白いクリスマス

 雪は降り続ける。
 少女は、赤い傘をさして佇んでいた。その手に力が入らないのか、傘がかすかに左右に揺れる。少女の頬は火照り、吐く息が白く彼女の前に小さな霧を作り出した。
「わりぃ、待ったか?」
 少年が駆け寄ってきて、少女の傘の中に潜り込んだ。すると少女は緩く首を横に振った。
「ううん、いま来たところ。私も遅れたの」
「そうか、よかった。電車が遅れちゃってさ、この大雪のせいで」
「私も雪のせいでなかなか外に出してもらえなかったの」
「……熱、まだあるのか?」
 少年がおそるおそる少女の額に手を添える。
「そうでもないよ、今日はだいぶいいの」
「でもな……家を抜け出すの、楽じゃなかったろ?」
「でも、せっかくのホワイトクリスマスに部屋にじっとしているんじゃつまらないし……無理を言ってごめんなさい」
「別に無理して会っているわけじゃないよ。でも、もう行こうか。ここじゃあ冷えるよ」
 少年は少女がさしている傘を持ってやった。すると、少年の手もぐらつき、傘が左右に揺れた。
 少年の顔に驚愕が浮かぶ。
 そして少年は傘を放り投げると、少女の身体を抱きしめた。
 放り投げられた赤い傘がどさりと音を立てて真っ白な路面に落ちる。傘の上に積もっていた山のような雪が四方にはじけた。

(1998.7.21)

→Topへ


本HPに掲載されている文章等の無断転載を禁じます。


朝霧義水(Yoshimi Asagiri)
http://www.ops.dti.ne.jp/~mozart/ks/index.html