内科リウマチ科 福間クリニック

シェーグレン症候群

  1. シェーグレン症候群とは
  2. シェーグレン症候群の原因
  3. シェーグレン症候群の分類
  4. シェーグレン症候群の症状
  5. シェーグレン症候群の診断
  6. シェーグレン症候群の治療

シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群は膠原病のひとつで、主に中年の女性に好発し、慢性唾液腺炎や乾燥性角結膜炎を主徴とする原因不明の自己免疫疾患(本来、身体に進入した異物を退治するための免疫反応が異常を起こして、自分の身体を壊すようになった状態)です。
シェーグレン症候群は1800年代より報告が見られていましたが、1933年スウェーデンの眼科医シェーグレン症候群が目や口の乾燥症状を全身性疾患の1症状として報告したことからこの病名がつきました。
その後、アメリカのNIHや、日本の厚生省のシェーグレン病研究班により調査され概要がはっきりしてきました。病気を持っている人の数は人口10万人あたり男性1.5人、女性29.5人とされていますが、その後シェーグレン症候群に対する認識が高まり、現在では日本で50万人ほどの患者さんがいると推定されています。
40から60才の女性に多く、空気の乾燥している地方に多いといわれています。
また、他の膠原病と一緒に起こることもあります。シェーグレン症候群は主に涙腺と唾液腺が侵され、涙や唾液が出にくくなって、眼や口の乾燥症状がでてきます。
しかし、実際には他の身体中の外分泌腺(体表面や消化管などの管腔に分泌物を出す腺、例えば汗を出す汗腺、消化液を出す胆管やすい臓など)も侵されることがあり、外分泌腺全体の自己免疫疾患、自己免疫性外分泌腺症としてとらえようという考え方もあります。
シェーグレン症候群は膠原病のひとつで難病に挙げられます。
しかし、その生命予後は極めて良好で、ほとんどの人が寿命を全うされています。
日常生活の不自由も治療やいろいろな生活の工夫でかなり改善することができます。
病気についてよく理解し、前向きに治療を受けるようにしてください。

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シェーグレン症候群の原因

シェーグレン症候群の病因についての研究はかなりわかってきていますが、すっかり解明されたとまでは至っていません。
遺伝との関係もいわれていますが、それほど強い遺伝ではないようです。
EBウィルスなどのウィルス感染が発病に関係していると言う報告もでています。
病気で侵された外分泌腺を顕微鏡で調べてみると、外分泌腺細胞の周りにリンパ球と呼ばれる細胞が集まって、腺細胞を壊しているのが認められます。
病気が進行すると、唾液や涙液を作る腺細胞はほとんどなくなってしまい、分泌液が出せなくなって、乾燥症状があらわれるのです。

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シェーグレン症候群の分類

シェーグレン症候群はに示したように、症状のない潜在性シェーグレン症候群と、症状のあらわれたシェーグレン症候群(T期、U期、V期)に分けられます。
潜在性シェーグレン症候群はまったく症状がなく、検査異常で発見される場合がほとんどです。
外分泌腺の破壊が進行していない状態で、実際には、この状態の人が大半で、病気であることに気づかずに一生を送られている方が多いと考えられます。
T期は眼や口の乾燥症状が現れている人で、外分泌腺以外の臓器症状を伴っていない場合です。
U期は乾燥症状に加えて他の臓器症状、例えば発熱や関節炎、皮疹などが見られる時期です。
V期は欧米で多いのですが、マクログロブリン血症やリンパ系腫瘍が現れることがあります。
必ずしもT期からV期まで進行するわけではなく、ほとんどの人が潜在性シェーグレン症候群あるいはT期、U期でとどまるようです。
異なる分類方法として乾燥症状だけの原発性シェーグレン症候群と他の膠原病に合併した二次性シェーグレン症候群とがあります (図)

