内科リウマチ科 福間クリニック

多発性筋炎・皮膚筋炎

  1. 多発性筋炎・皮膚筋炎とは
  2. 多発性筋炎・皮膚筋炎の原因
  3. 多発性筋炎・皮膚筋炎と症状
  4. 多発性筋炎・皮膚筋炎の検査
  5. 多発性筋炎・皮膚筋炎の診断
  6. 多発性筋炎・皮膚筋炎の治療
  7. 多発性筋炎・皮膚筋炎の日常生活
  8. 多発性筋炎・皮膚筋炎の経過・予後

多発性筋炎・皮膚筋炎とは

 筋組織に原因不明(特発性)の炎症が起こり,筋線維が急性あるいは亜急性に崩壊する疾患である.皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎dermatomyositis(DM)と呼ぶ.男女比はやや女性に多く(女/男=1.3〜2.1),いずれの年齢層にもみられるが40〜50歳代が約半数を占める.原因や病態には不明な点が多いが,自己免疫機序の関与が示唆されている(免疫疾患の章,⇒参照).

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多発性筋炎・皮膚筋炎の原因

自己免疫機序を背景として,多発筋炎では筋細胞の構成成分を標的とする細胞性免疫(細胞障害性T細胞)が重要視されている.一方,皮膚筋炎では,血管を標的とする液性免疫(抗体依存性補体介在性)による虚血が主因と考えられている.

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多発性筋炎・皮膚筋炎の症状

【臨床所見】
 多発筋炎は急性ないし亜急性(数週から数か月)に進行する疾患で,原則として左右対称性,四肢近位筋優位の筋力低下と筋萎縮,筋痛(自発痛および把握痛)を生じる.重症例では,呼吸筋や咽頭筋も障害され,呼吸困難,嚥下困難を伴うこともある.
 一方,皮膚筋炎は多発筋炎の筋症状に特徴的な皮膚症状が加わったもので,上眼瞼のヘリオトロープ疹(紫紅色の浮腫性紅斑),指関節伸側の紅色丘疹〔Gottron(ゴットロン)徴候〕,膝,肘,顔面,頸部,上胸部の鱗屑性紅斑などが認められる.毛細血管拡張,色素沈着あるいは脱失,萎縮(poikiloderma),Raynaud(レイノー)現象を認めることもある.小児の皮膚筋炎は5〜15歳で発症し,皮下の石灰化,小血管の壊死性血管炎を伴うのが特徴的である.
 全身症状としては,発熱,全身倦怠感,関節痛,心病変(不整脈,拡張型心筋症,心拍出量低下)をみることがある.関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,強皮症,混合性結合組織病など他の自己免疫疾患と合併することがある.また,約10%に間質性肺炎を合併し,40歳以上で発症した症例の約10〜20%に肺,胃,腸,肝,子宮,乳房などの悪性腫瘍を合併することより,原疾患の治療に加え,これらの疾患の検索が不可欠である.なお,悪性腫瘍が臨床的に明らかとなる前に筋炎を発症することがあり,注意を要する.

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多発性筋炎・皮膚筋炎の検査

【検査所見】
 血液生化学 筋線維の崩壊を反映して血液検査上,筋の逸脱酵素である血清クレアチンキナーゼ(CK;アイソザイムはMM型),LDH,AST,アルドラーゼ,ミオグロビンの上昇が認められる.ミオグロビン尿がみられることもある.また,赤沈亢進,CRP上昇,γグロブリン値上昇など炎症反応の亢進に加え,抗核抗体や筋炎に特異的な自己抗体が認められることがあり,筋炎の病態に自己免疫機序が関与していることの根拠の一つとなっている.代表的なものでは,抗SRP抗体(多発筋炎に特異的),抗Jo-1抗体(間質性肺炎,関節炎,Raynaud症状を伴う症例に多く認められる),抗Mi-2抗体(皮膚筋炎,特に悪性腫瘍を伴わない成人例で陽性になることが多い),抗SM-Scl抗体(多発性筋炎と強皮症との合併例で陽性となることが多い)などがある.これらの自己抗体は,臨床症状とある程度の相関を持って発現する.
 筋生検 確定診断のためには筋生検による病理診断が不可欠である.最も重要な所見は,筋組織への炎症性細胞,特にリンパ球の浸潤である(図12-173)[図].また,筋線維の大小不同,中心核の増加などの一般的な筋原性変化に加え,壊死および再生線維が多くの例でみられる.筋炎の所見の分布は組織内で不均一で,同一筋内でも筋束によって偏りがみられるのが特徴的である.
 多発筋炎では筋線維間,血管周囲ともにリンパ球浸潤が認められ,CD8+陽性T細胞が多い.このうち非壊死線維に浸潤しているのはほとんどが活性化したCD8+細胞障害性T細胞(CTL)であり,また浸潤を受ける非壊死線維はHLA(human leukocyte antigen)class I抗原を細胞表面に提示していることから,抗原特異的な筋細胞障害過程が示唆されている.
 一方,皮膚筋炎では主として血管周囲にリンパ球浸潤がみられ,浸潤細胞はCD4+T細胞とB細胞が主体である.また,血管壁にはC5-9membrane attack complex(MAC)や補体,免疫複合体などが沈着していることより,液性免疫の関与が主体であると考えられている.皮膚筋炎,特に小児皮膚筋炎では,perifascicular atrophyと呼ばれる,筋束fascicleの周辺部分の筋線維が萎縮して小径化する所見(図12-174)[図]が認められ,診断価値が高い.筋内微小血管内皮細胞の障害による虚血性変化と考えられている.毛細血管の数も減少している.
 筋電図 随意収縮時に低振幅,持続時間の短い多相性電位を認める筋原性の変化を示す.また,安静時に,筋線維の自発電位,陽性棘波(脱神経所見)が観察される.針刺入時に奇異性高頻度放電をみることもある.
 画像検査 骨格筋CTで筋萎縮や脂肪変性を,MRI(T2強調画像)で浮腫や炎症性変化をとらえることができる.

