Written:25/Jul/2006
メイリオフォントの衝撃
ひょんなことから Windows Vista の標準フォント、Meiryo が入手できましたので、我家の XP 機にインストールしてみました。
うーむ、これは…。
基本的にはこれ、とても良いフォントだと思います。
気に入った点
和文が(ほぼ)等幅、欧文がプロポーショナル、という基礎中の基礎を遵守している。
これでようやくMS Pゴシックの「妙に詰まった日本語表示」の呪縛から逃れられる。
(「やりにくく」の「くく」の部分なんて、日本語の文字とは思えない!)
ドイツ語、スペイン語や東欧言語、トルコ語などの飾り文字に対応している。
(MS Pゴシックは非対応)
この2点により、単一フォントで表現できる範囲が極めて広がる。
(これまでは、MS ゴシック + Arial , Verdana などとする必要があり、どうしても文字・文章の統一感に欠けた)
太字が太い。
MS ゴシック系の太字を、欧文専用フォントの太字と並べてみると、いかにも貧弱で、バランスが取れませんでした。
Meiryo では和文と欧文の太さのバランスが保たれています。
一定の行間が保たれている。
読みやすいのですが、これはこれで問題也。(後述)
Clear Type 対応。 きれいです。 本件については各種サイトで説明されていますので、割愛します。
これらにより、Windows がこの世でメジャーになってから十余年、ようやくまともな日本語表示ができるようになると思います。
気になる点
MS Pゴシック比、同じフォントサイズで、「大きい」。
→ 正直、「大きい」という表現が正確かどうか、自信がありません。等幅だからそう見えるのか?
行間が保たれているのは良いが、ちょっと広過ぎないか ?
顔文字(=ASCII Art)がこれまでと全く異なってしまう。
次のビジネス使用とも関連するが、Meiryo はあくまで液晶画面上の可読性を追及したフォントであること。
Microsoft のプレスリリース では、「印刷しても…」とあるが。
(逆に、MS ゴシック/明朝系フォントは、画面上の表示よりも印刷を追及したフォント、と言えましょう)
ちょっと丸文字っぽい。ビジネス文書に馴染むのかどうか?(=メール、Word、Excel で使われるか?)
実際に印刷してみたが、いささかの違和感を覚える。 (慣れの問題もあるでしょうが…。印刷してみると、それほど「丸文字」ではない)
画面上のフォントと印刷のフォントを変えることになると、一頁当たりの行数や改行位置が変わるなどの問題が生ずる。
ウェブサイト制作上の問題点
IE7+(※)の標準フォントサイズは IE6 と同じなのでしょうか?
※ Windows Vista に同梱される IE7 は「+(プラス)」という別バージョン。
もし同じだとすると、Meiryo のフォントサイズが相対的に大きいことに加え、行間が広がることにより、一画面当たりに表示される情報量は、かなり少なくなってしまいます。
また、フォントサイズが大きいことで、デザインする側としては、例えば「ここはこの程度の横幅を確保して…」といった基準が変わってしまいます。
Windows Vista が世の中に出回っている PC(個人向け)の過半を占めるようになるには、3年程度の時間を要するでしょう。(企業向けでは5年以上かかる?)
当然その間、MS Pゴシックで見る人と、Meiryo で見る人が混在することになります。
この2つのフォントでは、同じサイトを見て、受ける印象は全く異なります。
この差は、これまでの IE、Netscape Navigator、Firefox の表示の差などは全く問題にならないほど、遥かに大きなものです。
ウェブサイト制作者(プロ、アマを問わず。またブログライターも含め)としては、この過渡期の間、MS Pゴシックと Meiryo のどちらに照準を合わせれば良いのか、大変に悩ましいところです。
現在のまま(=MS Pゴシックでの表示を前提)で行くと、Vista + Meiryo ユーザーには、何とも間延びしたサイトになってしまいます。
逆に Vista + Meiryo に最適化したサイトを XP 機で見ると、おそらくは、文字がやたらに小さい、読みにくいサイトになってしまうでしょう。
(Win/Mac 間でも同様の問題は生じていますが、彼我の圧倒的なシェアの差により、大きく取り上げられることがない)
こういう議論をすると必ず、「文字の大きさはユーザーが切替えることができる」、「フォントもユーザーが変えることができる」だとか「ユーザースタイルシートで…」などと発言する人が出てきます。
もちろん、文字サイズ固定の極悪サイトは論外ですが、「一般のユーザー」は、文字の大きさの変更さえしない人が多い、というのが実態。
ましてやユーザースタイルシート、なんて夢のまた夢です。
横道にそれますが、HTML は見栄えじゃない、という原理原則「だけ」を掲げる人と、私は全く相容れることはできません。
この世のありとあらゆる情報は、見て何ぼ、読んで何ぼ。
読み易さ、理解のし易さ、アクセスの容易さ、といったものを徹底的に追求するのは人間として当たり前の行為。
文法の範囲内で見栄えを工夫することさえ猛烈に批判する HTML 解説サイトの管理者達には、是非ご退場願いたいものです。
彼等が世の中に与えている悪影響は計り知れません。
さて、繰り返しになる/別の言葉で表すと、この Meiryo フォントの登場は、2006年までの PC と、2007年以降の PC とで(Vista PC がこのスケジュールで出てくることが前提ですが!!)、同じサイトを表示しても、全く異なったものに見える、という事態を引き起こします。
(同じ番組を見ているつもりが、全く違うものだった、という感じです)
そして、このことを乗り越える、一般ユーザー向けの方法を編み出すことは容易ではなさそうに思えます。
(OS によって CSS を振り分けるようなスクリプトがまた流行るのでしょうか…)
これは、IE と NN のブラウザ戦争どころでは無い事態である、と私は考えています。
本件は、Vista PC の発売後しばらくして、全国紙レベルで大きく取り上げられる、と予想しますが、如何? (^^;
Microsoft 社は、Windows XP に対しては Meiryo フォントを提供しない旨、明言しています。
(代わりに MS ゴシック、明朝系の Update を実施)
Windows XP SP2 の際には、全国の郵便局を使ってまで CD-ROM を配布しました。
「安全・セキュリティ > 見た目」、は理屈ですが、一般のユーザーにとっては、日常的には「見た目」が重要です。
Microsoft 社には是非、Windows Update などにより、XP 機に対して Meiryo フォントを提供するよう、考え直して頂きたいと存じます。