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シェーグレン症候群の症状

涙や唾液の働きをに示しました。
シェーグレン症候群が進むと涙や唾液の分泌が減るので、これらの機能が損なわれるように成ります。
例えば、涙の分泌が減ると、目入ったほこりを洗い流せなくなるので、異物の入った様なザラザラやゴロゴロとした感じがします。
また、眼の表面が乾燥するので、乾燥性結膜炎(充血)が起こります。
放置すると結膜のびらんや潰瘍ができることもあります。
唾液の分泌が減ると、食べ物を噛んでやわらかくできないため飲み込みにくくなったり、口の中が不潔になりやすく虫歯ができやすくなります。
また、口内炎を起こしやすくなり、風邪をこじらせやすくなります。
その他の外分泌腺症状として、皮膚が乾燥したり、鼻が乾燥して鼻出血を起こすこともあります。
気道分泌液が減ると空咳がでたり気管支炎に罹りやすくなります。
また、しばしば耳下腺(耳の下にある唾液腺)が腫れることもあります。
シェーグレン症候群の全身症状としては発熱、関節痛、レイノー現象(寒冷や緊張で指先が白くなる)、リンパ節腫脹、紅斑(輪状紅斑、浮腫性紅斑)等があります。
関節痛は時に慢性関節リウマチのように変形を起こすことがあるので注意が必要です。
シェーグレン症候群のU期には種々の内臓合併症が起こりますが、臨床上問題となるの合併症は5%以下の頻度です(図)
また、欧米では、リンパ腫(血液の癌。進行は非常に遅い)を合併する方が見られるようですが、日本人ではまれなようです。
合併症の有無を定期的検査する必要があります。

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シェーグレン症候群の診断

眼や口腔の乾燥症状を起こす疾患はシェーグレン症候群だけではなく、に示したように、多くの疾患、環境で乾燥症状が見られます。
いわゆるドライアイを示す人の1割程度がシェーグレン症候群と言われています。
このため、シェーグレン症候群の診断には様々な検査が行なわれます。
抗SSA抗体・抗SSB抗体などの血液検査や、涙の分泌をみるシルマー試験、唾液の分泌をみるサクソン試験やガム試験にてある程度の病気の有無が推測されますが、確定診断にはの診断基準に示した口唇検査、唾液腺のシンチグラフィー、唾液腺造影などが必要になります。

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シェーグレン症候群の治療

シェーグレン症候群は早期発見が困難なため、すでに乾燥症状が現れている場合は、もう外分泌腺が壊されてしまっているので、原因から治す根本治療は困難になっています。
潜在性シェーグレン症候群は早期に治療すれば発症を予防できるはずですが、具体的な治療法は今後の研究課題です(表)
乾燥症状がすでにある場合は症状を軽減する治療や進行を止める治療が主体になります。人工涙液や保護剤、抗炎症剤などを使い分けます。(表)
注意点として、水分を主体とした人工涙液は、使い過ぎると、眼の表面の保水に役立っている粘液を洗い落としてしまう可能性があります。使いすぎに注意し、乾燥で角膜に傷がつくようなら、保水作用のあるヒアレイン点眼を使うこともよいでしょう。乾燥がひどい時は、眼軟膏を使ったり、血清点眼を使うこともあります。
その他、覆いのある眼鏡を使ったり、手術を行なうこともあります。
口腔乾燥に対しては人工唾液、うがい、トローチ、口腔用軟膏、グリセリン塗布などの概要剤を用いるほか、内服薬としてはビゾルボンなどの気管支分泌促進薬やパロチン等の唾液腺ホルモン剤、麦門冬湯等の漢方薬等が用いられます。
最近は、唾液分泌作用のあるサリグレン、エポザックがシェーグレン症候群に保険適応となりました。印象としては50%ほど唾液を増やしてくれますが、自律神経に作用するため、人によって腹痛や下痢などの腹部症状が出ることがあり、初めは少量から使い始め、副作用がないことを確認して少しずつ増やしていけばいいと思います。
また、人工甘味料を使ったガムやアメを噛むことも唾液腺分泌促進に有効です。
U期のシェーグレン症候群に対しては、合併症に応じた治療が必要となります。
主治医とよく相談して治療を受けてください。
また、他の膠原病を合併している場合は、その膠原病の治療が優先されます。
シェーグレン症候群の日常生活の注意点はに示してあります。参考にしてください。
特に注意することとして、市販薬や病院からもらう薬の多くが乾燥症状を増悪させることがあります(表)
もし、かかっている病院以外で投薬を受けるときは病気のことをよく説明してください。

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更新日 :2002/10/1