携帯番号もわからないじゃないか。もはやこうなっては怒りも感じない。小樽に着くと、ただ1人携帯の番号を覚えているMに公衆電話からかける。
「Sさんの電話番号教えて欲しいんだけどさ、いまどこ?」
「いま函館」
あれ? ひとり室蘭に行ったはずだと思っていたのに函館?まあいい、彼のことだ。何か深い考えがあってのことだろう。彼にSさんの番号を教わって、早速電話してみると・・・間違い電話だ。情けないが再度電話する。こうしてやっとSさんにつながった。居場所を尋ねると寿司屋の向こう側だという。そんな説明でわかるかい!小樽に住んでるわけじゃない。 ・・・それでも結構楽に見つかった。いやいや、皆さん聞いてくださいよ、この男のしでかした悪事の数々・・・てなわけで再会を祝したのであった。
(このあとは何事もなく札幌に戻ってMとTとも合流。あとの話は「北海道ノート」本編に詳しい)