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多発性筋炎・皮膚筋炎の診断

【鑑別診断】
 筋生検で炎症性細胞浸潤が認められないものが約20%程度存在し,この場合,非炎症性ミオパチーとの鑑別が困難なことがある.四肢近位筋優位の筋萎縮・筋力低下をきたす筋ジストロフィ,脊髄性筋萎縮症,甲状腺中毒性ミオパチー,糖原病,ミトコンドリアミオパチーなど代謝・内分泌異常性のミオパチーとの鑑別が重要である.筋原性酵素,筋電図,筋生検,代謝・内分泌の諸検査が必要となる.重症筋無力症とは筋脱力の日内・日差変動,外眼筋麻痺,誘発筋電図のwaning現象,抗コリンエステラーゼ薬に対する反応性などで鑑別する.Guillain-Barre(ギラン-バレー)症候群なども,筋力低下が四肢近位筋優位で感覚障害が乏しい場合,鑑別が必要となる.神経伝導速度,筋電図,髄液検査が必要となる.リウマチ性多発筋痛症は筋痛に比し筋力低下が軽いこと,赤沈亢進に比し血清CKの上昇がないこと,高率に側頭動脈炎を伴うこと,筋電図,筋生検で所見に乏しいことによって鑑別する.


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多発性筋炎・皮膚筋炎の治療

治療】
 急性期には入院させて安静を保たせる.中には急速に悪化する例があるので,可能な限り短期間に診断を確定し,速やかに治療を開始する.なお,治療により,病理組織所見は修飾を受けるので,筋生検は治療開始前に行うのが望ましい.
 薬物療法
 基本療法は薬物療法による免疫機序の抑制であり,プレドニゾロンが第1選択薬として用いられる.
 副腎皮質ステロイド プレドニゾロン40〜60mg/日を4〜8週間投与,以後は筋力,血清CK値を目安として漸減する.維持量は5〜10mg/日で長期使用したほうが再燃が少なく,少なくとも6か月またはそれ以上の継続治療が必要である.症状が重篤,急速進行性の場合,あるいは,急性間質性肺炎の合併のある場合は,メチルプレドニゾロン500〜1,000mg/日を3日間,点滴静注するステロイドパルス療法を行う.必要に応じ2週間おいて繰り返すこともある.プレドニゾロンは約90%に多少なりとも有効であるが,約10%の症例には無効である.
 免疫抑制薬 ステロイドの減量が困難な場合,またはその副作用に難渋する場合はアザチオプリン50〜100mg/日が用いられる.
 ステロイド,免疫抑制薬のいずれにも抵抗する難治例がある.

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強皮症の日常生活

Raynaud現象の予防には、精神的緊張や寒さを避ける工夫が最も大切です。通常、平均気温が18℃以下になるとレイノー現象が頻発するようになります。また、低温であることよりも、急激な温度の変化がレイノー現象を誘発しやすいため、冬季に暖かい部屋やバスや自家用車の中から寒い戸外に出る時は、あらかじめ首筋や手、足の防寒の準備をきっちりしておいてから外に出るようにすればいいと思います。また、レイノー現象が起こって長い間そのままに放置しておくと、皮膚や血管に損傷を作ってしまうこともあります。レイノー現象が起こったら、お湯などに指を浸して、早く回復するようにしてください。手袋や靴下に小さな携帯アンカを忍ばせておくのもよいと思います。
血管収縮作用があるタバコは肺病変にも悪影響があるので避けてください。
強皮症の方の皮膚は血行が悪くなっているため、傷をつけると治りが悪く、また感染すると長期化してしまうことがよくあります。それを避けるため、保温、保護、保清の「3つの保」を守ってください。つまり、手袋などで暖かくしておき、皮膚を常に清潔に保ち,その保護には傷をつけないように注意し、ハンドクリームをつけることなどです。皮膚が硬くなってくると、関節の曲げ伸ばしも辛くなってくることがあります。その予防に入浴後マッサージや体操を行うにしてください。また、消化がよく、栄養価の高い食餌をとるようにしてください。

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強皮症の経過・予後

 経過は症例によって多様ですが、一般的には非常にゆっくりとした慢性の経過をとります。皮膚硬化と内臓病変が1-2年で急速に進行する方もみえますが、ごくまれです。逆に、Raynaud現象と軽度の皮膚硬化が長期間続き,ほとんど進行しない方が多く見えます。皮膚硬化は経過によって軽快する例もありますが、内臓病変は軽快しません。皮膚硬化は多くは5-10年経過すると徐々にやわらかくなってきます。ただ、やわらかくなっても、元の健康な時の皮膚に戻るわけではありません。
予後を左右する因子としては、腎臓、肺、心臓などの内臓の病変の有無が重要です。
CREST症候群は経過が長く予後のよい型です。

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更新日 :2002/11/16